第53話 特殊な歓迎
第2章 曙光と絆の先へ
第1幕 開雲見日
第53話 特殊な歓迎
「―――止まれっ!!」
張り詰めた警告が石造りの門前に響き渡った。
アムヌーの外壁前に到着した私たちに待っていたのは、大盾を構えた完全武装の騎士たちの壁だった。
その中央、一歩前に出た壮年の男が、震えを押し殺した声で名乗る。
「こちらはアムヌー騎士団副団長!エドワード・ダモックである!そ、そのドラゴンは何者だッ!」
威圧的な口調とは裏腹に、その視線は明らかにヴァルを恐れている。
そこで事前の話し合い通り、街に馴染みのあるレルデップさんが馬車の前に進み出た。
「エドワード副団長、それは私から説明を。」
「あなたは…レルデップ殿か?いや、なぜあなたの商隊にドラゴンが?」
「ご懸念はごもっともです。実は―――」
レルデップさんの落ち着いた説明が続くにつれ、副団長の呼吸は徐々に整って行った。
「……つまり、ドラゴンの背に乗る少女は魔の森に住まう魔女の娘であり、そのドラゴンは彼女の従魔である、と。」
「その通りでございます。」
一泊の沈黙ののち、副団長は私を正面から見据えた。
「ミオと言ったな。ドラゴンから降てくれ。君の口から話を聞かせて欲しい。」
伏せていたヴァルの背から降り、胸を張って一歩前へ出る。
「まず、あのドラゴンが人を襲う可能性はあるか?」
「ありえません。卵の頃から育てましたし、今では念話によって完全に意思疎通が可能です。」
「それはつまり、会話ができるということか?」
「はい。ヴァル、自己紹介をしてあげて」
『わかった!』
次の瞬間、空気を震わせるように、門前一帯に声が響いた。
『ぼくはヴァル!ミオのあいぼーだよ!』
「な、何だ!?」「この声、どこから…!?」
ざわめく騎士たちをよそに、私は続ける。
「ヴァルは人を襲ったりしないよね?」
『しないけど、何で?』
「街の人たちは、ドラゴンを怖い魔物だって思ってるらしいよ。」
『ええー?ぼくは怖くないよー?むしろミオの方が怖いと思うけど…』
「それは言わんでよろしい……ともかく、これでヴァルが人を襲わないってことは分かっていただけましたか?」
呆気に取られていた副団長は、しばらくすると深く息を吐いた。
「……分かった。それでは従魔のドラゴンは、アムヌーにおいて馬と同じ扱いとする。移動は大通りとそこに面する馬宿のみ。街の中での飛行を禁じ、従魔登録は後日必須とする。なお、この条件は私の独断で下しているので、後ほど正式な条件が課される可能性があることは留意してほしい。それを了承出来るのなら、アムヌーへの入市を許可する。」
「分かりました。」
「うむ。それでは、これにて状況終了!全員、帰投せよ!」
「「「はっ!」」」
落ち着きを取り戻した騎士団は、副団長の号令で整然と門をくぐって行った。
私は肺に溜まっていた空気を吐き出した。
やはり警察の類の人は苦手だ。ただ会話をするだけで緊張する。
***
その後、入市税も支払い無事にアムヌーの街へと入ることができた私たち一行は、門前の広場で一息ついていた。
「本当に色々とありがとうございました。」
「いえいえ、うちの店でお買い物でもしていただければそれで十分ですよ。」
にこやかに言うレルデップさんには、本当に親切にしてもらった。この恩はいつか返せるタイミングが来ればいいのだが。
「ぜひ行かせていただきます。オレンジ・ブレイドの皆さんもありがとうございました。」
「いいってことよ!貴重な女の子の後輩だしな!」
「ドレイク、鼻の下がのびてるぞ。」
「これだからドレイクはなぁ…w」
「学ばん奴め。」
「んだとてめぇらぁっ!」
掴みかかるドレイクと、それを羽交い絞めにするヴィメル。
ドレイクが動けないことをいいことにランデルはさらにあおり散らかし、苦言を呈したハルマンはといえば、興味を失ったのか手帳を開いていた。
自由気ままなパーティメンバーに頭を悩ませる様子のクレイグは、一つため息をついて言った。
「はぁ…すまんな、うちのバカどもが。」
「いえ、賑やかで楽しかったですよ。」
「そうか……あぁそうだ、何か困ったことがあればうちを頼ってくれていい。これも何かの縁だからな……とはいえ、ラージボアを一人で仕留められるような相手に言うことでもない気はするが。」
この間見せたラージボアの頭を思い出したのだろう。彼は苦笑していた。
「それでは、また。」
「ええ。店でお待ちしております。」
「またなー!」
商隊の彼らと別れ、私とヴァルは冒険者ギルドに向かって歩き出した。
あとがき
やって来ました、アムヌー!主人公の旅路はこの町から始まるのです。
果たして一体どんな冒険が待ち受けているのか、彼女らのこれからが楽しみですね!
次回、冒険者ギルドへ!




