けいい
彼らは星落ち子。生まれつき左肩に星座型の痣がある子供たち。
彼らは太陽の通り道(黄道上)に存在する星の力を使える。
他の七十五の星座は他の人間にも使える。
時計座を付与した時計は衛星時計よりも正確な時刻を知らせ、トカゲ座は高所作業で落ちないように何よりも強力な接着剤になり、炉座で灯りや暖房を確保したりした。
しかし、黄道十二星座と一つの星座だけはどうしても使えなかった。
そこに現れたのが13人の子供たち、ツヴィリンゲたちだ。
さすがに己以外の十二星座は使えないようだが、己の星座は難なく使いこなし、他の七十五の星座も始めから知っているかのように使いこなした。
使えないものを使えるようになりたいのは人間の性だ。
どうにかして使おうと研究対象にされていた。
そこでの暮らしに不満はなかった。一日に数回能力を少し使うだけで後は自由にしていても良かったからだ。しかし、研究施設からは出てはいけなかったし、出れなくなっていた。
不満はなかった。ならなぜそのままいないのか。決まっている。不満が出来たからだ。
「薬で仮死状態にすればもしかしたら研究も楽なのでは?」
「仮死状態でなくても長期間眠らせるのは良い案だ。こちらで力の強さが決められる可能性もあるかもしれない」
ある日、能力で遊んでいたツヴィリンゲはそんな会話を聞いてしまった。
誰にも相談できなかった。そこを察したのかシュティーアが訊いてきた。
「どうしたの、【双子座】さん」
当時、お互いの名前は知らず星座で呼び合っていた。
「【牡牛座】……。実は」
ツヴィリンゲは一か八かで話してみた。
「……なるほど。確証がないけどありえる話ではあるね」
「信じてくれるのか?」
「【双子座】さんがそんな嘘つくような人には見えないし、得がないからね。ふむふむ、長期間ってことは一日の間の大半って感じじゃなさそう。必ず身体を薬に慣らす時間が必要なはず。これから何らかの形で睡眠薬が投与されると思うから、それを確かめつつ、脱出計画を立てよう」
「ああ」
計画実行は当然全員集まってからになった。
半年かけて十人、さらに三ヶ月かかって十三人集まった。
そこから二ヶ月かけて全員を説得した。
その間、ツヴィリンゲは全員の分身を作り、シュティーアは脱出経路を確かめた。
この時はまだ確証はなかったが、度々「仮死計画」を聞いた。
脱出計画はうまくいった。
研究員たちはまんまと騙されてくれた。どうやら能力が切れるまで本物だと思い込んでいたようだ。
呼び方が星座のままだと味気ないので二人で考えた。
牡羊座 ヴィッタ―(9) 男 能力 防御力強化
牡牛座 シュティーア(14) 女 能力 筋力強化
双子座 ツヴィリンゲ(14) 男 能力 分身
蟹座 ラーク(13) 男 能力 斬撃強化
獅子座 レーヴェ(8) 女 能力 精神操作
乙女座 ユングフラウ(10) 男 能力 誘惑
天秤座 ヴィスイー(12) 女 能力 重力操作
蠍座 アラクラン(5) 男 能力 毒
射手座 シュッテェ(8) 女 能力 射撃制度向上
山羊座 トラゴス(13) 男 能力 脚力強化
水瓶座 ヴェルソー(12) 男 能力 水操作
魚座 ルィヴィ(7) 女 能力 索敵
蛇使い座 ミィオーセス(12) 女 能力 治癒
様々な言語で星座を訳して、性別も考慮した上で名付けた。幸い全員気に入ってくれたようだ。
シュティーアはシュティ、ツヴィリンゲはツヴィ、ユングフラウはユング、
ミィオーセスはミィオと長い名前勢は自然と略すようになった。
なんとなくシュティーアはヴィリ、ツヴィリンゲはティーアと呼ぶようになった。暗黙の了解なのか他十一人は二人をツヴィ、シュティ以外で呼ぶことはない。
研究施設から逃れた後、手頃な洞窟を星座の力で改装した。
追手はあるが誰にも縛られない自由な生活を送れている。
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