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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
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第73話 晴天に響く鷹の音

第2章 曙光と絆の先へ

第2幕 萍水相逢

第73話 晴天に響く鷹の音


祝!10,000PV!ご高覧頂き、本当にありがとうございます!

本編少しだけ長めです!

 遺体をそのままにしておけば、血の臭いに誘われて野獣や魔獣がやってくる。そうなれば、この街道はいらぬ危険を抱えることになる。

 だから私は、全ての遺体を街道の中央に集めて焼き払い、残った灰は血痕と一緒に土魔法で埋めた。


「えーっと、あなた方はどうしますか?馬も逃げてしまったようですし……私の従魔の背に乗るのであればアムヌーまでお送りしますが。」


 私の問いかけに、跪いて祈っていた奥さんが泣き腫らした顔を上げた。


「よろしいのですか?」

「さすがに荷台の品物全てとなると追加料金をいただきたくなりますが、背嚢一つまでならタダで構いません。」

「ですが、その従魔というのはどこに……?」

「あ、それじゃあ今呼びますね。『ヴァルー、降りておいでー!』」


『はーい!』


「え?今、どこから―――」


 次の瞬間。

 突風が吹き荒れ、巨大な影が私たちを覆った。


「ど、ドラゴン!?」

「は、初めて見た……!」

「紅龍のヴァルバティアです。無邪気で大人しい子なので、怖がらなくて大丈夫ですよ。」


 紹介を受けたヴァルは、静かに着地すると胸を張る。


『ふふーん。ぼくがヴァルだよー!』

「は、はぁ……」

『早く乗って!みんなを空のさんぽにつれてってあげる!』

「ね?かわいいでしょう?」

「確かに……かわいい……?」


 呆気にとられた様子の二人を促し、魔法で龍鞍に三人分の即席シートを増設する。


 黒猫の少女はやはり怯えているが、メンタルケアはアムヌーに着いてからだ。震えている体に”光浄(ウォルグ・ネルク)”(洗浄魔法)をかけ、強引に座らせる。


「ヴァル、今回は身体強化できない人も乗ってるからゆっくり飛んでね?」

『はーい!準備はい~い?それじゃあ~、しゅっぱーつ!』


 街道いっぱいに翼を広げ、ヴァルが走り出しす。

 私は座席全体を覆う結界を張り、ヴァルは翼に魔力を込めた。


 バサァッ!


 一度羽ばたけば、その巨体が楽々と宙へ浮く。

 二度羽ばたけば一息に森の木々を飛び越して、視界が開ける。

 三度羽ばたけば緩やかな上昇が始まり、そこからは魔力の噴射での飛行に移った。


 何度見ても圧巻の魔力出力だ。これでも本人には窮屈なくらい抑えてもらっているというのだから末恐ろしい。


『ひゃほ~!!』


 高度と速度はどんどん上がっていく。


 右には雪で白く染まったネブラ山脈。

 左には広大な平原。

 2時の方向には大精霊の泉に生えるあの霊樹が周囲の水臨樹から頭一つ抜けている。


 そして眼下にはまっすぐのびる街道。その先には、すでにアムヌーの街が見えていた。


「この調子ならあと数分でアムヌーに着きますね。」

「も、もうですか!?」

「ドラゴンを従魔にもつ、白い狐族……あれ?どっかで聞いたような……?」


 青年の呟きが聞こえる。


 まさかアムヌーでは私のことが噂になっているのだろうか?

 しかし噂されるようなことなんてゴブリン村の件ぐらいだし、それがトリガーになるならもっと早いうちに広まっていてもおかしくない気がするが―――


 他愛もないことを考えていた、その時。



 ピィーーーッ!



 ゾクッ―――背筋にうすら寒いものが走る。全身の毛が粟立った。


「”天慈の聖護(アザファー)”!!」


 ドオオオォォォンッ!!!!


 直感に従い、簡易詠唱で5層の防御結界を張る。

 直後、10時の方向で巨大な爆発が起き、5層のうち3層が砕け散った。


火炎鳥(ガルーダ)か!」


 結界に取り付いた真紅の鳥。

 その瞳には、わずかな驚きが見える。


 次の瞬間、ガルーダは再び爆発を起こして上空へと飛び上がる。


「諦めた、のでしょうか……?」


 奥さんは震える声で言う。


「それは無いでしょうね。ガルーダは残忍で執念深い魔物です。一度狙いを定めた獲物は地の果てまで追いかけると言われています。」


 私はガルーダから視線を外さずに言った。


「ヴァル、私が相手をするからアムヌーに三人を降ろして。」

『はーい!』

「よし。それじゃあ私は、一仕事しますかね。」


 ヴァルから飛び降り、小さく展開した障壁の上に立つ。

 呼吸を整え、魔力を練る。


 ガルーダは賢く、機動力に優れた魔物だ。

 この広大な空ではイタチごっこになるのが目に見えている。


「まずは、小手調べ。”水槍(レタウ=エクナール)”!」


 上空を旋回しながら機をうかがうガルーダに向けて、簡易詠唱で魔法を放つ。

 選んだのは下級魔法だが、術式の限界まで魔力を上乗せして最高速度と追尾性能を向上させている。


 だがこれは届かなかった。

 その最高速度もさることながら、やはり爆破を利用した慣性を無視するような加速や鋭角ターンが厄介だ。

 あれを克服するなら―――単純に物量を増やしてみるか。


「借りるよ、お母さん。」


 虚界門から取り出したのは、白い金属を基調としたスタッフ。それはシンプルな金細工で装飾され、上部にはサファイアブルーの宝玉を戴いている。

 これはお母さんが生前に愛用していたものだ。魔法全般の補助に長けており、特に水属性との親和性が高い。


「”水よ、ここに。”」


 生み出す水の量は先ほどの比ではない。荒れ狂う激流のような勢いで生成された水は、一塊に大きくなっていく。

 その水球の直径は、瞬く間に私の身長の何十倍の大きさにまで膨れ上がった。


「”土手を砕くは暴るる流れ。その様怒れる九頭龍が如く。(ひら)けし(あぎと)が、我が敵を呑まん。”」


 詠唱が進むと水球から9つの龍の首が生え、それぞれが憤怒の形相を示す。

 その大きさは1つの頭でヴァルを簡単に丸呑みにできるほどと言えば、どれだけ巨大な魔術かが伝わりやすいだろうか。


「”九蛇九頭(レタウ・オーディア)の激流(=アルディフ)”!!」


 命が吹き込まれた九頭龍は、一斉にガルーダに襲いかかる。


 真後ろから追いかける首。

 それに追従する首。

 少し離れたところから隙を窺う首。

 逃げ場を塞ぐように周囲を取り囲む首。


 本来、同時に様々な動きを作ると術者への負担が大きくなるものだが、杖が制御の一部を肩代わりしてくれるおかげでガルーダの空間機動にも反応できる。


 だがガルーダもそのままやられるほど弱くは無い。

 鋭角ターンで躱し、超加速で引き離し、爆炎で首を吹き飛ばして包囲網を破る。


 小さな破損であれば水を補充することで補修できるが、首を両断されるようなダメージを与えられるとその首は維持できなくなり、制御を失ってただの水となってしまう。

 それに気付いたガルーダは、積極的に首を狙うような動きを見せた。


「やっぱ賢いな……」


 私は首が破壊されるごとに逐次再生成しながら次の手を考える。


 そうして手をこまねいていて、何体目かの首が破壊された時だった。

 九頭龍の包囲から抜け出したガルーダは、再び爆炎によって加速し―――アムヌーの南門に向かう相棒へと狙いを変えた。


「―――ッ!?ヴァルが狙いなのか!!」


 初めに目が合ってから、てっきりアイツが獲物に見定めたのは私だと思っていた。

 しかし奴の狙いはは最初から、魔力に満ちたドラゴンの子(ヴァル)だったというわけか。


 ヴァルが奴の攻撃を喰らったところで大したケガはしないだろう。龍鱗の装甲は伊達ではない。

 しかしヴァルの背には民間人が乗っている。それを彼が守ろうとすれば、どうなるかは分からない。


「間に合えッ!」


 全力の身体強化。連続的に足場を生成し、その全てを踏み砕く勢いの加速。

 けれどそれでは間に合わない。ガルーダのあの爆破による加速には届かない。


(見よう見まねだけど―――っ!)

「”天慈の聖護(アザファー)”!”爆炎(エマルフ=オームア)”!!」


 全身を結界で包み込み、それに爆破魔法を当てることで加速。

 爆破自体の衝撃は結界で受けても、体にかかるGだけで潰れそうだ。肺から空気が抜け、骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。


 それでも目線だけはガルーダに固定する。

 私の家族に手を出す奴は許さない。


(もう二度と、失ってたまるものかっ……!!)

あとがき


一カ月―――特に最後の一週間で心身共に大きく成長した主人公が、あの時恐れたガルーダと遭遇しました。


いやぁーそれにしても、戦闘描写って難しい!!

頭の中ではアニメみたいに映像として組み上げられるんですけど、それを言語化するのが大変で大変で……少しでも私の妄想が伝わっていれば嬉しいのですが。

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