ぴんち
ツヴィリンゲは走った。レッグとの戦闘で最初の位置からかなり離れてしまった。
「急いでも無駄だと思うけどな。てかお前、何で山羊座と天秤座使えるんだ?」
「ちょっと黙ってろ!」
レッグを置いていくわけにもいかず、アンドロメダ座で拘束し、背負っている。
自分以外の十二星座が使えることは今は横に置いとくしかない。
「ティーア!」
「ヴィリ!」
シュティーアは既に起き上がっており、一か所に寝かせていた。見たところ全員いるようだ。
「何が起こってるの?」
「火だ。お前らの家中心に火が放たれたんだ」
レッグが背中で答える。
「それ、どういうことだよ」
「簡単な話だ。研究所はいつまでも抵抗するお前らに痺れを切らした。自分のモノにならないならいっそ壊してしまえ。それに現在の星落ち子がいなくなれば、新しい星落ち子が生まれるかもしれない。ならそれを従順になるように教育すれば手っ取り早い。そう考えたんだろ」
「俺らは道具じゃないんだぞ……」
ツヴィリンゲは拳を強く握った。
「生け捕り依頼だったがそれは表向き。本当の依頼は半殺しにして強く転生を願いながら死亡させることだ。科学者が聞いて呆れるほど非科学的だがそこまで切羽詰まってるんだろ」
ツヴィリンゲは苦悶の表情を浮かべると言った。
「……ティーア、ヴィスイーに頼んで上空から脱出しろ」
シュティーアがヴィスイーを起こしに行こうとするとレッグが「辞めておいたほうが良い」と漏らした。
「アンチスター繊維と同時に地面に埋め込んで星座を発動させる装置も開発された。今は逃亡防止で盾座がドーム状に仕掛けられている」
「消すしかない、ってことか」
ツヴィリンゲはどうやって盾座を破壊できるか思考を巡らした。彫刻具で一点突破か、矢座で連射するか、どっちにしろ一点突破しかないと考えていると……
「ツヴィさん、やりましょう!」
ヴェルソーが口を開いた。確かにヴェルソーなら火に直接水を届けることが出来る。
「……でもこんなに広範囲に撒けるほど水はないぞ?」
次にラークが口を開いた。
「全員でポンプ座を発動、ヴィスイーが持ち上げてヴェルソーが撒く。これしかない」
見渡すといつのまにか全員起きており覚悟を決めたような顔をしている。
「仕方ねえ。やるか!」
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