表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
66/66

第64話 共通点

第2章 曙光と絆の先へ

第2幕 萍水相逢

第64話 共通点


祝!7000PV!ご高覧頂きありがとうございます!

また、総合評価も100pt間近となっていますので、ブクマ、星評価の方よろしくお願いします!

追記)本編ちょっとだけ長めです!

 ドレイクの話は不可解だったが、だからといって馬車が止まる訳でもない。

 考えを巡らせながら、私は馬車の後方から身を乗り出し、左右に広がる草原を見渡した。


 幌付きのこの馬車は、荷台からの視界がどうしても悪い。

 だからこうして、定期的に周囲を確認する必要がある。


 目線を巡らせ、耳を動かし、匂いを嗅ぐ。

 ―――今のところ、近くに異変はなさそうだ。


 そうして再び荷台に戻った、その時だった。


「スライムだ!!距離は100m弱!おそらくミドルスライム!左側の草むらから次々出てきてる!」


 御者の隣で正面を警戒していたヴィメルの声が飛ぶ。


「今はどんくらい居る?」

「今は5、いや6匹!だがまだ増えるぞ!」


 報告を聞き、即座に思考を回す。

 ミドルスライムはFランクの魔物。攻撃手段は体当たりか取り込んでの消化しかできない。そして、それが6匹以上。


 脅威度は高くない。


 そう決断を下し、私も声を上げた。


「私1人にやらせてください!」

「待て。とりあえず停めてくれレヴァードさん。」

「分かりました。」


 馬車が止まり、6人の冒険者が顔を合わせる。


「ほー、そこそこ大きめな群れっぽいなぁ。10、11、12……全部で14匹ってところか。」


 一番目が良いランデルが呟き、それを聞いたクレイグがこちらを見た。


「それで、ミオは一人で相手をしたいのか?」

「はい。」


 視線が交差する。

 クレイグのそれは、私を試しているかのように鋭かった。


「……いいだろう。ヴィメルとドレイクはミオについて行け。ただし危険が無ければ手出しするな。援護も無しだ。」

「了解。」

「おう。」

「ランデルとハルマンはいつも通り俺と馬車の護衛。」

「了~解。」

「ああ。」

「期待してるぞ、ミオ。」

「はい!」


 作戦会議は済んだ。

 私はスライムの方へと歩き出す。


 ゴブリンの村での失敗から1カ月。

 私はどんな相手にも油断せず、安全を最優先に依頼をこなしてきた。

 今回も同じだ。リスクゼロで、効率よく。


 使うつもりはないが、念のため雪宗を抜いておく。

 月影流には抜刀術もあるが、わざわざ選ぶことは無用なリスクになる。事前に抜けるのならそれに越したことはない。


 意識を集中させ、魔力を練りながら前へ。


 スライムの弱点は透明な粘液の中に浮かぶ魔石だ。それを砕くと即死する。

 一般スライムならばそれでもいいが、ミドルスライム以上となると魔石にも一応価値がある。せっかくならそれも確保したいところだ。


 方法はある。

 そして、それは私にとってそう難しい事でもない。


 街道の真ん中でたむろするミドルスライムたち。私は20mほど手前で足を止めた。


「…ん?ここで止まるのか?」


 ドレイクの声には答えない。あえて言うなら、この後に起こることが返答となる。


 せっかくスライムたちが隙を晒してくれているのなら、完全詠唱で―――確実に。


「”水よ、ここに。土手を砕くは暴るる流れ。その様怒れる九頭龍が如く。(ひら)けし(あぎと)が、我が敵を呑まん。九蛇九頭(レタウ・オーディア)の激流(=アルディフ)。”」


 前に伸ばした左手の先で渦巻く水球に、詠唱が形を与える。


 瞬間、東洋竜を模した頭がいくつも湧き出し、それぞれが別のスライムへと突撃した。

 スライムを喰らったそれはやがて一つの巨大な水球へとまとまり、その内部で異なる速度の渦となる。


 スライムの体は粘液で出来ており、それを維持しているのは全て魔力だ。


 であるならば、それを無理やり剥がしてしまえばいいのだ。

 粘性であろうと、液体は拡散しやすいもの。当然、魔力による維持にも限度がある。 


 あの水球は、いわば洗濯機のようなものだ。

 私の魔力の渦で粘液のまとまりをほぐし、激流で一気に洗い流す。


 しばらくして粘液を失ったスライムたちは、核である魔石だけが水中に漂っていた。


 ああなるともう元には戻れない。まだ死んではいないが、体を失ったスライムは次第に弱り、その内息絶える。


 私は水球を手元に引き寄せて魔石を回収し、残ったものは草原に撒いた。


「ふぅ、終わりました!」

「スゲェな……」

「マジかよ……」


 集中を解いて振り向くと、顎が外れんばかりに開けた2人の姿があった。

 こんな反応はなんだか久しぶりで、不意に昔の彼を思い出した。



***



 日没とともに移動は終わり、夜番は3時間交代となった。

 今回は私とクレイグが組む。


 皆が眠りにつき、焚火を囲む静かな時間。

 彼が口を開いた。


「護衛依頼はどうだ?」

「どう、とは?」

「気付いたことはあったか?」

「……一人で警戒できる範囲は、かなり狭いですね。戦闘となれば対処できますが、そもそも接近に気付けなければ意味がない。もし今後護衛依頼を受けるなら、合同でないと厳しいと思います。」

「……臨時で組むだけでなく、どこかのパーティに入ったりする気はないのか?」

「今のところは、ありません。まだまだ実力に見合った立ち回りを把握しかねているので、仮にどこかに入れてもらえたとしても……迷惑をかける未来しか見えなくて。」


 苦笑が漏れる。


 私は弱い。

 力が足りないのではなく、それを扱う経験が足りていない。


 今の私は力押ししか知らない脳筋ビルドだ。

 ここからさらに伸びるには、とにもかくにも戦闘回数を重ねなければならない。それもただの戦闘ではなく、多種多様な環境と条件で。


「…きっとミオは強くなれる。いや、今でも十分すぎるくらいには強いが、まだまだ磨き上げる余地があるだろう。」


 クレイグもそこには気付いているようだった。

 揺らめく火をぼんやりと眺めながら言葉は続く。


「……俺とドレイクとランデルは幼馴染で、冒険者に囲まれて育った。全員昔から冒険者になって活躍するのが夢で、小さい頃は子供用の木剣なんかでよく遊んでた。

そういう時にいつも俺たちの面倒を見てくれたのは、年の離れたドレイクのお兄さんだった。その時からDランクで、魔物と戦った話をしてくれたり、チャンバラにも付き合ってくれていた。

強くて、勇気があって、面白くて、何より優しい。すごく、優しい人だった。

……だが、彼は死んだ。15年前のスタンピードでな。Dランクでは一番の活躍だったと聞いている。

皆が悲しんだ。俺たち3人だけじゃなく、近所の人たちも含めて。

特にドレイクのショックは大きかったみたいでな。まぁ……色々あった。」


 目蓋を閉じた彼は、わずかな後悔を滲ませる。


「長々と話したが……何が言いたいのかというと、ミオからその時のドレイクと似た雰囲気を感じるんだ。初めて会った時からな。」


 心臓が跳ねた。

 瞬間、あの時のことがフラッシュバックする。


 悲哀、焦燥、後悔……やるせない思いがよみがえり、それを必死に押さえつける。


 最近は夢見が良くなかった。

 真っ暗な空間で、お母さんが遠くに向かって歩いて行く。私はその後を走って追いかけるのに、絶対に追いつけない。そんな夢。

 目が覚めれば呼吸は荒く、全身汗だく。回復しなかった疲れは魔法で癒す。そんな日々。


「俺に話せなんてことは言わない。だが…過去はいつか過去にしなくてはならない。それは覚えておいて欲しい。」

「……ありがとう、ございます。」

「……すまん、俺が触れるべきではなかったかもしれん。そろそろ時間だ。ランデルたちを起こしてくる。」


 一人、焚火の前に残される。


 ”過去は過去に”


 それができれば、どれだけ楽になれるのだろうか…?

あとがき


クレイグが語った過去。それは大災害の末にドレイクの兄が亡くなるという、悲劇的なものでした。

彼は当時のドレイクが相当危うかったのを思い出しながらミオに話をしていて、先達として同じ轍を踏まぬようにという思いなのですが、当の主人公がメンタルがボロボロだったせいであんまり意味を成してません。

主人公が救われるのは、もう少し先の話となります。


ちなみに、前半ラストの”昔の彼”とは、出会った頃のルートの事です。

さらに加えて言うと、現在ミオが村を出てから1カ月ちょっとが経過しており、ちょうどルートが村を出発する頃となっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ