第六章
彼等はどうしただろう。彼らは…。思案を続けるうちに、夜がやってきた。
毎日毎日、来る夜。
見慣れている筈ではあるが、この暗い闇に体が慣れることは永遠にないだろう。
その後私は暗い部屋中に蝋燭を飾り付けた。段ボール箱に仕舞っていた凡そ二万本の蝋燭。全て使い切ってしまいたかった。
その一本一本に火を点す。綺麗だった。仄かな橙の灯りが私を暖めてくれた。
しかし空気は明らかに淀んでいる。少し苦しい気もする。
ふと壁を見た。蝋燭の光で私の体の影が壁に映っている。
闇だ。
蝋燭に因って闇が生まれている。
怖い。
ゆらゆらと揺れている。
恐い。
蝋燭を点さなければそれはそれで暗い部屋だったのだが、部屋に明るい部分が出来たためその明暗は広がってしまったのだ。
私は気分が悪くなった。
本来明るさは人を安心させるものである。暗闇が怖くて蝋燭を点けて光を求めた。
それが何故。
何故闇を放っているのだ。
逃げ出そうとしたその時、足元に何かがぶつかった。
昨夜使った灯油の残りが入ったポリタンクだった。
気づいた時には既に灯油は床に撒かれていた。
一瞬のうちに部屋は熱くなった。
短い蝋燭が床近くにあったのだろう。
おお。明るい。
闇が消えた。
これで安心じゃないか。
良かった。良かった。
眩い光と薄れ行く意識の中で私は安堵感に包まれていた。
――蝋燭が闇を放つ訳ないじゃないか――