第6話
第6話
二人話しながら2時間ほど森を歩いていると、アリスが言った通り街の外壁が見えてきた。
「ヤスラが見えてきましたよ!」
「あぁ、それにしても赤い虎がでてからモンスターに遭遇しなくて良かったよ」
「そうですね!野生の動物くらいなら遭遇すると思っていたんですが…でも、今日はもう戦いたくなかったのでいいのですが。
というかレッドタイガーがあのような場所にいたのがおかしいのですよ!死ぬかと思いました!」
「はははっ(苦笑)あのレッドタイガー?はやっぱり強いモンスターだったのか」
「そうですよ!レッドタイガーは確か、Cランク下位のモンスターです。私のようなFランクは出会っただけで死亡が確定すると言われるほどの能力ですからね」
そんなことを話していると、街の門の前に着いた。
日はもうすぐ隠れようとしている。
「身分証を見せてもらえるか?」
門の近くにいた兵士が声をかけてきた。
やべっ、俺なんも持ってない…
「すみません、身分証もってないです。中に入れませんか?」
「ん?持ってないのか?冒険者カードもないのか?」
「はい、これから冒険者ギルドにいって発行してもらおうと考えています」
「そうか…なら、規則で銀貨1枚を払って貰わなけれいけないが、いいか?」
…金もねぇよ、どうしよう
そう少しの間黙りこんでいると、アリスが
「私が、払いますので大丈夫ですよ!この方は転移トラップにかかって着の身着のままにグアレスの森に放り出されたのですよ」
「そうだったのか! 大変だろうに、すまんな、規則でな。俺としてはまけてやりたいが…。よし!ここは、俺がお前の分払っておくよ。色々辛いと思うが頑張れよ!なんかあったら俺に言ってくれ!相談にのるからな」
ーーーなんて男前なんだ!
一瞬、でっかいおっさんだな、なんて考えてました。ごめんなさい!
「すみません。ありがとうございます!あの、お名前を教えて頂けますか?」
「あぁ、俺はギリサスってんだ。よろしくな!」
「はい!よろしくお願いします!このお礼は必ずさせていただきますので」
「いいって!気にすんな!そんじゃあ、後ろがつっかえてるから、またな!」
後ろを振り返ると、2人が自分たちの後ろに並んでいた。
「はい!ありがとうございました!」
そう言い二人は門をくぐり、少し舗装された道を歩くと目に飛び込んできたのは人族、獣人族、エルフ族が普通に行き交っている光景だった。
やっぱ、異世界だなと再確認した颯は足を止め、その光景を楽しそうに見ていた。
「颯さん、日も落ちたことですし冒険者ギルドへは明日行くというのはどうでしょうか?」
「そうだな。今から行くのは危険だろうしね」
「それでは私の家に行きましょう!部屋は余っているのでそこを使って貰えればいいですし」
「いいのか?俺も一応男だし、何があるか分からないと思うけど…」
「はい!命を助けて頂いたのですから、これくらいはなんともありません。ハヤテさんはそんなことするような方ではないと話しをしていて思いました。それに、一人で暮らしいる訳ではないので大丈夫です!」
「家族と暮らしているの?それだとしたら尚更俺が泊まるのはダメじゃないかな?両親が心配すると思うけど」
「そんなことないです!お母さんも妹もハヤテさんを気にいると思います!ハヤテさんは優しいですし!」
「父親が怒ると思うんだけど?」
「…お父さんは冒険者をやっていたのですが、3年前モンスターがこの街を襲撃してきた時に…」
「っ! すまない!辛いことを思い出させてしまった!」
「はい…大丈夫です。当時はずっと悲しくて泣いていましたが、やっと乗り越えることができ、お父さんのようにモンスターからこの街を守れるような人になりたいから私は冒険者になったのですから」
「そうなのか…アリスは強いね。もし困ったことがあったら言ってよ。俺になにができるか分からないけど助けになるからさ」
「はいっ!ありがとうございますっ」
「じゃあ、アリスの家行っていいの?俺みたいな普通の奴がアリスみたいな美少女と一緒にいたら、アリスに迷惑をかけてしまうよ。アリスに恋人がいるんだったら相手も不快に思うよ」
なんか自分で普通って言ってて悲しくなってきた…
「ハヤテさんは普通なんかじゃありません!普通の人はあの状況で私を助けてはくれませんし、ハヤテさんは優しいです! (それにとてもカッコイイです///)ぼそっ」
やめて、やめてあげて!!
木の枝が折れて気付かれなければ俺はそっと立ち去ろうとしてたんだ!
本当にごめんなさいっ!
ん?後半声がちょっと小さくて聞こえなかったな。まぁいいや。優しいってそんなことはないが、言われると嬉しいもんだな。
「ありがとう。じゃあ、泊まらせてもらうよ」
「はい!では行きましょう!」
30分ほど歩くとアリスは2階だての少し大きな家の前で立ち止まった。
「ここが、私の家です!さぁ中に入りましょう」
そう言い、俺は家の中に入れてもらった。
「ただいまー!」
とアリスが言った。すると、部屋から玄関の方に誰か近づいてくる音がする。
玄関に現れたのは恐らくアリスの母親であろうおっとりとした感じの美人だった。
「お帰り〜。あら、お友達も一緒?」
「母さん、ただいま。この方はハヤテさん。転移トラップにかかってしまってグアレスの森に転移してきたの」
「そうなんですか?取り敢えず中に入って下さい。なにもないところですが」
「はい、ありがとうございます」
そうしてクレアの母親の後をついていき、リビングと思われる場所に入った。
「どうぞ、お座り下さい」
「すみません、ありがとうございます」
3人が椅子に座った。席順は左から俺、アリスそして机を挟んでアリスの母親だ。
アリスの母親がお茶?を3人分淹れ、一人一人に渡したところで今日起こった出来事について、アリスが母親に話した。
「あら、そんなことが!娘を助けて頂いてありがとうございます。なんとお礼をしたらいいのか」
「いえ、通りがかって偶然の出来事だったので、気になさらないで下さい」
「そんな訳にはいきません。大事な娘を助けて下さったのです。どうしようかしら」
家族思いのいい母親だな。やっぱりクレアの家族だよ。
「お母さん!ハヤテさんは突然転移させられて着の身着のままだったから色々と大変だよ。だからこのままこの家に泊まってもらったらどうかな?」
「そうね… これで、恩を返せるわけではないけれど、その位のことはしないと罰があるわ。ハヤテさん、何もないところですが、是非泊まっていって下さい」
「すみません、助かります。それではお願いします。あっ、あと恩とかは本当にいいので、俺も恐縮してしまいますし」
「ハヤテさんは優しいのね。普通なら命を助けてやったんだから金を!っていう人が多いのに…分かりました!それじゃあ、今晩は手によりをかけて夕食を作らせてもらいますね!」
「はいっ、ありがとうございます!」
「部屋なんだけど…空いている部屋にアリス案内してあげなさい」
「うん!じゃあ行きましょう!ハヤテさん」
アリスの後を付いていくと、一つ部屋に通された。6畳くらいの部屋で、ベッドとクローゼットらしきものはあるが、それ以外は何もない。
「すみません、何もないところで、くつろげるかどうか分かりませんがゆっくりして下さいね」
「ありがたいよ、ゆっくりさせてもらうね?」
「はい! 夕飯までの間少し時間がかかりますが、準備ができたらお呼びしにきますので、休憩なさっていて下さい!」
「あぁ、わかった」
そう言うとアリアは部屋から出て行った。
よし、取り敢えずホーンラビー倒した時に入ったSPが5Pあったよなー。
なんか良さそうなスキル取れたらとるとするか!
____________________________
Level 2→8
名前:市島 颯
種族:人族
年齢:16歳
性別:男
職業:学生
HP 150→390
MP 100→330
STR 80→300
DEF 80→290
ALE 90→300
INT 140→350
LUCK 100
スキル: 武の才能 魔法の才能 全能のカード 全言語翻訳(会話) 全言語翻訳(読み書き) 剣技Lv.5 鑑定 限界突破(全能力) SP操作 健康 魔力回復(2倍)
称号: 異世界人 神の孫 天使に祝福されし存在
SP: 35
所持金:0
___________________________
うぉ!Levelが一気に6も上がってる!
レッドタイガーを石化させた分の経験値が入ったのか。石化って死亡状態になるんだな…てことは、あのカードやっぱり強かったんだな。レア度④でこの効果なんだから、それ以上のカードはどんな効果なんだろう!楽しくなってきたっ!早く明日にならないかな!!
よし、気分も高まったところで、スキルを取るとしよう!35Pあるからそこそこのものは取れるだろう。できれば魔法系のスキルを取りたいな!
どれどれ、どんなのがあるんだ?
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火魔法Lv.1 : 5P Lv.2 : 10P Lv.3 : 15P
水魔法Lv.1 : 5P Lv.2 : 10P Lv.3 : 15P
風魔法Lv.1 : 5P Lv.2 : 10P Lv.3 : 15P
土魔法Lv.1 : 5P Lv.2 : 10P Lv.3 : 15P
回復魔法Lv.1 : 10P Lv.2 : 15P Lv.3 : 20P
氷魔法Lv.1 : 15P Lv.2 : 20P Lv.3 : 25P
雷魔法Lv.1 : 15P Lv.2 : 20P Lv.3 : 25P
闇魔法Lv.1 : 15P Lv.2 : 20P Lv.3 : 25P
光魔法Lv.1 : 15P Lv.2 : 20P Lv.3 : 25P
幻魔法Lv.1 : 20P Lv.2 : 25P Lv.3 : 30P
付与魔法Lv.1 : 20P Lv.2 : 25P Lv.3 : 30P
時空魔法Lv.1 : 30P Lv.2 : 40P Lv.3 : 50P
召喚魔法Lv.1 : 30P Lv.2 : 40P Lv.3 : 50P
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おぉー結構種類あるな、やっぱ強そうな魔法はLv.1でもポイント高いな。
んー、カード以外にも戦闘手段が欲しいし、雷魔法ってなんかカッコイイし欲しい…そうすると……
「できた!これで取り敢えず大丈夫だろう」
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Level 2→8
名前:市島 颯
種族:人族
年齢:16歳
性別:男
職業:学生
HP 150→390
MP 100→330
STR 80→300
DEF 80→290
ALE 90→300
INT 140→350
LUCK 100
スキル: 武の才能 魔法の才能 全能のカード 全言語翻訳(会話) 全言語翻訳(読み書き) 剣技Lv.5 鑑定 限界突破(全能力) SP操作 健康 魔力回復(2倍)雷魔法Lv.1 火魔法Lv.2 土魔法Lv.1
称号: 異世界人 神の孫 天使に祝福されし存在
SP: 0
所持金:0
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こうなった。雷魔法は剣技と併用して使えばかなり強いと思う。火魔法はホーンラビーを倒した時に使った 火の矢のカードをみて使えそうだと感じたからLv.2まであげた。土魔法はどんなものか分からないけど、防御手段になりそうだと思ったからとった。
うん、いい感じだ!
さっき、ステータス再確認して思ったんだけど、所持金0って…なんか悲しくなるよな…
明日、冒険者になるんだ、しっかり稼ぐぞー!
コンコン
「はい!」
「夕飯が出来ましたので、来てくださいね」
「分かりました」
どうやら、スキルのことを考えてたら結構な時間がたったらしい。
俺は部屋をでて、リビングに向かった。
あれ?アリスと母親と後一人いる。
あっ!、そういえば妹がいるってアリス言ってたな。
「すみません、何もせずに」
「いえいえ、私料理作るの好きですから。嬉しいのですよ」
「あ、あの!」
うん?声がした方向をむくと、妹さんが俺をみていた。
「あっ、すみません、俺はハヤテど言います。色々あって今晩ここに泊まらせていただくことになりました。よろしくお願いしますね?」
「そ、そうですか!私はイシアと言います!よろしくお願いします!」
「えっ!ハヤテさん、今日だけなんですか!?」
「うん、女性3人がいる中に俺1人っていうのも悪いし、長いこと居させてもらうっていうのも悪いしね」
「そっ、そんな!悪いことなんてないですっ!ねっ!お母さん!」
「そうですよ、ハヤテさん。あなたは恩なんて気にしないでいいと言ってくれましたが、私は今でも恩を返したいと思っています。」
「いえ、そういう訳にはいきません。恩を利用して偉そうにしたくありませんし、なにより俺がそれを嫌います。それに、アリス、アリスのお母さん、イシアちゃん、3人とも魅力的な女性です。俺がここにいることであなたたちに迷惑をかけてしまうでしょう。だから、ここは勝手かもしれませんが、今晩だけ泊まらせていただけないでしょうか?」
にこっと微笑みながら俺はそう言った。
「あらあら、うふふっ」
頬を少し赤に染め、右手を頬にあてるアリスのお母さん
「み、魅力的っ、だ、なんて ///」
「はっ恥ずかしいです〜///」
顔を赤くして慌てるアリスとイシア
…なんでこうなった。なんで3人とも怒ってるんだ?顔を赤くして、なんかまずいこと言ったか!?まさか!俺みたいなフツメンごときが、調子に乗って魅力的だなんて言ったのが不味かったのか!?
市島 颯というこの男、自分ではフツメンでモテないと思っているようだが、単なる鈍感野郎であることをここで説明しておく。この男は地球にいた頃、結構な数の女性から告白されたり呼びだされたりしていたのだが、持ち前の鈍感さで見当違いの解釈をし、非常に相手を困らせるような発言をしていたのだ。そしてそれに気付いていない、むしろ嫌われてるんじゃね?と思っているため、自分のモテなささに嘆いている(勘違い)。それが原因でクラスの男子から恨まれていることにも気付いていない。この男の容姿は地球のことと、この男の前にいる3人の様子を見ても分かるように、とても整った顔立ちをしている。黒髪黒目で、切れ長の目に鼻はすらっとして高く、眉も綺麗に整っている。それなのに、自分をフツメンもしくは劣っていると思っているのは、隣にいたトリ頭やそれに伴って自分の鈍感さがプラスされたことは言うまでもないことだろう。
ーーーそして沈黙の時間が流れる。
「男の人に褒められるなんて、久しぶりだわ♪ ハヤトさんありがとうございます。分かりました。ハヤテさんも色々と考えておられるようですし、無理に引き止めてはいけません。この街で生活するのですよね?」
アリスのお母さんが聞いてきた。
「はいっ!取り敢えずは冒険者になってこの街で生活していこうと考えています」
「それなら、いつでも会うことはできますね。なにか困ったことがあればこの家を頼って下さい。お話もしたいですから」
「ありがとうございます!困ったときはそうさせてもらいますね」
「そうですね!ハヤテさんはこの街にいるんですからいつでも会えますね!」
「あぁ、明日取り敢えず冒険者になるから、アリスは先輩だな!よろしくね!」
「はいっ、よろしくお願いします」
「そうと決まれば、さあさあ、夕飯が冷めてしまいます。どうぞ食べて下さい」
「ありがとうございます!」
パクっ …うめぇ〜〜〜!なんだこの肉料理!アリスの母さんめちゃくちゃ料理上手だな!
「お代わりもあるのでたくさん食べて下さいね」
ーーあぁっ!神とはあなたのことだったのですか
更に、食は進み、2人半くらいの量を食べてしまった。
だって、料理が上手すぎるんだもん!
「さすが、男の人ですね。見ていて気持ちがいい食べっぷりでした」
「あっ、ありがとうございます、それにしても、アリスのお母さん料理がお上手ですね〜!」
「ふふっ、ありがとう。料理は好きだし得意なのよ」
「わっ私も料理出来ますよ! お母さんほど上手くはないですけど…」
「私もっ!いえ、私はお料理できません…」
なぜかアリスとイシアが張り合ってきたが、自分の実力と母親の実力わ比較して負けていると思ったのだろう、最後らへんの言葉がしぼんでいったからね。
そうして、4人は今日あった出来事や自分のことについて話して時間は過ぎていった。
あっ、ちなみにアリスのお母さんの名前はサーチェだそうです。自分の名前を言うの忘れていたそうです。ちょっと天然なのかな?
4人楽しく話しをした後、明日朝の8時に冒険者ギルドにアリスと行くということを決め部屋へと戻り、明日のために高まる気持ちを抑えながら俺はベッドの上で眠りについた。
お読みいただきありがとうございました!