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異世界白書物語日記 〜番人ドールぬいぐるみサンズ〜  作者: マーたん


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38/39

仲間たちの裏切り

信じていた

背中を預け、命を賭けて戦ってきた仲間たち


共に笑い、泣き、絶望を乗り越えたとさえ思っていた

だが――“裏切り”は、いつも想像よりも静かに訪れる


俺、タクマは異世界に召喚され

女神に魔法と錬金術を与えられ、Sランク冒険者として頭角を現した

その力は、いつしか周囲の“希望”ではなく“恐れ”となっていった


彼らは言った

「タクマ、お前は強すぎる」

「お前の正義が、この世界を壊す」

「だから……ここで終わってくれ」


仲間たちの刃が、俺の背に突き立てられたとき

すべてが音を立てて崩れた


これは、

信頼の崩壊と、選ばれた者の孤独

――そして、それでもなお“信じたかった”者の物語

異界統合戦争が激化する中

ヴォイドの軍勢だけではなかった

俺の創った世界を守るために集まったはずの仲間たちが一人 また一人と姿を変え始めた


最初に剣を向けたのはリナ

エルフの少女

俺が奴隷商人から救ったあの日から ずっと隣にいた存在


「タクマ あなたの創る世界は間違ってる」


「は?」


「あなたは何でも作り替える 世界の形も 命の意味も

 それじゃ……私たちは何のために生きてきたの?」


その手に宿るのは神の槍

俺が与えた創造魔具の一つ

リナはそれを使い 俺の世界を貫こうとしていた


「やめろリナ それは俺たちのための武器だろ!」


「違う もう違うの タクマ あなたのその目が怖いの

 正しさを握り潰すような目」


次に立ちはだかったのはディール

かつて魔王軍を壊滅させた元戦士

その身体は半魔族で俺が差別から救った存在だった


「タクマ お前はもはや神になった

 だがな 神が全部正しいとは限らねえ

 お前に支配されたくねぇんだよ」


「俺は支配なんか──」


「してんだよ 気づけ タクマ

 お前の創ったこの世界は お前の望み通りにしか回らねえ

 誰が生きる 誰が死ぬ それもお前のさじ加減だ」


そして最後に現れたのはあの男

レオン

親友だったはずの男

かつて戦い 俺の腕で死んだはずの存在


「タクマ お前の世界で蘇ったよ」


「どうして生きてる……!」


「お前が創ったんだろ 俺の魂を持ってた女神が

 それを使って俺を組み直した

 俺は……お前の世界に逆らうためだけに生まれた」


「ふざけるな……」


レオンの手には黒槍

俺が倒したはずの破壊王の力を宿す武器

その力は世界の理を壊しながら近づいてくる


「タクマ このままじゃ お前が創った世界は

 また一つの地獄になる」


「じゃあどうしろってんだ!!」


リナが涙を流しながら叫ぶ

「壊すしかないのよ タクマ あなたごと」


仲間だった者たちが敵になる

それぞれが信じるもののために

俺はたった一人で立ち向かうことになる


リナ決別戦


空が裂ける音とともに

リナが俺の前に立った

金色の髪が風に舞い瞳は揺れていたが決して逸らさない


「タクマ 私は……あなたを止めに来た」


その手には“星槍アステラ”

俺がかつてリナのために創った神具

一切の闇を砕き 一つの希望を貫く武器

それを 今 俺に向けている


「なんでだよ リナ……俺たちは同じ世界を望んでたはずだろ」


「そう思ってたよ でも違った

 あなたの世界は 綺麗すぎるの

 痛みも迷いも 弱ささえも認めてくれない」


「そんなつもりじゃ……」


「あなたは過去を見ない

 失敗も傷も 全部『創り直せばいい』で消していく

 そんな世界……生きてるって言えるの?」


言葉が刺さる

俺は完璧な世界を求めた

苦しみのない場所

誰も泣かない楽園

だけど それは“本当の命”を削っていたのかもしれない


「だったらどうすればよかった……!」


「立ち止まって悩んでくれればよかった

 一人で世界を背負おうとしないでくれれば」


リナが槍を構える

涙を流しながらそれでも戦う覚悟を決めた目


「私はあなたを愛していた

 でも……いまのあなたは怖い

 だから 私の手で あなたを止める!」


槍が煌き空を割る

俺は奈落断ちを呼び出し受ける

二つの神具がぶつかるたび 空が鳴き 大地が割れた


――斬り結ぶたび思い出が蘇る

あの日の笑顔

手をつないだ夜のこと

「タクマ あなたの世界はね

 もう一人じゃ守れないの」


「だったら一緒に──」


「もう……一緒に行けない」


その瞬間 槍が俺の胸を貫いた

時間が止まるほどの衝撃

それでも俺は リナの目を見つめていた

涙と血が混じりながら彼女は微笑んだ


「ありがとう タクマ

 あなたがくれたこの世界で 私は私を取り戻せた」

そしてリナは静かに倒れた

命を使ってまで 俺を止めようとしたその想いだけを残して


「リナ……」


世界が静まり返る

旧神もサンズも その場にいたすべてが黙していた

仲間の死

創った世界で

俺が 彼女を殺した


その瞬間 俺の心のどこかが砕けた

奈落断ちが黒く脈打ち 新たな形へと変わり始める


暴走の神


リナの槍が貫いた痕から

俺の中にあった“何か”が崩れた


創造魔導の陣が暴走し

空が歪み 世界の法則がねじれる

死んだはずの存在が蘇り

存在するはずのない生き物が現れる


俺の意思と関係なく 魔力が世界を書き換え始めていた


「やめろ……こんな世界 望んでねぇ……」


叫んでも止まらない

俺の背から伸びた“創造の翼”は真っ黒に染まり

その羽ばたき一つで

街が消え 大地が裏返り

空に浮かんだ月が砕けた


そして――

奈落断ちが 変貌する


刀身にリナの魂が宿り

刃は歪み 黒と金の渦を巻き始める

それは“神殺し”の力

かつて破壊王さえ恐れた 魔の進化


「このままじゃ……俺自身が世界を壊す……!」


そのとき 響いた声


『――止まれタクマ』


サンズだった

空間を凍らせながら現れた番人は

かつてないほどの厳しい目で俺を見下ろしていた


『もう手遅れかもしれん

 せやけど リナの魂をお前に置いてった意味を忘れたらあかん』


「サンズ……」


『ワイはこれ以上 お前を神と認めん

 次の一撃で お前が自我を失うなら

 ワイが裁く』


創造か 破壊か

神か 魔か

いま俺の中ですべてが混ざり合ってる


リナの声が 微かに響く


――「タクマ あなたは…創りたい世界を……忘れないで」


その声が一瞬

俺の暴走を止めた

だが 同時に新たな存在が出現する


空を裂いて現れたのは

漆黒の鎧を纏った男――


「久しぶりだな タクマ」


レオンだった

だがその目に宿っていたのは、かつての親友の光ではない


「この混沌が お前の“答え”か? なら、俺が止める」

その手には 黒槍エグゼノス

“創造”の対となる“消去”の力


ここからが 本当の地獄だ


親友との決着


赤黒い空の下

大地はねじれ 空間は裂け 世界は泣いていた


タクマの周囲には創造魔導が暴走し

リナの魂を取り込んだ“奈落断ち・改”が脈動する

レオンは黒槍エグゼノスを構え 一歩ずつ近づいてきた


「タクマ もう一度聞く

 お前は この世界をどうしたい」


「……誰も泣かない世界を創りたかった」


「その結果がこれか?

 リナはそれを望んだか?」


「……っ」


タクマの手が震える

怒りか 悲しみか それとも迷いか


レオンの声が静かに響く


「お前は神になった

 けど 本当の意味で人を理解しようとはしなかった」


「お前に何が分かる!」


タクマが叫ぶと同時に

“奈落断ち・改”が黒と金の軌跡を描き空を裂く


レオンは瞬時に跳躍し

黒槍エグゼノスを振るい“創造の刃”を消滅させる


――それが“消去”の力

存在そのものを否定する、創造魔導の対極


「お前が何を築いても 俺が壊す

 それが…かつての親友として

 今の“神”に言える最後の忠告だ」


タクマの表情が歪む

苦しみと怒りと…そして哀しみ


「だったら、壊してみろよ!レオン!!」


二人の武器がぶつかり世界が崩れる

大地は浮かび 空は裂け

その中で 二人だけが確かに生きていた


過去の笑い声がよぎる

「お前はさ、世界を変える気がある奴だったな」

「バカみたいに真っ直ぐだった」


槍と剣が交差し 火花が走るたび

失われた日々が蘇る


そして

一瞬の隙を突いて レオンの黒槍が

タクマの胸を貫いた


「……っが……!」


血がこぼれる

創造魔導の光が一瞬揺れ

世界の再構築が止まる


レオンの目に悲しみが宿る


「終わりにしよう タクマ

 お前の“優しすぎる正義”も

 この悲しい神の道も」


だがその瞬間

タクマの瞳が深く光を放ち

リナの声が響いた


――「タクマ あなたは“終わる”人じゃない」


奈落断ちが共鳴する

リナの魂と共に 真の姿を現す


「……違う レオン

 俺はまだ 終わらない」


貫かれたはずの胸が再生し

黒と金の炎がタクマを包む


「お前が壊すなら……

 俺は“創り直す”!」


そして再び

タクマとレオンの決戦が始まる


この戦いの果てにあるのは――

和解か 決別か 滅びか 再生か


創壊神具と最後の選択


黒と金の炎がタクマを包む

奈落断ちの刃が崩れ 再構築されていく

リナの魂、過去の記憶、そして今の自我が融合し


一振りの武器が生まれた


「創壊神具:アルス=ルイン」


創る力と壊す力

希望と絶望

神と人

すべてを内包した神具


「レオン……今ならわかる

 お前が何を恐れてたのか

 俺のやり方が、どれだけ一方的だったかも」


レオンは黙って槍を構える

だが、手は震えていた


「俺はお前を止めるつもりだった

 でも……今のお前は もう“壊すべき存在”じゃないかもしれない」


タクマは静かに一歩踏み出す

世界がそれに反応し 揺れる


「だから、レオン

 お前が俺を信じられるなら――ここで槍を捨ててくれ」


レオンの目が揺れる

かつて見たタクマの目と同じだった

弱さを認めた上で それでも前を向こうとする目


「……チッ ほんとに変わったなお前」


レオンはゆっくりと槍を下ろす


「ただし、約束しろ

 “創る”だけじゃなく

 “壊さないといけないもの”も 自分の手でやれ」


タクマは頷いた


「もちろん 最後まで背負う 俺の創ったこの世界を」


そして二人は、互いの武器を下ろし

握手ではなく、拳を軽くぶつけた


その瞬間――空が砕け

世界全体に“強制編集”の魔力が走る


「――やっと、整ったわね」


空間を裂いて女神が現れる

その手にあったのは、世界の“編集鍵”


「あなたたちの戦いを見届けて

 ようやく“神の座”を奪い返す条件が揃った」


タクマが目を細める


「女神……それが本性か」


「私は最初から、あなたを“起爆剤”として異世界に落としたの

 そして、今が回収の時よ」


女神の手が編集鍵を振るうと

世界が再構築され始める

都市が崩れ、記憶が書き換わり、存在そのものが消えていく


「この世界を“私色”に染め上げる

 あなたも この戦いの履歴も

 すべて不要」


そのとき――タクマが立ち上がる

創壊神具:アルス=ルインが光を放ち、編集の力に干渉する


「なら、俺は

 お前の“編集”に“上書き”する」


世界改変×創造破壊神具

タクマ vs 女神

ついに最終戦開幕


創壊の対話


「あなたには重すぎるわよ、この座は」


女神が編集鍵を掲げると、空に巨大な円環が浮かぶ

世界のすべてを記録した「神歴書」

そこに記された全存在の運命を、彼女は“上書き”できる


「お前が世界を創ったのは、自分の理想のためじゃなかったのか」


「そうよ。

 だからこそ、私以外に編集させるつもりはないわ」

その瞳には、一切の迷いがなかった


だが――タクマは一歩も退かない


「俺は、誰か一人が決める世界じゃなく

 みんなで選べる世界を創るためにここに立ってる」


創壊神具:アルス=ルインが反応し

タクマの背に六つの光輪が出現する

創造・破壊・編集・記録・共有・選択

神の機能すべてを兼ね備えた“多神機構”の覚醒


「だから、もう一度言う

 お前の編集を――上書きする」


「面白い…やってみなさい」


瞬間、神歴書が開き、世界が白紙に戻ろうとする

タクマが創った街、出会った仲間、記憶、感情、全てが塵に還る


「俺が生きてきた証を…消すなぁあああああ!」


タクマがアルス=ルインを振り下ろす

神歴書に真っ向から叩きつける“創壊の一撃”


刃と鍵がぶつかり、世界が震えた


神歴書が破れ、編集鍵が砕け

女神が初めて後退する


「……この力……あの時の“彼”に似ている……」


「“彼”?」


女神がふっと笑う


「あなたに、力を託したサンズの“本体”よ」


その名が呼ばれた瞬間

空の裂け目から、巨大な目が覗く


『――やっとワイの出番か』


番人・サンズの最終存在――

“起源の番人”が目覚める


「タクマ、選べ

 女神を消すか

 この世界を全部リセットするか

 それとも――共に編集するか」


タクマの選択が、世界の未来を決める


神すら選べぬ選択


サンズの“起源形態”が空に浮かび

タクマと女神を見下ろす


『選べ、タクマ

 女神を消すか

 世界をリセットするか

 それとも――共に創るか』


タクマは答えない

その手には、砕けかけたアルス=ルイン

そして、その中にまだ“リナの魂の声”が響いていた


――「ねえ、タクマ。もし全部壊したら…本当に“ひとり”になるよ」


レオン、リナ、ドールサンズ、そして

裏切った仲間たちすら――タクマの“記憶”を創ってきた存在


「……全部、忘れたくない」


タクマはゆっくり前に出る

女神を見据えたまま、剣を地に突き立てた


「俺は、壊さない

 お前を消すこともしない

 この世界も、消させない」


女神の目が揺れる


「……どうする気?」


「お前に“編集権”を渡す

 ただし、それは俺との“共有”という形で」


「共有…?」


「そう

 “独りの神”が創る世界は、歪む

 でも、“相反する神”が共に創るなら

 バランスが取れる」


サンズがふっと笑う


『ほんまにお前、変わったな』


タクマは剣を抜き、アルス=ルインを女神に差し出す

その中にはリナの魂、仲間たちの記憶、世界の痛みと祈りが宿っていた


「女神――名前、あるのか?」


女神は静かに答える


「“シエラ”

 かつてこの世界を創った者の名よ」


「なら、シエラ

 一緒に創ろう

 “選べる世界”を」


そして二人の手が重なり

創壊神具が光に包まれた


サンズが目を閉じ、空間を閉じる


『……役目、終わりや』



エピローグ:選べる世界


かつての大戦も、支配も

創造と破壊の神も

すべては新たな「神共有制」によって書き換えられた


民は自らの「生き方」を選び

神はただ、その選択を支えるだけの存在になった


――タクマは、その後、姿を消した


レオンは世界防衛の柱として

リナは、“魂の神官”として祈りを紡ぎ

サンズは再びぬいぐるみの姿に戻り、世界を見守っていた


そして女神シエラは、たまにこう呟く


「不器用な子だったけど…やっぱり、選んでよかった」


「なぜ、裏切ったのか?」

その問いに、誰も明確な答えを持たなかった


恐れか、嫉妬か、あるいは“正義”だったのかもしれない

誰もが、それぞれの立場で、タクマの“強さ”と“孤独”を理解しきれなかった


だがタクマは、裏切られてなお

彼らを“憎む”ことを選ばなかった


その選択が、

やがて彼を真の神へと導いたのだとすれば――

裏切りすらも、物語の一部だったのかもしれない


信じることが、痛みを生む

それでも“信じた記憶”は、嘘じゃない


仲間だった日々に意味があったと

そう思えるようになるまで

タクマは、歩みを止めなかった


――いつかまた、あの日のように笑える日が来ると願って

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