第62.5話 彼女のいない中で
第2章 曙光と絆の先へ
第1幕 開雲見日
第62.5話 彼女のいない中で
すみません、遅くなりました!!
いやぁ、じつは終末地の方で色々としているうちに完全に小説から離れてしまって…
また投稿を再開できるよう頑張って参ります!
Side ”燃え盛る刃”
「くそぅ……ミミリィちゃん…っ!」
「おいおいドレイク、まだべそべそしてんのかよ?」
「ぅるせぇッ!」
情けない声を漏らしたドレイクに、にやけた笑みを浮かべて茶々を入れるランデル。
案の定、ドレイクは噛みつくように怒鳴り返した。
彼がここまで荒れている原因は、先日出会った一人の女性―――ミミリィにある。
その日、少し酒の入ったドレイクは上機嫌で風俗街へ向かった。
日々の疲れを、見目麗しい嬢たちに癒してもらう。それは彼にとって、もはや習慣のようなものだった。
そこで出会ったのが、ミミリィだったのだ。
話術は巧みで、距離の詰め方も自然。さすが夜の街で生きる女性というべきか、元々惚れっぽいドレイクが落ちるのに、さほど時間はかからなかった。
そして出発前夜。酒の勢いも借り、彼は意を決して告白をする。
返答は当然の如く「NO」であった。
ともかく、そういうわけでドレイクの機嫌は最悪なのだ。
もっとも、こうしたことは今回が初めてではない。むしろ日常茶飯事と言ってもいい。
ドレイク―――それは、”実らぬ恋多き男の名”なのである。
さて、場面を戻して現在。”燃え盛る刃”の5人は、アムヌーからずっと南に位置する街―――アメーティアスへ向かう商隊の護衛依頼を終え、その帰途にあった。
本来であれば、帰りにも護衛依頼を受けるのが常だ。だが今回は運悪く、アムヌー方面への依頼が一つもなかった。
そのため、やむねくパーティだけでの帰還となったのである。
「デケェ声を出すなドレイク。森沿いだぞ?魔物が寄ってきたらどうする。」
「……チッ」
「そろそろ学んだらどうだ?夜の姉ちゃんがお前にあま~い言葉を囁いてくれるのは、仕事だからだぜ。」
「何度も言うが、私にはお前が理解できん。なぜ同じ過ちをこうも繰り返す?」
「分かんねぇだろうが!もしそれで俺が結婚の機会を逃したら、お前ら責任とれんのかよ!?」
先行するヴィメルが冷や水を浴びせた直後、再び油を注いだのはやはりランデルであった。
珍しく話題に乗ったハルマンも、ドレイクの癇に障ったらしい。
「ドレイク、少し静かにしろ。ランデルもだ。流石に度が過ぎる。」
「おっと、失敬」
「……クソが」
最後尾から飛んできたクレイグの低い声に、空気が一瞬で引き締まる。まさに鶴の一声だった。
その直後―――
先頭を歩いていたヴィメルが、急停止する。
「……やっぱり居る。全員警戒!何か居るぞ!」
Side END
***
Side ■■■
森の奥深く。
人払いの魔法が施された一角に、集落と呼べるほどの建物群が広がっていた。
そこでは、大勢のならず者たちが違法行為の末に手に入れた戦利品を前に下卑た笑い声をあげている。
「……相変わらずやかましいな。」
「来たか。上は何と言ってる?」
「ゴロツキは何人使ってもいいから、もっと派手に動けと。とにかく名を広めるっつー方針らしい。ただし裏に繋がる情報だけは、絶対に渡すなとも言っていた。」
「…討伐隊が組まれたらどうする?」
「下だけ切り離せばいいとさ。」
「そうか……それにしても、上は一体どういうつもりなんだ?あの程度の徒党で何になる?」
「説明されないのなら、それは俺たちが知るべきことじゃないんだろう。」
「…それもそうか。」
家の外、窓の下。
その会話を、ただ聞き流す少女が一人いた。
伸び放題の髪は汚れ切って、地べたに座る体を覆い隠している。
首には奴隷の証である首輪。身に着けているのは、それと薄汚れた貫頭衣だけ。
彼女自身はもう数えていないが、故郷から連れ去られて5年。
人生の半分近くをこの劣悪な環境で過ごした彼女は、心を固く閉ざし、ただ日々が過ぎ去るのをただ待っている。
その瞳に、光は無い。
いつか誰かが助けてくれる―――そんな希望はとうの昔に砕け散った。
見つからないように、目立たないように。
膝を抱えて、顔を伏せ、息を殺して生きるだけ。
ただ一つ、頭の上の猫耳だけは、常に警戒している。どんな些細な音でも拾って、自分に迫る危険を、少しも聞き逃さないように。
閉ざされたまぶたの裏に浮かぶのは、かつて共に連れられていた奴隷たちの記憶。
人間の奴隷は一人も居らず、皆わずかな仲間意識の下で心を保っていた中で一人、また一人と消えていく。
男たちに連れられここを離れた者、反抗して見せしめに殺される者、環境に耐えきれず衰弱死する者、絶望し自ら命を絶つ者。
彼女が知るだけでも何十人と居たここの奴隷のうち、遂に生き残ったのは彼女一人となっていた。
唯一友達と呼べた存在も―――
理由のない暴力を振るわれて、死んでしまった。
「おい黒猫、お前の売り先が決まった。」
不意に聞こえた足音に、少女の耳がピクリと反応した。
俯く彼女の前には男が立っている。その声は、家の中で話していたうちの一方だった。
少女は何も言わない。
ただ、静かに立ち上がった。
Side END
第2章 第1幕 完
あとがき
今回は今後の話に向けた路線の整理を行うため、全編サイドストーリーでお送りいたしました。
さて、今回で第2章第1幕「開雲見日」も終わり、次回からは第2章第2幕「萍水相逢」が始まります。
実はこれでようやく獣剣のメインストーリーに触れるかなって感じなんですよね!()
正直もうすでに本編で触れた伏線とか設定の管理が大変ですけど、それでも書きたいものはこの先にありますから!
それでは今後も、どうぞお楽しみに!




