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ぶちぎれ

性格が温厚なツヴィリンゲは普段怒ることは無い。

しかし、それは全く怒らないということではない。

唯一と言ってもいい怒る理由は自分の「大切」に手を出された時だ。

それはまごうことなきブチギレである。

アラクランのイタズラの時のアレは正確には怒っていない。血は繋がっていないが可愛い弟の可愛いイタズラだ。許すのが兄だろう。もちろん少しはイラッとするので刑には処すが。

「毎回送った部隊は生きて帰ってきている。つまり、奴らに殺す武器も度胸もないということだ。それに奴の力は分身だ。(おく)せず進め!」

弾丸、爆弾・ナイフなどの投擲(とうてき)武器、全て盾座で防いだ。何故だろう、今は描かなくても発動が出来る。頭も妙に冷静だ。

「別に今はどうでもいいか」

子狐座のステルスで音もなく近づく。そして彫刻具座で頸動脈を()っ切る。

一瞬にして辺りが鮮血で赤く染まる。

「殺しはしないんじゃないのか!?」

「はは、俺がいない間に俺の家族に手を出して生きて返すとでも?」

逃げられないように彫刻室座も並列で発動する。

「絶望と後悔の中で果てろ」

カラス座を発動すると伸ばした手さえ見ないほど周りが暗くなった。

見えないのはツヴィリンゲも同じだが、羅針盤座が位置を教えてくれる。

位置を確認できた奴から一人、また一人と確実に仕留める。

やけになった何人かが銃を乱射し、投擲とうてき武器を使う。ある程度は盾座で防いだが何発かは喰らってしまった。しばらくして羅針盤座が反応しなくなったが、まだ人の気配はした。羅針盤座が効かない以上暗いと場所がわからない。

しかし、明るくする気はなかった。奴らには暗闇の中で何をされるのかわからず、心の底から死んでもらわなくてはならない。

弾をあえて喰らって、当たった方向から推測した。

冷静に距離を予測し、彫刻具座を投げると「がっ……」という音と倒れた音がした。

何度か繰り返し、他人の気配がやっと無くなった。

カラス座、彫刻具座、彫刻室座、分身を解除する。

「ゴフッ」

初めて血を吐いた。あれだけまともに喰らえば血も吐くだろうと苦笑する。

手遅れになる前に、吐血している時点で手遅れかもしれないが、鳳凰座(ほうおうざ)を発動した。不死鳥たる鳳凰の名を冠した星座だ。傷の治りは遅くなるが、発動中は死とは無縁になる。

徒歩では時間がかかりすぎて、それはそれで死にそうだったので飛んで帰ることにした。あれやこれやと星座を使ったので、本来飛行に使用するわし座を使う余裕がない。仕方なく、そのまま鳳凰座で飛ぶことにした。

飛んでいる間もポタポタと血が垂れる。傷も少し動かすだけで激痛だ。

なんとか入口に着地するとヴィスイーが運んでくれた。

「ヴィリ!」「ツヴィさん!」

「あー、よるなよるな。血が付く。それを洗う奴のこと考えろ」

「相手は?」

「文字通り血祭りにあげてきた。ミィオ、治療を頼めるか?」

ミィオーセスの傍では治療が終わったヴェルソーとシュッテェが眠っている。

「ごめんなさい……。今日は調子が悪いみたいです……」

黄道上にある十二星座のツヴィリンゲたちと違い、少し外れている蛇使い座のはミィオーセスの星座の力は何故かその日の調子がまちまちだ。

「鳳凰座は?」

「絶賛フル稼働中だ。切ったら死ぬ。ミィオ、完治させろとは言わない。どれくらいなら治せる?」

「えとー……致命傷を重症にするくらいなら……」

「それでいい。死ななければ文句は言わない」

「わかりました。頑張ってみます」

「頑張るな。俺のしぶとい。致命傷を重症の方向に少し向けてくれるだけで十分だ」

ツヴィリンゲの治療はかすり傷と並行して行われた。

かすり傷や軽い火傷は薬で処置をし、銃創や体内の弾、重い火傷はミィオーセスが対処した。

「これだけ、やれば、大丈夫かと……。多分、ツヴィさんなら、きっと……」

鳳凰座はとっくに切れており、ツヴィリンゲは気を失っている。

「ありがとう、ミィオ。今日はもう休んで」

シュティーアにそう言われ、ミィオーセスは自室に戻った。

「ヴィリ……無理はしないでよ……私が甘えられるのはヴィリしかいないんだからさ」


「時間。代わる」

交代しながら全員で看病をした。

ヴィスイーはツヴィリンゲ周りの重力を軽減させて、身体が傷の治癒に体力を回せるようにした。

アラクランは幼いながら重大さをわかっているのか、シュティーアに何をしたらいいのか訊いた。シュティーアは(こた)えるために薬になる毒を調べて教えた。

教えてもらった毒をなんとか生成するとそれを飲ませた。

ヴェルソーは傷で火照る身体をったウォーターベッドで冷やした。

暑いと以前にツヴィリンゲと作ったものだ。あの時は水の無駄だとシュティーアに怒られてたものだが、さすがに今回は何も言われなかった。

ミィオーセスは無理をしない範囲で治療をした。無理をしないのは自分が倒れては意味がないからだ。

甲斐甲斐しく看病たおかげか、五回目の朝には目を覚ました。

「ヴィリ!」「ツヴィさん!」

五日ぶりにツヴィリンゲは自らの意思で身体を動かした。腕が、瞼さえも重たい。

「うるさい……。寝起きの病人相手に大声だすな……。頭痛いだろ……」

そう発するとシュティーアの目から大粒の涙がこぼれた。

お読みいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします

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