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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
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第74.5話 奥の手

第2章 曙光と絆の先へ

第2幕 萍水相逢

第74.5話 奥の手


 書いていたら半分ほどただの設定公開になってしまったので、急遽第2幕に0.5話追加という形になります。

 一応今回は読まなくても話についていけなくなるということはありませんので、苦手な方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。すみません!

「それにしてもまたもや大手柄ですね、ミオさん。ギルドとしては、新人のあなたに尻拭いのようなことをさせたくはなかったのですが。」

「家族に手を出されそうでしたから……必死でした。」


 ギネートは苦笑しつつも、どこか楽し気にこちらを見る。


 ギルドの応接室に呼び出されるのはこれで3度目。

 それだけ自分がイレギュラーな存在として認知されているということなのだろう。今後はその自覚も持たなくてはならないのかもしれない。


 呼ばれた理由はもちろん、ガルーダの件だ。

 一連の騒動に関する手続きや説明、報酬の受け渡しなどをするためだったが、それも終わった今、対面するギネートさんとの雑談に興じていた。


「目立った被害と言えばアムヌーの南側一帯が水浸しになったことと、南門直上の城壁が損傷したこと。それから全損してしまったガルーダの素材がもったいないというぐらいのもの。Bランクの魔物の襲撃を受けたにしては上々も上々、この上ない最良の結果です。」

「あはは、ありがとうございます。」


 書類を整えながら笑う彼は上機嫌だ。

 いつもは落ち着いているか、はたまた支部長関連で眉間にしわを寄せるかの二通りしか感情がないようなこの人の満面の笑みなんていうものは、本当に初めて見た。


 意外な一面を垣間見て気まずくなった私は、出されていたはいいもののここまで飲む機会の無かった紅茶に手を伸ばす。

 ティーカップを口元に近づけると、柔らかい花のような香りが鼻を抜けた。

 中身を口に含む。淹れてから時間の経った紅茶は少し冷めていたが、それでも先ほどの香りがより強く広がり、戦いやその後の手続きなどで昂っていた精神が落ち着いていくのを感じる。


「それで、1つだけ。私の純粋な好奇心からくるもので、失礼は承知の上ですのでご回答いただけなくても結構なのですが。」


 私を見る彼の視線に、少しだけ鋭さが乗る。リラックスしていた私は不意を突かれて身構えた。


「最後の光属性魔法。あのような大魔法を、一体どうやって連発したのですか?」


 最後まで聞き、もう一口だけ紅茶を飲む。少し冷めた紅茶は、わずかに緊張をほぐした。


「そうですね……確かにあの魔法のコストは高いです。実際、私も一発で3割ほど魔力を使います。」

「やはり……!あの魔法以前にもかなり規模の大きな魔法を使っていたようですし、どのような秘密が?」

「瞬間励起と制御補助を付与した魔力結晶ですよ。」


 魔力結晶―――それは熟練の魔導師(通称:魔道具職人)が魔石を加工することで作られるアイテムの一つだ。


 魔石は通常、励起状態の”魔物の魔力”を内包している。

 それを魔法師が運用するとなると、励起状態なのはむしろ良いことなのだが、魔物の魔力というのが厄介だ。


 魔力には属性がある。火や水などはその最たるものだが、所有者というのも属性の一つだとお母さんは言っていた。

 例えば、私の魔力には私という所有者がおり、優先的な制御権を握っている。これを他者が使う場合、まず制御権を奪わなければならなくなるのだ。

 魔石の魔力は、通常持ち主が死んでいるため抵抗されることは無い。ただし、一度制御権を塗り替える……つまり、一つ工程を挟む必要がある。


 対して魔力結晶は、基底状態の調整された魔力を内包している。

 魔力結晶の利点は、まず使用者が扱いやすいように魔力が調整されていること。魔力に持ち主が居なかったり、最初から使用者の魔力に似せられていたりするわけだ。

 しかし不利な点もある。それは魔力が基底状態であること。

 魔法を使う上での基底状態の魔力というのは、紅茶を淹れるためにガチガチの氷を用意するようなものだ。このままではとても実用的とは言えない。


 そこで用いられるのが瞬間励起の術式。

 これは文字通り、基底状態の魔力を瞬間的に励起状態へ移行させる術式で、ガチガチの氷を沸騰するお湯に変えてくれるわけだ。

 そこにプラスアルファで付け加えたのが『制御補助』の術式。

 これも文字通りだ。実戦で魔力結晶を使うときというは、魔力が不足している緊急事態を意味する。

 そんな中で魔力結晶の中から魔力を取り出すのに手間取れば、それは危険な隙になってしまうし、その後の魔法構築まで手伝ってもらえれば勝率は格段に上がる。


 ただしこのカスタマイズには致命的な弱点が存在する。

 まず何も付与されていないまっさらな魔力結晶は、前の世界のバッテリーと違い最大値まで魔力をチャージしたり、0になるまで使ったりしても寿命が減らない。というかそもそも魔力結晶には寿命の概念がない。伯爵以上の貴族の中には、魔力結晶を家宝として長年受け継いでいる家もある。

 対して問題の瞬間励起術式なのだが、実は魔力結晶の性質上、内包されている魔力を瞬間励起させると結晶構造が変質して二度と魔力を蓄えられなくなってしまうのだ。


「なんと、それは……手痛い出費でしたね……」

「壊れるのは分かっていたことですから。それにあの場で出し惜しみなんかすれば、きっと戦闘は泥沼化していました。街の被害だって甚大なものになっていたでしょうし、私も家族や自分を守れていたか分からなかった。」


 もとより作れる魔導士も少なく貴重な魔力結晶。それを使い捨てにする瞬間励起は、魔法使いの間で悪い意味で有名だ。

 数千万、下手をすれば数億もくだらない損失は想定外だったのだろう。ギネートさんは表情を保ちつつも唖然とする。


「……本当によろしかったのですか?」

「ええ。」


 しかしそれは、私が魔力結晶をどこからか仕入れるという前提がある場合の話だ。


「結晶化加工と術式付与は自分できるので大したことじゃないんです。ただ一つ作るのに1か月ほどかかるので、その意味では痛い出費かもしれません。まぁ、それも魔導の技術を身に着けてからコツコツ作り続けて来たので、今では100個ほどありますし。」

「……ははっ。どうやらあなたは、師のお二人に似て枠に収まらない御方の様だ。」


 彼は苦笑する。ただしその意味は、一度目と変わってしまったようだが。

あとがき


話、全然進みませんでしたね……だからこそ0.5話という形にしたのですが。

今回は書いている途中で気付いた上、これをあとがきにして本文を書く気力が湧かないぐらい力を入れてしまって、なおかつ前回ラストの連発の辻褄合わせという意味でも書かなければならないことなので、この内容になりました。

私的にこれは本来、あとがきで語るようなものだと思っているのですが……こういうのって読者の方々は面白く読めるものなのでしょうか?

以前にも設定公開をメインにした回(第57話「冒険者とは」など)がありましたが、今後の参考にしたいと思っておりますので、ぜひご意見の程よろしくお願いします。

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