表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
49/65

第49話 魔神の魂片

「第1章 永遠と須臾の煌めき」

「第3幕 桑弧蓬矢」

「第49話 魔神の魂片」


二度も締め切りをブッチしてしまい、申し訳ありません…!本っ当にお待たせいたしましたっ…!!

色々と理由はあるのですが、突然スランプになってしまって…

次回以降の更新は、”水・土のどちらかに不定期”ということでお願いいたします。


安定しない更新が続くかもしれませんが、これからもよろしくお願い致します…


Dy02-SK

『■■■■■■■!!■■■■■■!!!!』


 光り輝く聖鎖に縛られた魔神の魂片は、理解不能な奇声を上げ、禍々しい泥のような瘴気を撒き散らして暴れていた。

 瘴気は腐りきった生ごみような激臭を放ち、吸い込むだけで吐き気を催す。しかも触れれば魔力の制御が乱され、魔力腺が切られているのか皮膚がピリピリも痛んでいる。


 不快な奇声と悪臭の精神攻撃のみならず、直接的にも魔力制御を乱してくる。

 あらゆる手段でこちらの集中を乱し暴れまわる魂片を、私が抑えていられる時間は長くないだろう。


(お母さんは、こんなのを体の中に封じ込めてたの…!?)


 欠片でさえここまでの脅威である神の魂に、私は恐れ慄いていた。


『”聖なる神よ。大いなる光の神よ。我が切々たる求めに応え、闇を討つ清浄の力を与え給え。”』


 吹き荒ぶの瘴気の嵐の中で、澄んだ詠唱が響き渡る。

 それは魔神の魂片を囲む正三角形と、その頂点に位置する三つの魔法陣を描き出した。


『”祓除(ばつじょ)()(じゃ)を滅する威女神(いめがみ)の加護なり。

拭浄(ふくじょう)。其はあらゆる魔を打ち払いし聖光の息吹なり。

封絶(ほうぜつ)。其は悪すら包み込む慈悲の御手(みて)なり。”』


 描かれた魔法陣は互いに繋がり、天まで上る巨大な結界が築いた。

 それは魂片から噴き出す瘴気を遮断し、聖鎖を握る私にようやく新鮮な空気が戻って来る。


『”現世(うつつよ)に跋扈せしめる魑魅魍魎を、天中の幽獄へ招かん。いざここに顕現せよ!神獄へ続く門扉(スレイトレイト)!”』


 声高に唱えられた魔法名とともに、結界内部から凄まじい光が噴き上がる。

 魂片の奇声は苦痛に悶える悲鳴へと変わり、噴き出す瘴気は光に押し流されてやがては浄化されていく。


 明らかに手ごたえがあるように見える。だが光に揉まれながらも、魂片は未だ鎖と結界から抜け出そうと力強くもがいていた。


『…小片とは言え、やはり”神の魂”となると容易ではありませんね。』

「だっ、大丈夫なんですかっ!?」

『全力は尽くしますが……一分で封印を終えるのは不可能です。』

「つまり……封印自体は出来ると?」

『この”奇跡”が発動した時点で、封印は確定した結末です。しかし”門”の向こうへ送るには、抜けられる程度まで清めなければなりません。彼の魂は呪いと憎悪に染まりきっています。浄化し終える頃には、シオン様の魔力が底をついているかもしれません…』

「じゃあ、私はもう縛るのをやめて、アレを攻撃した方が良いですか!?」

『はい。貴女様が浄化を肩代わりすればするだけ、シオン様の負担は減ります。どうか、彼のために力を貸してくださいませ。』

「そういう、ことならっ!」


(攻撃魔法は散々練習してきた。今こそ全力をぶつける時!)


 聖鎖を解くと魂片は飛び回り、結界を体当たりで破ろうとし始めた。しかし光り輝く奇跡の障壁には、一切の揺るぎが無い。

 私は手をかざし、練り上げた魔力で新たに魔法を紡ぐ。


「”聖火よ、ここに。それは聖山の空を駆ける光龍(こうりゅう)(ほむら)。我が意に従い、敵を焼き尽くせ!熾天(アクルォト=)烈火(エリフレア)!!”」


 結界内に黄金の炎が満ちる。

 魂片の悲鳴は一層痛々しい物へと変わるが、この魔法だけでは”浄化”とやらを終わらせることはできないようだ。


「”炎よ、闇よ。それは星の光。命散らして最後に輝く須臾の煌めき。その烈威(れつい)を以って尽滅(じんめつ)せよ!超新星(エイヴォン)!!”」


 内部で起きた爆発が、結界に干渉して凄まじい音と光が発生する。だが、これでもまだ終わらない。


「”烈日の(アクルォト=)怒り(エニモープ)!!”」

「”斬裂暴風域(デトームリア)!!”」

「”極寒が齎す氷嵐(ミェイハルフィン)!!!”」


 …

 ……

 ………


 何発の特級魔法を使ったのか、もう覚えていない。

 それでも思いつく限りの魔法を打ち込みつづけ、ようやく結界の中の様子が変わった。


『■■…■■………■■■■…』

「はぁ…はぁっ……ど、どうだ…?」

『……どうやら、彼の魂も力尽きたようですね。』


 散々噴き出していた瘴気は鳴りを潜め、奇声にも力が無い。魂片は空中で力なく浮遊していた。


 その瞬間、魔法陣の中央に”門”が開く。

 いくつもの天鎖がのび、抵抗する力を失った魂片を絡め取って、ゆっくりと門の中へ引きずりおろしていく。


 やがて門は閉ざされ、結界と魔法陣も消えた。焼け焦げ、抉れた森に静けさだけが戻ってくる。


「おっ…終わった……」


 体から力が抜けて膝をつく。

 大量の大魔法を使ったせいで魔力は残り少なく、傷ついた魔力腺の痛みが全身を駆け巡っていた。


『シオン様、魔神の魂の欠片は天上の檻に封印されました。』

『……ようやく、終わったか…帰れ、ノイ。1秒でも早く。これ以上、ボクに魔力を使わせるな。』

『承知いたしました。』


 振り返ると、女性の形をとっていた煙は静かに霧散し、シオンの姿も薄まって消えかけていた。


『契約を、する。手を出せ。』


 彼の絞り出すような声にお母さんの最後が重なる。

 反射的に差し出した手を、シオンは乱暴につかんだ。


『我、英霊を従え、邪に抗う者なり。

軌跡を共にし、その旅路に勝利の栄光を齎さん。

終点にて彼の者を戦列に加え、共に戦えり。

其との約定の下契約せん。』


 つかまれた右手から、光があふれる。その光景は、やはりアルとディニアさんが契約した時とほとんど同じだった。

 光が収まると、手の甲には”火に包まれた剣”の紋章が刻まれていた。同時に、残っていた魔力が一気に引きずり取られる。


「ぐぁっ…!?」

『……クソッ、まだダメか。ミオ、ボクは寝る。詳しい説明は次に起きた時にしてやる。祝福に関しては必要になったらだ…じゃあな。』

「えっ、ちょ、待ってよ…!」


 呼び止める声は虚しく荒野に消え―――そばにはもう、誰も残って居なかった。

あとがき


母は死に、従者も死に、新たに得た仲間も沈黙。主人公の心には、ぽっかりと大きな穴が開いてしまいました。

その隙間を埋められるのは…離れていった彼らの次に近しい人たちだけです。


次回、絶望に負けるな、主人公…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ