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かえす

「黄道十二星座は、牡牛座、牡羊座……」

アラクランがシュティーアに『星座解説図鑑』を音読して貰っている。

それを聞くミィオーセスはいつも気まずそうにしている。

「その顔やめろ、ミィオ」

「ツヴィさん。だって私、」

「確かに蛇使い座は黄道上にない。それがどうした。お前には痣がある。星落ち子たる証拠だ。何回も言わせるな」

「でも」

「でもじゃない。お前は蛇使い座の星落ち子、ミィオーセス。それ以上でもそれ以下でもない」

もう何度繰り返したかわからないやり取りをしていると、レーヴェが話しかけてきた。

「ツヴィさん、そういえば今日の人はどうします?」

「置いとくのも面倒だし、いつも通り帰らすかな」

敵なんざ置いておくだけで損失がでる。星座の力で大道芸まがいのことをして日銭は稼いでいるが、毎日カツカツだ。

新しい情報もない。送り届ける理由もない。つまり、自主的に帰ってもらうしかない。


ツヴィリンゲは隊長のところに向かった。アンドロメダ座によって空中から生えた鎖に繋がれた状態で微動だにしない。

もってきた水をかけると少し咳き込んで顔を上げた。

「【双子座】……。ユングフラウ様、とレーヴェ様、は?」

瞳に薄くハートが浮かんでいる。どっぷりと二人の能力に精神が侵されている証拠だ。

「その二人から最初で最後の命令だ。聞くか?」

「お二人からの、命令……聞く! 聞きます! 聞かせてください!」

「一、森に転がっている部下をもって即刻帰れ。二、今日のことは全て忘れろ。三、二度と星落ち子に関わるな。以上」

「それじゃあ俺はお二人に会えないじゃないか!」

「会えなくていいんだよ。二人はここで楽しく暮らしている。つまりお前は邪魔だ。会いに来ると二人に嫌われるぞ。嫌われたくないだろ?」

「……わかった」

隊長は渋々了承すると出口にとぼとぼと歩き出した。

「あー、待て」

何か思いついたのかツヴィリンゲは呼び止めた。

「お前、レーヴェとユングの役に立ちたくないか?」

「……立ちたい! 役に立ちたいぞ【双子座】!」

「じゃあ、中の情報をよこせ。あと、追わないように上を説得しろ」

「……それは、さすがに」

「間違いなく役に立てるぞ? なあ、レーヴェ、ユング」

話を聞いていたのか奥から二人が出てくる。

「えー、おじさん。僕達の役に立ってくれるの?」

「嬉しいなあ。おじさんが中の情報を教えてくれたら助かっちゃう」

レーヴェの口から「嬉しい」「助かる」を聞いた隊長は即決したようだ。

「分かりました! 俺、頑張ります!」

「紙に内容を書いてフウチョウ(テレポート)と羅針盤座を描けばここに届くはずだ。情報を送ったこと、誰にも知られるなよ。二人はお前を頼りにしているんだからな」

「はい!」

隊長はわかりやすく気持ち悪いくらい上機嫌で出ていった。

姿が見えなくなると、糸が切れた人形のようにツヴィリンゲは膝をついた。傍で立っているレーヴェとユングフラウは駆け寄るでもなく光となって消えた。

上半身の力も抜けてうつ伏せに倒れる。どうにか身体に力を入れて仰向けになる。深呼吸をするように深く長く息をする。

「さすがに一瞬で分身二体は消費が激しいな」

額には脂汗がびっしりと浮かんでいる。じっくりと時間をかけて作ったあの時とは違う。だからかレーヴェとユングフラウの話し方が違った。だが、突発的にバレずにアレなら上出来だろう。

ぬっと視界の上から誰かが覗き込んでくる。

「ヴィリ? 大丈夫?」

「……ティーア、何か用か?」

「なかなか戻ってこないから心配になって」

「俺が手負いに苦戦するとでも? ちょっと新しい情報のために無理しただけだ」

「あまり無理するのは良くないよ?」

「無理はするだろ。最年長として。それに俺の力は他の力と違って多少汎用性が高い。やれることはやらねえと」

「ムキムキにしかなれない私への腹いせ?」

「何でそうなる(笑)」

少しの間、二人で笑った。

お読みいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします

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