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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第2章 曙光と絆の先へ
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第55話 取り調べと闖入者

第2章 曙光と絆の先へ

第1幕 開雲見日

第55話 取り調べと闖入者


2025/12/25 細部各所の表現を変更

「初めまして、ミオさん。どうぞギネートとお呼びください。」


 痩身のイケメンエルフ―――ギネートが差し出した手を握り返した。


「はい。……あの、どうして私は呼ばれたのでしょうか?」

「まぁまぁ、とりあえずお座りください。」


 示されたソファに腰を下ろすと、受付嬢は仕事は終えたと言わんばかりに無言で部屋を出て行ってしまった。


 ギルド支部のNo.2と二人きり。しかも初対面で密室。

 緊張に鼓動が早まるのを感じた。


「お呼びしたのは、あなたの申告内容に疑問を感じざるを得なかったものでしてね。」


 ギネートは眼鏡をかけ、手元のクリップボードに視線を落とした。


「ラージボア以外のDランク2種にCランク1種。お持ちの討伐証明部位をここに並べていただけますか?」

「分かりました。」


 虚界門を開き、示されたテーブルの上に並べていく。

 皮の一部、角、首。どれも保存状態は良好で、元が何の魔物であったかは明白だ。


「……なるほど。これらはどのように討伐を?」

「魔法です。ラージボアは、この刀で。」


 手に持っていた雪宗を掲げる。

 ギネートさんの表情は硬く、彼の目の辺り魔力が集まっているような気がした。瞳が隠されたその糸目に、何もかも見透かされているような錯覚を覚える。


「……まぁいいでしょう。どうやら嘘を吐く気は無いようですね。」


 しかし、剣呑だった彼の雰囲気は途端にやわらいだ。すると、頭を掻いて言う。


「受付嬢から報告を受け、虚偽申告の可能性を疑いました。ご不快に思われたのなら謝罪します。」


 聞けば、彼は自身が契約する精霊の力を借りることで嘘を見破ることができるんだとか。

 目に魔力が集まっていたのはそのせいだったらしい。


「コカトリスまで討伐できるとなればCランクでも申し分ないのですが、そこからは冒険者としての経験も求められます。規定によりDランクでの登録となりますが、よろしいですね?」

「はい。」

「では登録は問題なく完了です。」


 ほっと息をついた、その瞬間だった。


「―――最後に一つ、個人的な質問を。」


 再び彼の目に魔力が集まり、言葉にも鋭さが宿る。


「”フロライン”―――その家名の意味を、あなたはご存じですか?」


 胸に空いた穴に触れられて、わずかに痛む。けれど彼は何を聞きたいのだろう。


「それはかつてSランクにまで上り詰めた女性が名乗り始めた、言わば”この世に一人しか存在しない”はずの家名です。そもそもこのトレイトス王国において、家名を持つのは上級平民や貴族、またはその縁者のみ。」


 彼はの言葉は静かに、けれど確かな怒りを含んで私を咎める。


「あなたは―――なぜ”氷星の魔女”の姓を名乗ったのですか?」


 隠すようなことはない。

 私は息を吸い、口を開こうとして―――


 バキャァッ!!


 爆音とともに扉が蹴破られた。蝶番が悲鳴を上げ、ドア枠の一部が砕け散る。


 音に驚いた私は毛を逆立て、対するギネートさんはため息をついてこめかみを押さえ、顔をしかめている。


「聞いたよギネート!期待の新人が来たんだって!?」


 罪なき扉を蹴りつけたのは、目をキラッキラに輝かせた女の子だった。

 大きなウェーブがいくつも入った、もこもこふわふわな桃色の髪。その上には彼女の前腕ほどの長さがあるウサギ耳が元気よく屹立し、いくつものフリルがあしらわれた可愛らしい服に身を包んでいる。


「……何をしているんです、支部長。」

「えっ、支部長!?」


 私の胸辺りまでしか身長がない、2年前のエレンたちよりも幼く見えるこの子が、このギルドの支部長?そんなバカな!?


「あなたは知りませんか。この無駄に設備を破壊する年齢詐称ウサギこそが、冒険者ギルドアムヌー支部現支部長、元Aランク冒険者のキリベルカです。現役時代は”惨殺ウサちゃん”とも呼ばれていました。」

「ギ、ネ、エ、ト~?その二つ名は口にするなって、何度言ったら分かるワケぇ?それとも、私にボコボコにされたいとかぁ?」

「そんなことをすれば、あなたが蛇蝎の如く嫌っているデスクワークを肩代わりできる者は居なくなりますね。それでもよろしいのですか?」

「ほぉ~ん?それを盾にすれば私が引くとでも?」

「引かないのであれば仕方ありません。私はあなたから逃げるついでに休暇を取ります。」


 額に青筋を立てた両者はしばらくにらみ合う。先に折れたのは、キリベルカさんの方だった。


「……ふんっ、今回は許してあげる。それより、そっち期待の新人だよ!コカトリスも倒せるんだって?」

「うわぁ!?」


 彼女の怒りはすぐに抑えられ、険悪な雰囲気が去ったことに私がほっとしたのもつかの間。

 いつの間に近づいたのか、キリベルカさんが私の手を両手で掴んでいた。しかも何やらにぎにぎと感触を確かめ始めたではないか。私は突然のことに鳥肌が立った。


「ほうほうほう。これは……あれ?あなた剣持ってるのにたこが無いんだね…?強者の気配はするのに……」

「魔法で治してしまうので…」

「へー!私以外にも治癒魔法が常用できる獣人って居たんだ!いいよね、治癒魔法。私もこれのおかげで古傷ができずに済んだんだよー。ま、その代わり外見が幼女に固定されちゃったんだけどねー!あはは!」

「は、はぁ…」


 人の手をにぎにぎしながら嬉しそうに話すキリベルカさん。正直言って彼女が何をしに来たのか全く分からない。

 それに何でずっと私の手をにぎにぎしているんだろうか。剣だこ云々の確認ならもう済んだのでは…?


「……支部長。」


 ギネートさんの声が低くなる。


「ミオさんと話をするのは構いませんが、まだ取り調べの最中です。一度出て行ってください。というか、まだあの書類の山の処理が終わってないでしょう?早く終わらせて頂かないと―――」

「待って、ミオ?この子ミオっていうの?」

「はい?まぁ、ええ。そう聞いていますが。」

「ミオ…ミオ……あれぇ?どっかで聞いたような……」

「支部長?」


 彼女は腕を組みんで耳を垂れさせ、ウンウン唸って何かを思い出そうとしているようだった。

 ギネートさんの声はすでに届かぬようで、私たちは見守るしかなくなってしまった。


「う~ん……ミオ…白狐……ん?白狐のミオ…?……ああぁっ!!」


 瞬間、キリベルカはカッと目を見開いた。


「君、もしかして”氷星”とミラの弟子!?」

あとがき


前回予告した支部長、キリベルカさんが主人公に対するギネートさんの取り調べに乱入!

しかも主人公と二人の師匠について知っているようですよ?


次回、惨殺ウサちゃんが思い出します!

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