第8話
第8話
俺は全力で声のする方へと走る。
まぁ、誰の声かは予想ついてるんだけどね!
場所は違うが、以前と同じよう木の影に隠れる。
よしっ、皆んな準備は出来たかな?
名前を大きな声で呼んでみましょう!
せーっの!
「アリスさ〜〜ん!」
そして木の影から俺はニコニコしながら姿を現わす
「…えーっと、だれ?」
………ダッ!
ーーー俺は全力で駆け出した。
恥ずかしいぃーーーーー!!
やべぇよ、声アリスだったよね?!
何がアリスさ〜〜ん ニコッ だよっ!
全くの別人じゃねぇか!
誰か助けて、助けてあげて!(俺を)
「あれ? ハヤテさんじゃないですかっ!」
前方から人が現れた。
だが、俺は立ち止まる訳には行かないんだっ!
「ちょっと!ハヤテさん!」
その人は、俺が通りすぎようとしたところを捕まえてきた。
「はっはい! ん? アリスじゃないか!?」
うん、やっぱ聞き間違いじゃなかったな。
だけど、声が聞こえてきたのはアリスと逆だった、何故だ?…
「ハヤテさん! 依頼でここに来たんですか?」
「おっおう! さっさとFランクに上がりたいからな、3つ受けたよ」
「いきなりですか!? 大丈夫なんですか?失敗したら罰金ですよ?」
「それ受付の人にも言われたよ、まぁ一応3つとも終わって、これから帰ろうとした時にアリスの悲鳴が聞こえたから、また死にそうになってるんじゃないかと思ってこっちに来たんだよ」
「もう、終わったんですか!?早すぎるでしょう!って、それよりまたってなんですかっ!一回だけですよ!(まぁ、助けに来てくれたのは嬉しいですけど…)」
「アリスはここで何してるんだ? って依頼か」
「はい! ホーンラビー討伐の依頼なんですけど、なかなか見つからないんですよ、ですので今は友達と二手に分かれて探してるんです!ホーンラビー1匹だったら私一人でもかてますからね」
「倒したどうやって一人で持っていくんだ?一人で持つのは辛いだろ」
「はい、だから私たちは討伐証明部位と、入りそうなものだけをとる事にしてます」
なるほど、全部は持って行かないのか、そりゃ重いしな。女性にはかなり辛いだろう。
俺は、アイテムボックスという神アイテムを持ってるから楽だがな!
何か卑怯っぽいけど、時空魔法で作れるってことはアイテムボックスが売られている可能性がある。まあ高価だろうが。ま、俺は使える物は使う主義だからな、気にしないが。
それより、さっきの声のことがめっちゃ気になる!もしかしてモンスターかもしれないし、アリスに聞いておくか
「アリス、さっきあっちから来たよな?けど、俺が聞こえた方角は反対方向だった。声はアリスだったし、何でか分かるか?」
そう、真剣に問い掛けると、アリスはクスクスと面白そうに笑った。
「それは精霊のイタズラですね」
…精霊?
「はい、ここグアレスの森には妖精が住んでいるのです。普段は姿を見せることはありませんが、自分が気に入った相手を見つけると方向を惑わせたり、背中を後ろから触られたりといったイタズラをするんです。一応モンスターの分類に入っていますが、ハヤテさんのようにイタズラされるだけで、他には害はないですし以前妖精に気に入られた冒険者が怪我を負い死んでしまいそうになったとき、妖精が怪我を治してくれたこともあるそうなので、妖精はモンスターですが討伐はしないというギルドでの了解になったそうです」
なるほど、好かれて嬉しいけどイタズラされて悲しいし何か複雑だなぁー。
「まあいいや、取り敢えーー『キンッ!ギィン!』、剣の音がする。行こうアリス!おそらくアリスの友達だ」
「! はいっ!」
ホーンラビーならば大丈夫とアリスが言っていたし、俺たちが行ってもやることはないだろうが、万が一ということもあるし、行っておこう。
そんなことを考えつつ二人は俺がさっき走ってきた道を引き返す。
…やっぱ俺だけ帰ろうか、さっきので気まずいし…恥ずかしいし
くっ、さっきの俺をぶん殴ってやりたい!
「はぁっ!はあっ、あ!アリスっ!とそこの人逃げてっ!!」
両腕から少し血を流しながらアリスの友達がかなり焦ったように全力で走りながら叫んできた。
どうしたんだ!?
アリスの友達もホーンラビーは倒せるって言ってたよね?
まさか違うモンスターと遭遇したのか?
思考にふけり体を動かさなかった俺と、友達が血を流して叫んでいる状況に固まってしまったアリスに対しその友達は、本当に焦っているように、
「早くっ!この場から離れないとっ!!」
そのときーー
ドスン ドスン
うん、この足音間違いなくホーンラビーじゃないね!
「くっ!もう追いついてきたのっ!? ごめん、二人とも!!」
ーーそして、そいつは姿を現した。
体長約3m半、ギラギラした目にでかい棍棒を持ち、全身緑色でかなりでかい。
「ト、トロール…」
アリスは顔に恐怖を滲ませてやつを見て呟いた。
あれがトロールか…かなりでかい、強そうだ。
「はぁはぁっ、二人ともごめん… 巻き込んで。ここは私がなんとか時間を持たせるから、逃げて。ギルドにこいつのことを知らせて欲しいの。少しはもつと思うから!」
そう言って彼女は両腕の痛みを我慢しているように、苦しそうに言った。
「だ、ダメよ!私も、私も戦うわっ!!」
「だめッ! アリスは隣にいる人とギルドに行って! 」
「でも、私はあなたを置いていけないっ!分かってるのっ!?トロールは人型モンスターなのよ!?殺されるだけではすまないっ!ゴミのように孕まして殺すして飽きたら捨てるようなやつらなのよっ!そんな屈辱な辱めを受けるのっ!そんなの見たくないわっ!!」
涙を流しながら、アリスは一緒に戦おうとする
「分かってるわよっ!!私だってしたいこと山程あるわよっ!でも、こうしないとどっちも死んじゃうの!アリスには幸せになって欲しいのよっ! だからお願い…早く逃げて」
「!〜〜っ!」
アリスの目から雨が流れ、止むことはない。いっそう強くなるばがりだ。
ドスンッ! ガァッゴァーーーーッ!
雄叫びをそこら中に響かし、やつは更に勢いを増し接近する!
「早く!逃げてっ! やぁあぁぁーっ!」
友達はアリスたちを逃がそうと、全力で両手で一つの剣を持ち、やつに駆けていった。
「はぁっ!! えっ!きっ、切れないっ! はっ!!」
アリスの剣はトロールに傷つけることはなかった。そして、アリスの友達はトロールが棍棒を降りかぶり自分を殺そうとしているのが分かった。
(…私死んじゃうんだね。ごめんね、時間も稼げなくて…)
彼女は泣いた、自分の実力にも、これから起こることにも。
ブゥオン ッ! ドスーーン!
「あ、あれ?生きてる?」
アリスの友達は死んでいなかった。
「えっ!えぇ!ちょっと、あのっ!」
アリスは抱きかかえられ、いつの間にかトロールの真後ろ約5mに移動していた。
その人とはーーー
「俺に任せろ」
そう、さっき変な出会いをした人物、ーー市島 颯 であった。