表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王妃の宝石  作者: 桐生初
2/10

竜国と獅子国の思惑

その頃、噂のボンクラ王カールは、まさしく血相を変えて、マリアンヌ王妃を探し回り、大鷹で、ユニコーン国という、小さな農業国の方向へ飛び去ったと聞くと、軍勢を率い、ユニコーン国に向けて出立しようとしていた。

ユニコーン国は、アレックス達の居る麒麟国の隣の隣の国であり、方角もほぼ逆で、もうここで既にアレックスに一泡吹かせられている。


「殿下、獅子国の軍勢でございます。」


側近が告げた方向を見ると、獅子国王リチャード自ら軍勢を率いて、城に向かって来ていた。


「義父上…。」


「マリーが連れ去られたと聞いたぞ!」


かなりの剣幕で怒っている。

この段階でこの事実を知っているのだから、獅子国からマリーと共に入って来た兵士の誰かが報告をしているのだろう。

カールが同じ寝室で寝ていて、気付かなかった事も知っているのかもしれない。


「申し訳ありません…。」


「昨夜に限って別室で休んでいたのか。マリーが厭う程、毎夜マリーの寝室で休んでいると聞いているが。」


「い、いえ…。」


「一緒に休んでいて、賊の侵入に気付かなんだか!」


「すみません…。」


「なんたる暗愚。もう貴様などに用は無い。マリーは我々で探す。」


「いいえ!それは私が!」


「ではこの国は何とする!」


「そ、それはあの…。」


「代わりに国を治めてやっても良いぞ…。まあ、マリーを目前でやすやすと攫われたこの失態、タダで済むと思って貰っても困るがな。マリーは、そなたが是非にと。必ず幸せにすると言うから嫁がせたのだからな…。」


やはり獅子王は知っていて、愛娘の安否を気遣ってもあるだろうが、この機にペガサス国乗っ取るつもりで来た様だ。

マリアンヌは探しに行きたいが、留守にしたら、このままリチャードがペガサス国の王になってしまうのは、自明の理だ。

元国王の父は、元々獅子国に受け渡してしまった方が面倒が無いと言っていた。

父に任せても同じ事だった。

しかし、カールにもプライドがあった。

マリアンヌのお陰で、漸く政というものも分かって来た。

自分の力で、自分の政をやってみたいという欲も出て来た所だった。

答えあぐねていると、リチャードに家臣が告げた。


「ペガサス山岳付近に、竜国の軍勢。およそ4000。」


「ーやけに早いな。話をつけに行こうか。さっきの話は竜国との話の後だ。考えておけ、カール。」


「はい…。」





竜国の軍勢と向かい合うと、お互いに兵達に手を出すなと合図を送り、馬で歩み寄った。


「我が国の斥候がマリアンヌ王妃の誘拐を知らせて参りましてね。この機に乗じて一気にペガサスを乗っ取られるお積りかと思い、ペガサスを助けに参りました。」


ペガサスは大国に挟まれた立地条件故に、両国と友好関係を結んでいる。


「ほう。竜国の斥候と申すは、他国の情報を流すだけなのかな。」


「ーと、仰いますと?」


「マリーを連れ去った賊は大鷹に乗っていたと聞いておる。大鷹は竜国が産地ではないかね。」


「これは異な事を。マリアンヌ王妃を竜国が攫ったと仰せか。最近は繁殖繁殖で、どこでも手に入りますよ。」


「あの速さで飛べるのは、純潔に他ならんと思うがね。」


「解せませんね。我々がマリアンヌ王妃を攫って何になるというのです。欲しいものは正々堂々と奪い取る。これが竜国です。誘拐などと、そんな卑怯な真似はしない。」


じっとりと腹を探る様にアデル王を見つめるリチャードに、更に言った。


「そこまで仰るのなら、我が国からも捜索隊を出させて頂く。」


「そしてここは休戦と願いたいが。子を思う親の気持ち、ご理解頂けぬかな?」


やはり、リチャード王の方が一枚上手な様だ。

しかし、混乱に乗じてペガサスを一気に攻めるアデルの計画は頓挫したが、リチャードの方も、休戦を申し入れた以上、あからさまな侵略行為はできない。

引き分けという事で納得し、兵を引かせながら、アデルは側近に指示を出した。


「アレックスを探せ。こうなったら、マリアンヌ王妃を獅子王に渡して、代わりにペガサスを寄越せというしかない。アレックスが関わっている事が獅子王の耳に入らぬ内にな。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ