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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
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第71話 旅の土産、冥土の土産

第2章 曙光と絆の先へ

第2幕 萍水相逢

第71話 旅の土産、冥土の土産


祝!9,000PV!ご高覧頂きありがとうございます!

まさか、一日300PVを超える日が来るとは……。

レビューや感想もお待ちしております!

「ご利用いただき、ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。」


 眠りから覚めた市場が活気を取り戻し始めた朝。

 リフレッシュした爽快な気分で、私は宿を後にした。


 ”黄金の風”のサービスは、最初から最後まで完璧だった。


 特に驚いたのは、本来本の一冊すら取り扱っていないにも関わらず、指定した魔導書を取り寄せてくれたことだ。


 私はその時、この2日ほとんどそうしていたように魔導書を読んでいた。

 だが、この手の本を読んでいてよくあるのが―――参考文献として挙げられている本も同時に読みたくなる、という現象だ。


 この世界の基本的な文明レベルは、前世で言うところの近世に近い。

 つまりは情報を手に入れるためのハードルがものすごく高いのだ。

 ネットの無い世界で知りたいことを調べる方法は主に二つ。


 人に聞くか、本を買うか。


 しかし問題は、そのどちらも簡単ではないことだ。


 そもそも欲しい情報を持っている人や、それが記された本はが存在するのか。

 存在するとして、どこにあるのか。


 そういう事前情報さえも前述の手段に頼らざるを得ない。


 小説やゲームで、「これを探して旅をしているんだ」というモブがいるのはよくあることだと思う。それは何も珍しい事じゃない。

 下手をすれば「こんなことが書かれた本があるかもしれなくて、それを持っている人の居場所を知っているかもしれない人を探して、何年も旅をしているんだ。」という人が居ても全く不思議ではない。


 それほどまでに情報の断絶が激しい世界なのだ。


 そんな中で、”その日の内に実物を取り寄せる”。

 これがどれだけ大変なことなのか、正直想像もつかない。


 私は驚いた。それと同時に感動した。

 ここまでするのかと。お客様ファーストここに極まれりではないかと。

 要するに何が言いたいのかといえば―――そんなこと言われなくてもアメーティアスに来たら絶対泊まります。というかリフレッシュしたくなったら来ます。絶対に。


「さてと、まずはレルデップさんのお土産を買わなきゃね。」


 今日はアムヌーに帰る日だ。 

 そして帰ったら、レルデップさんの商会―――ウォラウス商会へと足を運ぶつもりだ。

 せっかく初めてアムヌーを出たのだから、その記念にお土産を渡すのもよいだろう。


 アメーティアスの特産は野菜だ。

 一昨日食べたレブマッカスといい、そのおいしさと安さは折り紙付きである。

 しかしお土産には適さない。

 確かにVALの特急便なら1時間程度で戻れる。だからと言って野菜では、お土産としての情緒に欠けると私は思うのだ。


 ならば他に何があるだろう。

 生鮮野菜以外となると、やはり街の外を取り囲む黄金色の麦だろうか?それから作られるパンも美味しかった。

 けれど、これもまた情緒的にはいまいちだ。


「他には……あ。」


 見つけた。レルデップさんが喜びそうで、同時に土産としても様になるもの。

 それは―――”エール”だ。


 アメーティアスは見てわかるように、広大な麦畑に囲まれている。

 そして、アメーティアス市民の生活を支え、ネブラ山脈の雪解け水が溶け込んだ川がある。

 良質な麦と、エール造りに適した硬水。それが交差する場所に人が住んで酒造りが発展しないはずもない。

 現にトレイトス王国の東部や周辺国において、その質で名を轟かせている。


「となると、酒蔵かな。」


 私は年齢的にも飲まないが、レルデップさんはああ見えてかなりの愛飲家だ。旅道中でもその話でヴィメルさんと盛り上がっていた。

 贈答用の酒を求めて酒場に行ってもしょうがない。私は大通りからわき道に入り、鍛冶屋や酒蔵などが立ち並ぶ職人街へと向かった。



***



「久々に乗せてもらったけど、やっぱ気持ちいいなー!」

『でしょー!ボクもミオといっしょでうれしい!』


 暴風吹き荒ぶ空の上。

 ヴァルの翼はジェットエンジンのように魔力を噴き出し、風と魔力を同時につかんで空を駆けていた。


 もっとも、風や寒さは結界で遮られているため、私の体は何も感じない。

 アムヌーに来て以来ヴァルに乗る機会が少なかったため、こうして凄い速度で流れる景色を眺めるのは気分が良い。


「最近はあまり一緒に居られなくごめんね。」

『そうだよ、さびしかったんだから!これからはまた毎日さんぽしようね!』

「ははっ、そうだね。」


 無邪気なヴァルを見ていると、なんだか心が洗われるような気分になる。


 気ままで、純粋で。

 後悔も、先の不安もない。


 そんなふうに思うと、今は彼のことが少しだけうらやましくも思う。


 もし彼に私の悩みを話したら、どんなふうに返すのだろう。

 「大変だね」と感想を述べるだろうか。

 「大丈夫?」と心配してくれるだろうか。


 もしかしたら、よくわからないまま傍にいてくれるだけかもしれない。

 それでも―――悪い結果にはならない気がする。


「ねぇヴァル、実は―――」

『ミオ、誰かおそわれてるよ?』

「―――え?」

『ほら、あそこ。』


 ヴァルが示した先を見る。


 アムヌーとアメーティアスを結ぶ街道の上。

 馬車が何者かに襲われていた。


「助けよう!高度を落としてくれる?敵以外の人をやっちゃうとマズいから、ヴァルは手を出さないでね。」

『りょーかーい!』


 戦闘の現場に近づくにつれ、ヴァルは一気に高度を落としていく。

 私は全身に魔力を巡らせ、飛び降りる瞬間を見極めた。


「いってきますっ!」

『いってらっしゃーい!』


 着地。

 その強すぎる衝撃に、踏み固められた街道が砕け散る。


 襲撃者の正体は盗賊だった。

 すでに何人かの冒険者がやられており、商人らしき人にまで手が伸びている。


(月影流・居合―――)


 抜刀。


(飛燕三日月ッ!)


 2つの魔力刃が走る。


 一撃で二人の首が飛んだ。

 崩れ落ちる身体と、噴き出す血飛沫。


(ぐ……臆するな、集中―――っ!)


 商人に襲いかかっていた者に飛び蹴りを叩きこむ。

 男は倒れ、間髪入れずに首を斬る。


 突然の乱入者にどよめいた。その隙は逃さない。


 一人。

 二人。


 剣を構えた者も。

 弓を構えた者も。

 そうでない者も。


 皆すべからく、一太刀で首を飛ばす。

 立つ者が居なくなるまで―――


「う、動くな!動けばこの娘を殺すぞ!」


 最後に残った盗賊が叫んだ。


 その腕には、ぼろきれを纏った黒猫族の少女。

 彼女の首には、奴隷身分を示す隷属の首輪が嵌められていた。


 人質。

 だがそれは、私を止める理由にならない。


「そ、そうだ。そして武器を捨て、ぐぁあ!!?」


 男の体に、見えない糸が絡みつく。密かに生成していた魔力糸だ。

 糸の起点である左手を握り込むと、男の両腕が肩からすっぱりと切り落とされる。


「ひ、ひぃい!来るなっ!来るなぁッ!!」


 あとは、首を斬るだけ。

 恐怖と痛みに失禁しながら後ずさる男に、抵抗する意思も力もない。


 私はゆっくりと歩み寄り、雪宗を振るった。

あとがき


キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

遂に、遂に例の黒猫ちゃんが合流いたしました!!

まだ主人公の視界にちょろっと写っただけですが、それでも48話分。期間にして約7カ月の時を経て彼女が主人公と邂逅を果たしました!ここまで長かった……本当に長かった。

ここまでの人生がドン底もドン底だった黒猫ちゃんも、ここを起点に上向くことを願っています……!


それはそうそれと、最初の方でした情報が断絶うんぬんの話に「おや?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そう、冒険者ギルドには固定電話的な機能を持つ魔道具があるんですよ(第9話、第14話を参照)。

しかしアレが持つ機能はこの世界ではあまりに破格なもので、それはもう物凄ーく厳重に管理されています。

開発者と親しかった魔女様や、魔女様と旧知の中であるアルフレッド(アルフォンスの祖父、”万魔の賢者”)さんなんかはそのよしみで手に入れているのですが、基本的に各国の首都などに存在する冒険者ギルドおよび商業ギルドの上級支部ぐらいでしかまともに運用されていないんですよね。

それも消費する魔力量が半端じゃないので、脅威度A相当(国家滅亡級)以上の最重要案件にのみ使われます。(魔女様=アルフレッドさん間の通信は本人たちの魔力だけで成り立つので、例外中例外みたいな感じです。化け物ですね。)

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