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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
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第61話 自らに課す試練

第2章 曙光と絆の先へ

第1幕 開雲見日

第61話 自らに課す試練

 禁止するのは、魔法全般。

 正確には、魔術及び属性変換された魔力の行使だ。


 逆に許されるのは、身体強化魔法や“魔力糸(まりょくし)”を含む、単純な魔力操作による干渉。

 私の武器になるのは、腰に佩いている打刀“雲荒(くもあらし)雪宗(ゆきむね)”と、私自身の身体。そして、この戦場を取り巻く環境のみ。


「ふぅーっ……」


 全身に巡る魔力を感じながら、逸る鼓動に耳を澄ませる。

 ゴブリンは、今までにない敵だ。小さく、知恵があり、数が多い。


 だからこそ―――これ以上ない成長の好機。


「―――参るっ…!!」


 樹上から躍り出る。

 勢いそのまま木杭の柵を飛び越え、眼前のゴブリンの顔面を踏み砕いて着地した。足元から、頭蓋の砕ける鈍い感触が伝わる。


 突然の凶行に、集落がどよめいた。

 最も近くの櫓から、開戦を告げる角笛が鳴り響く。


 まず狙うべきは、全10基の櫓に配置された弓持ち。

 だがすべての櫓に登って斬ってでは手間がかかる上、後続が登ってしまえば水の泡。


 ならば―――


 けたたましい笛の音を奏でる櫓へ瞬時に接近し、すれ違いざまに雪宗を抜き放つ。

 白刃が一閃。魔力を纏わせた斬撃が、4本の柱を全て断ち切った。


 支えを失った櫓は集落の内側へと倒き―――

 逃げ惑う数匹のゴブリンと家屋を押し潰しながら、土埃と轟音を立てて崩れ落ちた。


 戦況は刻一刻と変化する。

 異常を察知した全ての櫓で角笛が鳴り、集落全体が戦闘態勢へと移行した。


 ここからは、速度勝負。


 集落を等間隔に囲む櫓を次々と斬り倒しながら、進路を塞ぐゴブリンは体当たりで吹き飛ばす。弓持ちもいたが、本気の身体強化によって加速した私をとらえられる奴はいなかった。


 櫓を一つ落とすごとに、次の地点へ集まるゴブリンの数が増えてゆく。

 そして―――最後の1基を目前にしたその時。


 私よりも大きな影が、立ちはだかった。


 ―――ゴブリンジェネラル。


 身長は2m超え。

 筋骨隆々の肉体は、もはや筋肉そのものが鎧のようだ。

 素足に脚絆、腰布の上から前開きの腰藁。肩には、巨大な毛皮のマントを羽織っている。


「グオオオオ!!!」


 雄叫びと共に、その鉄塊の如き大剣を両の手で(しか)と握り締め、大上段に構えた。

 私と奴の間には、他のゴブリンも居ない。道を示すように、左右を囲んでいるだけだ。


「―――上等っ!!」


 魔力による強化があろうと、あの一撃を正面から受ければ致命傷。

 最低限で、受け流すっ…!


 ガキィッ!


 刃の根元、鍔にほど近い場所で受け、即座に流す。

 返す刀は小手狙い。討伐ではなく、戦闘不能を優先―――


「なッ!?」


 コイツっ、武器を手放してッ!!?


 予想外の挙動に一瞬目を見張るが、強化された動体視力が状況を捉えている。

 私の真向切りは空を切り、奴は両手を離して覆いかぶさる構えを取った。


 対格差を生かして抑え込む気か―――!ならば…!


 私も雪宗を手放し、地に手をつく。

 がら空きの腹に狙いを定め、地面がひび割れるほどの踏み込みで突貫した。


 衝撃と共に、ジェネラルの体は宙に浮く。

 だが次の瞬間、奴の腕が私の背を掴み、そのまま5mほど諸共に吹っ飛ぶ。


 このままもつれ込めば形勢は私の圧倒的な不利。

 マウントを取れたとて体格に差があり過ぎるし、なにより周囲は一般ゴブリンに囲まれている。ここまでは勢いで突っ走って来れたが、ジェネラルに拘束されれば袋叩きに遭うのは明白だ。


 ―――だが、不思議だ。

 ここまで考えたのにまだ宙を舞っている。

 時間の流れが遅い……これが“ゾーン状態”というやつなのか?


 自由に身動きは取れない。

 ここでの最善手は、即座にジェネラルを無力化する事。

 四肢のうちどれかは壊したい。

 最も早く、確実なのは…?


「グォ…!!」


 接地。

 ジェネラルの背が地面を擦り、掴む拳に力が込められる。


「うおおおおッ!!!」


 私の背を掴む奴の左腕を取り、身体強化で強引に肘を折る!!


 ゴキィッ!


「ゴアアアアァァァ!!!」


 激痛に悶えるジェネラル。それでも右手は離そうとしない。

 こいつもわかっているんだ。私をここで釘付けにできれば勝てると…!


「離せえぇェェッ!!!!」

「グオオォォォ!!!!」


 くそッ、警戒されているせいで右腕が折れないッ!

 こいつが離さない、なら……あっ!そうだよこれ服じゃん!


「そんなに欲しいなら、くれてやるッ!」


 ビビィッ!


 全身に力を籠めて力いっぱい立ち上がれば、ジェネラルに掴まれていた狩衣は引き裂かれつつも私自身は拘束を脱した。


 動けるようになった今、警戒するべきは矢。

 正直最上位種がこれほどの戦闘勘を持っているとは思わなかった。その知能を考えれば、矢尻に毒が塗られていても不思議じゃない。


 案の定、櫓の上で弓が引かれている。

 魔力糸で雪宗を引き寄せ―――


「嘘だろ―――!?」


 雪宗は、“2体目”のジェネラルの手にあった。


 五体満足のジェネラルから奪い返すのは困難だ。

 雪宗が無いとなるとマズいぞ。

 そもそも2体目のジェネラルってどういうことだよ!

 魔法を解禁するべきか…?


 思考が迷いに揺れる。

 弓は引き絞られ、周囲のゴブリンが一斉に殺到する。1体目のジェネラルは苦悶に歪む顔の奥で、勝利を確信した笑みを浮かべていた。


 どうする、どうする、どうするっ……!!


「クオオォォンッ!!」


 突如、戦場に響いた咆哮。

 それは、2年間を共にした相棒の声。


『ぼくの相棒に、触るなっ!!!』

あとがき


久々にヒリつく戦闘シーンでしたね!第32話「奥の手」以来でしょうか?

自らの成長のため、制限された環境で大立ち周りを繰り広げる主人公。それに相対するはゴブリンジェネラル。

彼らの知能は人間と遜色ありません。強いて言うなら論理的思考力が多少劣るくらいのもので、こと戦闘においては鋭い勘を発揮します。

さて、そんな強敵を戦闘困難にまで追い詰めたかと思いきや、まさかの二体目の出現。

混迷を極める主人公の下に現れたのは、身を分けた相棒であるヴァルでした。

それではまた、次回お会いいたしましょう。

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