階級格差
時が経ち、グレイス達に卒業試験が近づいていた。
「もう、卒業か~」
ジルフェスは懐かしむようにそう言った。
「そうね、3年もこんな馬鹿と一緒にいるなんて寒気がするわ」
アオイは相変わらずジルフェスを小馬鹿にした。
「あとは、卒業試験のみだ。そろそろメンバーが言われる頃だと思うが・・・」
グレイスは懐かしむ二人にそう告げた。
卒業試験とは、少尉以上の人間と卒業試験に参加する生徒3名によって行われる。
その4人で実際の戦場に赴きその戦果を隊長となる少尉以上の人間が評価し、合否を判定する。合格の場合、その隊長と1年部隊を組み戦場で活動する事になる。
不合格の場合、もう一度戦場に送られ再評価する。
再試験は3回まで許され、それを上回る試験を行った場合卒業後は実際伍長からの階級が上等兵、一等兵まで下げられる事が多い。
成績上位者は飛び級なども存在し、人生に大きくかかわる試験となっている。
「えー卒業試験部隊編成を発表するぞー」
とクラスの担任の教師がそう告げた。
「第1班、部隊長アリーナ・アス・アーレント大尉。
メンバーはカール・フェ・ラウ、グスタフ・・・・・・」
クラス内の人間は部隊長となる人の名を聞きざわめいた。
「あのAAA様だった~」
「名門「アス」家の人だよね。たしか、」
「そうそう、23歳にして大尉になったんだってね~」
ジルフェスはなぜそんなにざわめいているのかが理解できず、一人ごちるのだった。
「そんなにアリーナなんとか大尉ってすごいのか?」
その質問に、敏感に反応したのアオイは怒鳴るように言った。
「あんた、AAA様も知らないの?!AAA様は水の国でも1,2位を争うほどの名門アス家の人で光国立魔法技術学校を主席で卒業、飛び級で大尉から活躍したすごい人なんだから。」
「そのAAAってなんだよ。」
「AAAじゃなくてAAA様!!アリーナ・アス・アーレントかしら文字を取って皆
親しみをこめてAAA様というの。」
「詳しいだな、アオイは」
「アンタが知らなさすぎるだけよ」
アオイが敏感に反応するのも仕方がなかった。なぜなら同じ水の国出身で同じ水の魔法の属性だから意識したくなくてもつい意識してしまうような
憧れの先輩なのだから。
そして、教師は淡々と部隊員の名前を呼びグレイス達の番がついに来た。
「えー第4班、部隊長ミハイル・レイアス准尉。
メンバーはグレイス・ミラ=フィルト、ジルフェス・ロッシュ、
アオイ・エリュアール以上4名」
「ちょっちょちょ、せんせ~い、なぜ俺らの隊長が准尉なんですか!」
「私に問われても知らん。お国が決めた事だ。」
「なんだよそれ」
「でも、たしかになぜ准尉が卒業試験に少尉以上と決まっているはずなのに」
アオイは不思議そうに一人呟いた。
「そうだな、優秀さ故に准尉で隊長になったのでは?」
グレイスはアオイにそう告げた。
「しかし、優秀なら少尉以上じゃないかしら?教育能力が優れてるとでも?」
「そんなの、会ったらわかんだから、考えるのはやめよーぜ」
とジルフェスは能天気にそう言った。
「アンタは考えなさすぎなのよ。それになんでアンタと同じ部隊なわけ?」
「そんなの俺に言われても知らねーよ。」
グレイスはそんな会話を仲裁するようにこう言った。
「たしか、学校生活や成績を見て判断してると聞いたが・・・」
それを聞きアオイは嘆いた。
「アンタなんかと関わるんじゃなかったわ」
「おいおい、そこまで落ち込まなくていいだろ」
「ハッハッハ、もう決まった事だし諦めよう」
グレイスは苦笑いしながらそう告げた。
そして、なぜ自分達の部隊だけ准尉なのかミハイル・レイアスとはどういう人物なのか不安が募るばかりだった。