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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
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第5話 読める、読めるぞぉっ!?

「第1章 永遠と須臾の煌めき」

の中の「第1幕 転生諸変」

の中の「第5話 読める、読めるぞぉっ!?」です


2025/07/15

 細部各所の表現を変更

「じゃあ私はちょっと離れるから、何かあったら呼んでくれ。いい子にな。」

「あぃ。」


 そう残して母上殿が部屋を出ていく。彼女の足音が十分に離れると、さっきまでの賑やかさが嘘みたいに静かになった。


 …なぜか居心地が悪い。どうやら俺は出会って半日と経たずに懐いてしまったらしい。

 いくら母上殿がこちらに合わせてくれていると言えど、我ながら己のチョロさ加減に苦笑が漏れる。


(それにしても…暇だなぁ。) 


 何となく周囲を見回してみる。


 部屋の中にあるのは最初に目を覚ましたベビーベッドと、今座っているふかふかの絨毯。部屋の隅にあるクローゼット、その隣にある大きな振り子時計。そして初めに母上殿が座っていた椅子ぐらいなものだ。幼児用のおもちゃなどは見当たらない。


 そもそもここは森のド真ん中にある魔女の家だ。ベビーベッドがあることがすでに驚きと言えるレベルなので、おもちゃが無いことに不満を持ったりはしない。

 というかそもそも幼児用のおもちゃがあったとして、それで喜々として遊べるほど俺の精神は図太くない。


(あ、そう言えば俺が目を覚ました時、母上殿は本を読んでたよな…確か本は椅子に置いていたはず!)


 意識を向ければ見つけるのは簡単だが、そこに至るまでが難しい。

 この体になってから初めてまともに動いたが、元の体とのギャップがあり過ぎてうまくいかないのだ。


 初めに立ち上がろうと足に力を込めたが、筋力不足で断念するほかなかった。やはり赤ん坊の体は筋肉量に対して自重が重すぎるらしい。


 ならばと四つん這いになりハイハイの格好になる。すると先ほどとは打って変わって素晴らしい安定感だ。これなら今の俺でも安全に移動できる。

 だが、この精神年齢でハイハイというのは、何とも屈辱的なものを感じる。これからは毎日二足歩行の練習をしなければ…!


 そうして何とか椅子の足を支えに立ち上がり、座面に載っている本を引き落とす。


(ふぅ…ただ本を手元に取るだけなのにこうも勝手が違うとは、早く体が大きくなることを祈るばかりだな…さて、と。母上殿はあのとき何を読んでいらっしゃったのかな?)


 本の表紙には見たことのない文字が書かれている……が、なぜか意味は分かる。


“脅威度別魔法動物図鑑”


 表紙を開くと、こちらも同じく意味だけは分かる知らない文字で書かれている。

 内容的には、この世界にいる”魔法動物”―――俗に”魔物”や”魔獣”と呼ばれる―――全般に関する図鑑のようなものだった。


”魔法動物と通常動物を分ける唯一にして最大の差異は、体内に魔石を持っているか否かである。”


 ある種の格言のようなものなのだろうか。その一文に続く目次には、下はゴブリンやスライムなどが属するG級から始まり、上にはファンタジーに欠かせないドラゴンも属するS級まで、魔物の名前がずらりと並んでいる。

 興味をそそられドラゴンのページを開くと、残念ながら挿絵は無かったものの、ドランゴンに関する詳細な情報が載せられていた。


 例えば、ドラゴンはその成熟度によって脅威度が上下するとか、場合によっては全く別物のような姿をしているとか、ブレスは山を穿つとか。

 そういった信憑性のある物ない物にかかわらず、それらしいこと全てが載っている。


(ドラゴン!大抵の作品で最強格に置かれるファンタジー生物!くうぅっ!一度でもいいから会ってみたい!)


 やはり本は良い物だ。読んでいるだけで心が安らぎ、知識欲まで満たされる。一石二鳥ここに至れり。


 そうして文字の違和感すら思考の彼方に押しやって、図鑑の内容に夢中になっていたところ…そこにノックの音が響く。


「おーいミオ、お昼の用意が…ってお前、文字読めたのか?」

「…」

「ん?あれ?おーい。ふむ………私の声が聞こえないのか?」


 気配を消して接近したアリステラが、ミオの耳元で脅すように囁いた。


「ふぁあっ!?」

(すっごいゾワゾワした!すっごいゾワゾワしたッ!何今の!?っていうかすんごいイケボだった!)


 俺が驚く様子を、母上殿はまさしく悪戯を成功させた子供のように笑ってみている。


「くくくっ、今からこの調子じゃ先が思いやられるな?」

「ぅ、ごぇんぁしゃい(ごめんなさい)…」

「冗談だ。ふふっ、私も人に言える立場じゃないしな。お昼の用意ができたから行こう。」

「ぅゆ!?」


 突然脇に手を差し込まれたと思ったら、そのまま抱えあげられた。予想外の行動に驚きの声が漏れる。


「おっと、驚かせたか?だがその体じゃテーブルに着くだけでも一苦労だろう?」

(そうだ、俺は赤ちゃんだった。ちょっとした移動にも苦労するんだから、別に変なことじゃない…んだよな?)


 未だどうにもこの体に慣れない。まぁ、高々数時間で慣れろという方が無理のある話なのだが。


 部屋を出ると、暗い茶で統一された木目が美しい廊下が目に入り、そこを左に向くとすぐに広々とした開放的な空間が現れた。


 リビング、ダイニング、キッチンが、仕切りのない空間に存在している、いわゆるLDKというやつだ。

 左手側を占めるリビングには火の入っていない石造りの暖炉があり、その前に大きなソファが置かれている。

 右手に目をやれば、手前には足に簡素な彫刻が施された木製の食卓と、四人分の椅子があるダイニング、その奥には土間に竈が―――


(土間!?竈!?)


 驚きである。何せこの家は全体的に洋風の見た目だったからだ。そこに和の産物である土間と竈が突然現れれば混乱するというものだろう。


(例えそれが、地球人として違和感の絶えないものであったとしても、何があっても不思議ではないのか。ここは異世界なんだもんな。)

あとがき


読めないけど意味は分かる文字。中々に意味☆不明ですが、主人公は知識欲に負けて一旦考えるのを止めたようです。

そして今回も前回に引き続き世界観に関する情報が小出しにされましたね!ドラゴンですよドラゴン!…え?全然小出しじゃないって?まぁ細か(ry


次回、異世界の料理のお味は…?

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