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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
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第66話 乗り越えるべき壁。同時に、踏み留まるべき一線。

第2章 曙光と絆の先へ

第2幕 萍水相逢

第66話 乗り越えるべき壁。同時に、踏み留まるべき一線。

「襲撃ーッ!!弓を射られた!全員伏せろッ!!」


 先行する馬車からヴィメルの怒号が飛んだ。

 次の瞬間、私たちの馬車にも何本かの矢が左から右へと、幌を突き破って貫通していく。


 弓による襲撃。

 それすなわち、盗賊―――少なくとも人間が相手であることを意味していた。


 弓を射るという行為は、見た目以上に高度なことだ。

 矢を番え、狙いを定め、引き絞り、放つ。その全てを正確に行い、なおかつ命中させるには並みならぬ修練が必要となる。


 だからこそ、弓を使う魔物は非常に少ない。

 思いつく限りではゴブリンの上位種であるホブゴブリンだけだ。


 ではケンタウロスはどうかと言われそうだが、彼らは魔物ではなく人―――馬人族として分類される。

 全身が鱗に覆われた竜人族(ドラゴニュート)も同様だ。


「リーダーが縁起でもないこと言うからー」

「俺は関係ないだろう。」

「で、どうするよ?弓持ちの盗賊なんて初めてだぞ。」


 ランデルが御者を抱えて荷台に飛び込み、起き上がらないように頭を押さえながら言う。


 盗賊に弓使いはほとんど存在しない。

 そもそも盗賊というものは、主に不作や疫病で崩壊した村の生き残りなどが行き場をなくしてなるものだ。

 この魔物にあふれた世界で、弓の腕があれば冒険者として歓迎されるのだから。


「俺が引き付けて状況を確認する。弓持ちが少なければ森に入って勢いで制圧、多かったらお前とハルマンに起点を作ってもらうしかないな。」

「はぁーあ、りょーかい。」

「私は―――」


 どうすればいいのだろう。

 クレイグの話からすれば、魔法を使うべきではない。しかし対人戦で重要なパーティとの連携は、まだ完全とは言えない。

 下手に動けば、かえって邪魔になる可能性が高い。


「遊撃で良い。ただし手を出すなら必ず覚悟を決めてからにしろ。半端な状態では誰のためにもならん。」


 クレイグは飛び出す機会を窺いながら言った。

 それは、想定通りの指示だった。


「……分かりました。」


 奇しくもゴブリン村戦(あの時)と同じ魔法禁止(縛り)

 けれど私は1カ月を通して成長し、環境も違い、何より仲間がいる。


 あの時と同じ失敗は、もうしない。


 雪宗をそっと取り出す。

 鞘を引き、刃を確かめる。その輝きは、いつもより強く見えた。


 きっとこの先、この手を紅く染めたことを後悔することもあるだろう。

 自らの行いにやる瀬のない嫌悪を抱くこともあるだろう。


 それでも。

 今、乗り越えなくちゃならない壁がある。


 私が―――”氷星の魔女(あの人)”に並び、そして超えるために。


「ふぅーーー……っし。こっちだ、賊どもォッ!!」


 第2波の矢が途切れた瞬間、荷台後方からクレイグが飛び出す。

 大盾を掲げ、雄叫びを上げながら前に出た。


 私はその影に紛れるように地面へ降り、商隊の進行方向右側の森へと駆ける。


 奴らが放った矢は全て左から右へと流れていた。

 そのうちのいくつかは幌を突き抜けて森まで飛んでいる。


 つまり、右側の森に敵は居ない。


 魔力で強化された脚力で、稲妻のように草陰へ滑り込む。

 足音を殺して着地し、姿勢を低く保ったまま左(馬車の前方)へ向かう。


 狙うのは、敵後方からの奇襲。

 私は燃え盛る刃(オレンジ・ブレイド)の一員ではない。連携に難がある以上、正面で参戦するべきではない。


 求められているのは一人で完結させられる行動。であるなら、必然的に奇襲が最も効果的だ。

 面倒な弓使いやリーダー格を排除すれば、その後の戦闘が一気に楽になる。


 馬車から50mほど離れただろうか。

 街道を渡り、盗賊たちと同じ側の森へ入って戦場へ戻る。木々を避けつつ全速力で走り抜ける。


 10秒もしないうちに、盗賊の背後が見えてきた。


「魔物と同じ。首を刈れば、それで終わり……っ!」


 躊躇いも、忌避感も、後悔も、全部後回しだ。

 今この時、この瞬間だけは、ただ戦うことにだけ―――集中。


 一人。

 矢筒から取り出そうとしていた手が止まり、ゆっくりと倒れた。その衝撃でようやく斬られた首が離れ、血だまりを作る。


 二人。

 狙いを定めていた男の首が滑り落ち、矢はあらぬ方向へ飛んで行く。


 三人。

 異変に気付いたようだったが、声を上げる前に首が飛んだ。見開いた眼が、恐怖一色に染まっていた。


 四人。

 仲間に知らせて武器を構えたが、その動きは遅すぎた。


 五人。

 大上段で斬りかかってきたが、腹を割ったのち背後から斬首。倒れ伏すと同時にこぼれだす臓物が、感情を切り離したはずの脳裏に焼き付く。


 六人、七人。

 飛燕三日月によって放たれたの二つの魔力刃が、二人の首を同時に落とす。


 次は―――。


「終わりだ、ミオ。よくやった。」


 気がついた時、血の臭いが立ち込める森の中で立っていたのは、私たち6人の冒険者だけだった。

あとがき


「弱りに弱った主人公。やるしかない殺人。合ッ体ッ!!」

「ええぇ!?これは一体、ど~なっちゃうんだ~!?」


どうしよ……もうなんかここから主人公立ち直れない気がしてきた……

誰かからのセラピーが必要なのに、肝心のセラピー要員が居ない!!どうしよう!?

クレイグは不器用すぎるし、ドレイクはキャラじゃないし、ランデル・ハルマンは関係地が薄いしっていうかキャラじゃないし、ヴィメルか?ヴィメルなのか?だがヴィメルでもない気がするんだよなぁ……!

あぁ、切実に魔女様が欲しい!今すぐあの絶対的な安心感で主人公を癒してほしい!

いやまぁ魔女様が生きてたら主人公こんなことになりませんけどね。


そんなこんなで作者側としてもてんやわんやではありますが、次回もまたお楽しみに!



マジでどうしよ……ハハ……

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