表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仇。  作者: 八水 原
3/4

#02.或いは、過去

俺が振り返ると同時にドアが開き、見慣れた顔が小さく覗きこむ。

「あ…珍しく今日は早いんだね」

あぁ、と俺が言う。まだ寝ぼけているような声に、その顔は微笑した。

「今日ね、お父さん仕事だから、コウジの面倒見とけって言われたの」

…言っとくけど、コイツは俺の妹だ。

…名前?そんなんどうだっていいだろ。とにかく、面倒見られるのはコイツだ。俺は兄、コイツは妹。上と下だ。

ちなみに俺の名前は浩治。たまに名前書く時、浩浩って書いてしまう場合がある。ややこしいよ、全く。

「…で、その面倒見役が用事でも?」

「ううん、ただ、何してるかなーって…」

妹は下を向き、小さく呟いた。

実はこの妹、兄である俺に気があるらしい。冗談じゃないよ、俺はコイツのハッキリとしない性格はあまり好きじゃない。弱いというか…

「あ…でも何で今日は早かったの?」

俺が知る訳がない。最初から起きようとも思ってなかったんだし。

「んや…なんでだろうね…」

ううん、と俺が背伸びをしながら答えると、妹は、何やら気に食わなさそうな顔をした。

「彼女とデート…とか?」

彼女。俺には全く縁のない言葉だ。その理由は妹にある…詳しく言わなくてもいいだろ?

「ねーよ」

「そ。わかった」

安堵の息を漏らす妹。


飾り気のない、肩下まで伸びた黒い髪。母親似の綺麗な二重。そのパーツが組まれた小顔には、親父の面影はなかった。どこを取っても母親似。

「…?」

何か臭いがしたのか、妹はあたりを見回し始めた。クンクン、というような仕草だ。

「あぁーっ!!」

驚いた。長年の付き合いだが、これ程までに急なものは初めてだ。暗闇からクラッカーを鳴らされたような気分。

「どうした?」

俺の質問に答えることなく、妹は部屋を飛び出していった。

「火、点けっ放しだったぁぁっ!!!!」






「兄?」

妹が顔を覗きこんできた。

ハッとなり、俺は辺りを見る。よく掃除されたフローリングの部屋に、ガラス製のテーブル。このテーブルはもう古いが、奇跡的にヒビは一つも入っていない。昔から見慣れてきたテーブルだ。

その上には、よく磨かれた純白の皿。綺麗好きなのは妹で、そこも母親似だった。

いい匂いを放つ物が一つ。

「さっきから変だよ…?兄…」

心配そうな表情。

俺が黙ったまま居ると、頬を突っ突いてくる。

「早く食べないと、冷えちゃうよ」

うん。と呟くと、皿の上にある目玉焼きに箸を。

妹は小さく首を傾げると、キッチンへ戻った。湯気のたつ目玉焼きから目を離し、妹を見る。


鼻歌を口ずさみながら、沸いたお湯をカップに注ぐ姿。俺の視線に気付いたのか、一旦手を止め、こっちを向く。


「もうすぐで火事になってたかも。ありがとね、兄」


今日、キッチン燃えてたんだよな。本当なら。



朝食を済ませた後、暇になった俺は、再び部屋に戻った。勿論、自分の食器は自分で洗ったさ。

「間違いない…5日前だ」

5日後…つまり13日。その日までを、俺は確かに経過させている。経過させたし、その中に居た。

今日、妹がうっかり小火起こしてしまうことも分かっていた。これをどう説明しようか?

デジャヴってやつか?

或いは、予知?

違うな。


『巻き戻った』んだ。

はい、一人でテンション上がっちゃってます(笑 読んでくれてる人居るのかなぁ… 一話一話が短い;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ