第七章
三月九日の朝、奇妙な家が発見された。
一戸建てなのだが、二階部分が全焼しているにも関わらず、一階は全くと云って良い程無事だったのである。
二階の一室から、住人と思われる男性の遺体が発見されているらしい。
なんとその部屋には蝋燭が何本もあったそうな。全てが使用された形跡があり、火事の原因はこれと見られている。
蝋燭は何故か新品同様の白さだったと云う。
まるで部屋全体に黒い部分を放出してしまったかのような光景だったとも云う。
近所に住む者は、一昨夜にあった丘での火事と関連付けて「これは連続放火ではないか」と口々に不安を表した。
その遺体の彼自身が放火犯であったのだが。
彼をそれと知っている人がいたとしたら、今度は復讐に遭ったと云うかもしれない。
否、復讐には遭っているとも云える。
蝋燭を使って罪を犯した上、その蝋燭を全て処分しようとしていたのだから。
蝋燭の復讐に遭って彼は死んだと見ても強ち間違いではないのかもしれない。
焼けた小屋に意思があれば、復讐したかもしれない。
それは解らないけれども、受ける者が感じるものなのである。
これは“闇を放つ蝋燭”と呼ばれる不思議な物語である。どこからともなく聞かれ、伝わっている話である。
本当に物に意識があるのかどうかは解らないし、蝋燭が闇を生むのも科学的な理屈があるのかもしれない。
人は時に何か一つのことに凝ったり拘ったりする。
惑わされたり、狂っていた、などと云って振り返ることが出来るのは幸せなことだろう。
それに気づかずに何かを失ったり、他人に迷惑を掛けたり、取り返しの付かないことが起こる場合も多々あるだろう。
“モノ”の大切さ、それとの関わりを考えるのもたまには良いかもしれない。 (了)
“彼ら”と“彼等”の違いは意図的なものです。勿論指しているものは違います。
また、章の時間の進み方が少し複雑です。そこは読者の皆さんがうまく掴んで下さい。
次回はもっとミステリーな小説を書けたら良いなと思います。
読んでいただいた方々、ありがとうございます。
※この小説は“推理”から“ホラー”にジャンルを移動させました。