第63話 違和感
第2章 曙光と絆の先へ
第2幕 萍水相逢
第63話 違和感
朝。
開館したギルドへ、冒険者たちが雪崩込む。
今日は週始めの平日だ。週末に英気を養えた者も、そうでない者も、我先にと掲示板へと向かっていく。
そんな中、私は掲示板から離れた場所で、人を待っていた。
理由は単純。
今回の依頼はすでに受注済みだからだ。
受けたのは、ギルドに推薦された商隊護衛。
なんでも、Cランクになるには商隊護衛の依頼を達成が必須条件らしいのだ。
目的地はアムヌーから馬車で2週間ほど南。
トゥニーラ川沿いに広がる穀倉地帯を治める都市―――アメーティアス。
護衛対象は、なんとレルデップさんが会長を務めるクール商会の馬車だ。
レルデップさんとは旅を共にして以来、本当によくしてもらっている。クール商会傘下の雑貨店にも、何かとお世話になっていた。
そして、今回が初めての護衛依頼。
そのため“研修扱い”となり、ギルドが共同で依頼を受けてくれる冒険者を選んでくれた。
その相手というのが―――
「ようミオ!久しぶりだな!」
「お久しぶりです、ドレイクさん。」
「大活躍のようだな。」「噂は色々聞いてるよ~?ゴブリンの村を丸ごと殲滅したんだって?」「……ふん。」
「ヴィメルさん、ランデルさん、ハルマンさんも、それからクレイグさんも、お久しぶりです。」
「……元気そうだな。」
「ええ、おかげさまで。」
陽キャなドレイク。
(主にドレイクの)保護者ヴィメル。
お調子者のランデル。
寡黙なハルマン。
そして、隊長のクレイグ。
レルデップさんたちと道程を共にした“燃え盛る刃”の面々だった。
ギルドが彼らを選んだのは、別に私が面識があるからではないらしい。
単に経験と実力から選ばれたいくつかの候補の中で、受けたのが彼らだったという話だ。
それでもこうして再び一緒になる辺り、縁というものを感じずにはいられない。
「準備は出来てるか?」
「はい。いつでも―――あれ?ドレイクさん、その傷……」
答えながら、襟元の奥にある大きな傷跡が目に入った。
「あぁ、これ?前回の依頼でちょっとな。気になるなら道中で話すけど―――」
「問題ないなら、そろそろ行こう。依頼人を待たせることになるのは良くない。」
苦笑するドレイクの肩を、ヴィメルが掴む。
それを合図に、私たちは移動することになった。
***
商隊のメンバーとも顔合わせを済ませ、私たちを乗せた荷馬車は時間通りにアムヌーを出発した。
配置は前回とほぼ同じだ。
私、ドレイク、ヴィメルの3人で先行する1台目。
ランデル、ハルマン、クレイグを乗せてついてくる2台目。
前回はクレイグもこちらにいたが、それは当時の私が半分護衛対象だったから。
今は私も護衛する側なので、人数は均等になっている。
「にしても、あのドラゴンは何度見ても壮観だな。」
遥か上空。
同行するヴァルの影を見上げて、ドレイクが呟く。
それに嬉しくなった私は、思わずむふんと胸を張った。
「ふふふ、そうでしょう?あの子は大きくて強くてカッコいい上に賢いですからね。私の自慢の相棒です。」
「普段は東の森の奥で放し飼いにしてるって言ってたが、どうやって呼び戻してるんだ?」
「あ、それは魔道具でやってます。どれだけ離れていても私とヴァルの間でだけなら会話ができる特製品ですよ。」
「魔道具……?」
ヴィメルが目を丸くする。。
「活躍してるとは聞いていたが、もうそんなものまで買えるようになったのか?」
「いえ?自作ですよ。こう言っては何ですが、アムヌーの魔道具店でアレは作れないと思います。」
そう。ヴァルに持たせているあの魔道具は私が作ったものだ。
私とヴァルは、“血”ならぬ“魔力”を分けた間柄。
それを利用した遠距離通信は、現状二人だけが使える秘密の回線だった。
アムヌーの魔法店へは趣味の一環で足を運んだが、並んでいた作品を見る限り魔力共鳴を応用したそれは作れないだろうし、きっと修理する事すら難しいだろう。
彼らのお世話になることはないと思う。何せ必要なものは自給自足できているのだから。
「……本当に、剣より魔法の方が得意なんだな。」
「魔道具の製作に必要なのは”魔導”の技術です。魔法と混同すると、魔道具師の方々が怒りますよ。」
「そうなのか?…覚えておこう。」
会話が途切れ、蹄と車輪の音だけが続く。
そこで私は、先ほどから気になっていたことを切り出した。
「それで……ドレイクさんの傷は、何があったんですか?」
一瞬、言いよどむドレイク。
やがて彼にしては珍しく、真剣な口調で語りだす。
「……前回の依頼でアメーティアスまで行った後だ。帰りに受けられる依頼が無くて、そのままアムヌーまで帰る途中で、盗賊に襲われたんだ。」
「……え?ドレイクさんたちだけ、だったんですよね?」
「そうなんだよ!だから余計に引っかかってて…この傷もその時のだ。正直……気味が悪い。」
盗賊は文字通り“盗む”者だ。
そんな奴らが護衛対象の商隊もない、ただの冒険者パーティを襲撃した?何のために?
冒険者が持っている財産なんてたかが知れている。
武器、防具、多少の金銭と戦利品……その辺りはまだマシかもしれないが、保存食ばかりでろくな食料は持ってないし、そのほか高く売れるようなものも持っていない。
それでいて相手は対人戦闘のプロ集団。どう考えても割に合わない。
例えるなら、冒険者が好き好んでゴブリンの―――それもただのゴブリンではなくジェネラルの群れに突っ込むようなものなのだから。
あとがき
前話で提示した舞台裏の動きが、今回で即回収されましたね!
渦巻く陰謀、露呈する異変、それが主人公まで届いてようやく物語となる。
巨大かつ繊細な展開なので書くのは大変ですが、それはそれで楽しく思える辺り私はもうこの執筆活動が立派な趣味として定着しつつあるようです。
今後の主人公の動きからは、目が離せませんね!




