第三章
「なんてこった…」
「しっかり丸焼けだな」
「誰がこんなことを?」
「さあな。敵が多すぎて見当も付かねぇ」
四人の少年が焼けた小屋を見ながらぼやいている。まだ小学生と云う感じの風貌である。彼等は用がなければこの小屋に来ては遊んでいた。
現在時刻は放課後に当たる午後四時過ぎ。
今日も彼等は学校が終わるといつもと同じように此処へ集まった。
そして唖然とした。
いつもと全く違うその見慣れない建物に。
小屋は全焼していた。午前中に検証やら騒ぎは収まっていたので、彼等は情報を得られなかったのだ。灯油が撒かれていたことから、放火の疑いが強かった。
小屋は形こそ崩れていないものの、外壁は墨になっているようだった。内部には、いくつかの椅子と一つ机があるだけだったが、それらは辛うじて原型が解る程度だった。
彼等は中に入ってみた。彼等は驚いた。
小屋の中には不気味な蝋燭が立てられていた。
否、蝋燭が不気味なのではない。その数が不気味さを醸し出しているのだ。
彼等は怯えた。
「こ、この蝋燭は…?」
「知らねぇよ」
「何で小屋は真っ黒なのに、蝋燭は白いんだ?」
「…気味が悪いよ。ってか、もう此処は捨てて新しい所探そうぜ」
ただ焼けただけの小屋であれば、好奇心旺盛な少年達の秘密基地として利用されたのであろう。しかし、そこには蝋燭があった。それは、彼等をすぐに追い払った。
使われることのなくなった焼けた小屋には、夕闇が迫っていた。