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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
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第40話 成長の証

第1章 永遠と須臾の煌めき

第3幕 桑狐蓬矢

第40話 成長の証

「ミオお姉ちゃんもぉ、一緒に遊ぶぅ?」

「あ!じゃあ聖騎士ごっこしよう!」

「ジャック、聖騎士ごっこは昨日やったばっかでしょ?」

「わたしはおねーさんと一緒なら何でも…」


 何気なくリリーが口にすると、いいことを思いついたとばかりにジャックが私の手を引く。


「じゃあ一つ目の案は聖騎士ごっこ?で、ティミー君は他には何かやりたいことがあるの?」

「ボクは、かくれんぼ。」

「リリーちゃんは?」

「私はぁ、かくれんぼがいいなぁ。」

「ええー!?でもさ、姉ちゃんすっごく強いんでしょ?見てみたいじゃん!」

「う~ん…」


 ジャック君の言い分は一理あるだろうが、乗り気でない他の二人には角が立つ。ここは私が何か考えるのが良いか…?


「それなら…魔法、見てみる?」

「まほー?」「魔法…!」「お姉ちゃん、魔法使えるんだぁ。」「すごーい!」


 複雑な魔術陣とかよりも一目見てわかるものが良いだろうし…あ、そういえば魔力の扱いの基礎を教わっていた頃にお母さんが見せてくれたプラネタリウムもどき、すっごく綺麗だったな…


「この魔法は暗い所の方が綺麗だから、まずはここを夜にするね……”静遠(クラッド=)の夕境(インカーボン)”。」


 最初に使うのは闇魔法。

 私は指先から魔力を迸らせ、空き地一帯を囲むように円形の結界を張る。すると結界内に入る陽光が制限され、満月の明かりに照らされる夜のような雰囲気を醸し出す。


「夜になった!?」「すごぉ…」「わぁ…」「これ、おねーさんがやってるの?」

「まだまだ、本番はここからだよ……”星螺現想(ルクレプス)”。」


 魔力は圧縮されると魔力光を放つが、その圧縮率で光の”色”が変わる。低い方から赤、橙、黄、緑、深緑、青、紫、虹、白という風に。

 この”星螺現想”という魔法は、その圧縮率による魔力光の変化を利用して魔力の扱いを鍛えるための、練習用の魔法だ。星を模した魔力を宙に浮かべ、一つ一つ繊細な加減で夜のキャンバスを彩る。


 最初の内は一つの星を作るのに精いっぱいで,、色のことなど考える余裕は無い。何度も何度も繰り返して体に覚えさせることで、だんだんと数を増やしていくのだ。

 お母さんが最初に見せてくれたときは数を数える気にもならないほど、それこそ幾千もの星が瞬いていた。私はそれに少しでも近づきたくて、毎日夢中で練習して。おかげで今ではこんな風に…


「すっげー…!」「わぁ…!」「これ、全部魔法なの…?」「おねーさん、すごすぎ…」


 お母さんのものにも見劣りしない、山奥で見る夏の天の川のように荘厳で美しい星空が、四人を魅了していた。


「ふぅ……!」


 少し見栄を張り過ぎたために中々制御がつらいが、それもまた一興。子供たちのこの驚きと興奮が入り混じった顔を見られただけでその甲斐があったと思える。



***



 …どれだけそうしていただろうか、久々に制御力の限界ギリギリを攻めたので、私の修業スイッチが入ってしまい時間は彼方に忘れ去られていた。


「…そろそろ終わるよ。」


 魔力光は魔力爆発の前兆。しかし完璧に制御されたそれはゆっくりと霧散し、そのような暴発を起こすことなく全ての魔法が解除される。

 夜の結界が頂点から消えていくと、茜色に染まる空が顔を見せた。やがてすべての結界が消えて見えたのは、10人ほどの人だかりであった。


「あれぇ?みんなどうしたのぉ?」

「リリー!それにみんな、ここにいたのか!って、ミオ!?」


 たむろしていた人たちの中から一人、見覚えのある青年の姿が現れる。


「ルートさん?どうしたんですかそんなに驚いて。」

「いや、子供たちは居ないし村の中に黒くてデカい謎の何かがあるって騒いでたから、父さんが様子を見て来いって…」

「そうだぞー、心配してたんだからなー。」「まぁ、何事も無くて安心したよ。」「しっかし今のは何だったんだ?」


 周囲の村人たちもルートの言葉に口をそろえて声をかける。


「あぁ、さっきのは私の魔法です。子供たちに星空を見せてたんですよ。」

「???…いや、まだ昼間だろ?」

「そういう魔法があるんです。」

「なるほどな…?あぁそうだ、そろそろ祭りの準備も終わるしみんな広場の方に来てくれるか?」


 どうやらルート君は未知に対するスルースキルを手に入れたようで、こちらの説明をそういうものとして受け入れるようになったらしい。毎回驚いてくれるのはそれはそれで面白かったので少し名残惜しいような、そうでもないような。


「分かりました。リリーちゃんたちも一緒に行く?」

「はぁい」「まつりだー!」「お祭り…!」「一緒」


 相変わらずのんびりなリリーちゃん、喚起に飛び跳ねるジャック君、静かに興奮を募らせるティミー君に、私の腕に抱き着くエレンちゃん。

 三者三様の子供たちと集まっていた大人たちとともに、歩き出した。


 広場に着くとまず目に入るのは、奇麗に組み上げられたキャンプファイアーと、その上で回しながら焼かれるボアの巨大な後ろ足だ。2~3人の男たちが交代で回している。

 その周りではおばちゃんたちが具材を切っては即席の竈で火にかけられる大きな寸胴鍋に投入していた。キャンプファイアーの奥では私のそばにいたのとは別のグループの子供たちが、ボアの骨で遊んでいる。

 日が森に沈み、間もなく日没となるこの時間。煌々と燃える火明かりが幻想的な光景を生み出していた。


「来たなーちびっ子ども!お、客人も一緒だったか!いい所に来たな!そろそろ外側なら食えるぞー!」

「やったー!肉ー!」「私も食べるぅ」「あ、おかーさん!スープできた?」


 レザフさんの声がかかるやいなや、3人は各々好きな方へと散ってしまった。しかしエレンだけは私の腕から離れようとしない。


「おねーさんもお肉食べる?」

「そうだね。私はレザフさんに貰いに行こうかな。エレンちゃんはどうする?」

「私はおねーさんと一緒が良い。」


 おやおやおや、何でしょうかこのかわいい生物は…と、そう言えばやけにヴァルが静かだな?

 気になって籠の中を覗いてみればやはりというかなんというか、中の毛布にくるまって静かに寝息を立てていた。


「ばる、寝てる。」

「気持ちよさそうだし、とりあえずそっとしておこっか。」

「ん。行こ、おねーさん。」


 籠を背負いなおした私を見て、エレンちゃんが手を引く。

 何を考えているかはいまいち読めないところがあるが、私に懐いてくれていることだけは分かりやすい。前世の妹とはまた違った距離感だが、新たに妹ができたような気分だ。

あとがき


今回はほのぼの日常回だったので、特に話すようなこともないのであとがきで話すことに困りますねぇ…

あ、そういえば今回で40話じゃないですか!おぉーこれはおめでたい。いやぁなんだか最近はこの『獣剣』がいかに自分史上どれだけ長続きしているかを実感する出来事が多いですねぇ。

しかもこの話を含めてちょうど10万文字を超えました!ということは一話一話の平均文字数も2500文字と、設定した基準を満たしているではないですか!素晴らしい!ここまで計画通りに事が進んだのは小説のみならず人生全体でも中々無かった経験かもしれません。えらいぞ、私!


次回、祭りを終えて一夜明けたところから始まります!



~蛇足~


今回焦点があてられたのは”魔力の圧縮率による魔力光の色の変化”でしたね。ではまず圧縮に関する魔力の性質を説明しましょう。


魔力は圧縮されると、ある時点から光を放つようになります。これが魔力光です。

その色は初めは赤、そこから橙、黄、緑、深緑、青、紫、虹、白と変化していくと説明しました。紫までは予想がついた方も居るかもしれませんが、なぜその後が虹、白なのか。


それは魔力があまりにも圧縮されたため、魔力爆発が起きないだけで不安定な状態である(一塊の中で圧縮率にムラが出る)から虹色になるのです。

そこからさらに圧縮されるともうムラが出る余裕すらなくなるので、とにかく明るく激しく光るんですね。


あと、魔力光の強さは基本的にその一塊に込められた魔力量によって決まる(大量の魔力が低い圧縮率で魔力光を放つと、強く光る赤い魔力光となる)んですよ。


あぁ、あとこの圧縮されると魔力爆発が起きるという設定のおかげで、実はこの世界の宇宙ではブラックホールが極超新星を軽々と超えるとんでもない大爆発を起こしたりするんですね。


~蛇足 おわり~

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