第四章
私は水鉄砲を構えた。彼等の根城は丘の上にある。大木の下である。木造の小屋、それが私の標的であった。
五分前――小屋に侵入し、蝋燭を設置して逃げてきた。窓の桟、屋根の上、庭、棚中に台を置き蝋燭を立てた。これは云わば飾りである。本命は床に配置した。火はライターで点けてきた。今日は風もないし、湿度も低そうであるから、消えることはないだろうと思われた。
水鉄砲のタンクには水の代わりに灯油が入っている。暗闇で見る限りその差はない。
どうせ周りも燃えるだろうから多少のズレは構わない。大木も燃えた方が華やかだろうとさえ考えていた。気を付けなければならないのは蝋燭自体に灯油を当てないことだけである。火が消えたり、今から火事が発覚すると蝋燭を使う意味がなくなってしまう。
よく空気を圧縮させ、思い切って撃った。五十メートル程離れた草叢からの射撃である。
まずは小屋の壁を狙った。外壁は殆ど灯油塗れになっただろう。そして開けておいた入口から真っ直ぐに撃った。そのライン上の机や椅子の上に蝋燭は置かず、それを囲むようにして床に蝋燭は並べた。恐らくその蝋燭で着火するだろう。
その後私は一目散に自宅へと帰った。今頃蝋燭の下には家具から垂れてきた灯油が広がっているはずだ。
部屋の窓から丘を見ると、まだ蝋燭の小さな灯りが数十個確認できた。
徐々に背の低くなる蝋燭。やがてその頂上にある火は、灯油と接するだろう。
あれが纏まった一つの火になるのはいつ頃だろうかなどと思いながら私は眠りに落ちていった。