プロローグ
絆
白城縁
プロローグ
初めてだった。初めて、告白した。こんなに好きになれるんだって、初めて知った。初めてなことばかりで僕は浮かれすぎていたのかもしれない。彼女が時々影の指したような表情をしていたことに気づけなかったのは……
彼女を初めて見たのは入学式が終わってほんの数分後の事だった。彼女は入学式が終わったその足で何故か屋上の方に足を運んでいるのが見えた。追いかけてみると屋上の扉の前には立入禁止の立て札が置いてあった。
「確か、ここらへんに行った気がしたんだけどな……」
僕は彼女を無意識に追いかけていた。どうしてなのか自分でも分からなかった。周りの人から見たらストーカー以外の何者でもないだろう……僕はそんなことにも気づけないくらい夢中になっていたのか、何も考えず屋上の扉を開けた。それが、彼女との本当の出会いだった。
「あれ?どうしてこんなところにいるの?」
当然の質問だ。どうしているか何て、僕も君に訊きたい。頭の中では分かってはいるのだが言葉にすることが出来なかった。あぁ、可愛いなとかあぁ、声、綺麗だなぁとか、そんな事しか思い浮かばなかった。むしろ、言葉にしてしまっていた。
彼女は驚いた顔してこっちを見ている。僕は口にしてしまってからしまったと思った。口を慌てて閉じたときにはもう、遅い。それは、驚きますよね……初対面の、しかも、こんな有り得ないシュチュエーションで、まるで運命みたいに……ってのはちょっと言い過ぎですかね?
「済みません……僕も無意識に言葉を発してしまいました。嫌、でしたよね?いきなり、知らない子から、しかも中学生みたいな僕からなんて」
そうなのだ。僕はかなり身長が低い、しかも童顔だ。かなり、コンプレックスになっている。意識をしてくれて顔を赤くしているのか。はたまた、夕日のせいで顔を赤くしているのか、僕には判断できなかった。僕は申し訳ないことをしてしまったと思いもう一度謝った。
「あっこちらこそ、ありがとう」
彼女ははにかみながら言葉を返してくれた。彼女が魅せた照れたその笑顔を僕は忘れることが出来なかった。出来ればずっと、何時までも僕の、僕だけの為に笑っていて欲しいって思った。その時からだったのだろう。僕が彼女に惹かれていったのは……それから数分後に知ったのだが、彼女が同じクラスだったという事。たったそれだけでこれからの学校生活に一筋の光が見えた気がした。