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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
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第39話 この村にいると、ぽかぽかする。

第1章 永遠と須臾の煌めき

第3幕 桑狐蓬矢

第39話 この村にいると、ぽかぽかする。


2025/10/04

 細部各所の表現を変更

 声を上げた男たちは各自で丸太や板材、太めのロープなどを持ち寄り、皆一斉にラージボアを動かそうと群がった。


「広場まで運ぶぞ!」

「いーやダメだ!重すぎて動かん!」

ころ(・・)にも載せられねぇんじゃどうしたもんか…」

「それにしてもデカいボアだなぁ!こんなにデカいのは初めて見たぞ。」

「村長が現役だった頃に狩人総動員で何とか仕留めた奴ぁ見たことがあったが、これはそれよりデカいな…」


 持ってきた材料でころ(・・)として並べられた丸太に乗せようとしてみるが、全くもってビクともしないラージボアを見て口々に感嘆の声を上げる。

 何せあの露天掘り現場で使われるような黄色い巨大ダンプ並みの猪だ。引いた感触からして5t程度はあるだろう。それを身体強化も無しに完全な人力で動かそうというのは、いくら人手があったとしても難しい話だ。


「あの、運ぶのは私がやりますよ?」

「いやぁこんな立派な土産ぇ貰ったんだ、これ以上あんたを働かせるわけにゃあいかんよ。」

「そうは言うが村長、ころにも乗らねぇんじゃあさすがにどうしようもねぇよ。あんな重いもん俺たちにゃ運べねぇ。」

「ほら、やっぱり私がやりますって。」


 どうやら私に強い恩を感じている様子のレザフさんは眉間にしわを寄せて渋っているが、村人たちでは運べないのだから諦めてもらう他ない。


「う~ん…しゃあないか。じゃあ広場までだけ頼んでもいいか?」

「お任せください!」

「不甲斐なくてすまねぇな。」

「そんなことはありませんよ。私にしか出来ないことを頼むのに遠慮はいりません。まぁ、断ることはあるかもしれませんけどね。」

「そう言ってもらえるとありがてぇよ……じゃあお前らは先ぃ広場行って用意しとけ!客人は俺が案内する!」

「「「おうよ!」」」


 村人たちの顔は明るく、レザフさんを中心に強い連帯感がある。誰かが助けを求めれば人が集まり過ぎてしまうような、そんなやさしさがあふれる村に見える。


「……良い村ですね。」

「だろ?親父は昔、村の狩人のまとめ役をしてたんだ。だからみんなからの信頼が厚くて、頼りになる村長なんだぜ。」

「やめろルート。あんまりそういうことを言うもんじゃない。」

「ふふっ…よし、こちらの用意は出来ましたよ。」

「それじゃあ…っておいルート、お前何ついて来ようとしてやがる。ぼーっとしてねぇで家から解体用の鉈ぁ持って来い。」

「…分ぁったよ。」


 ルート青年は不満げな様子をあらわにしつつも背を向けて村の奥の方へと小走りで向って行った。


「ったく何やってんだか…んじゃぁ行くか。」

「はい」



***



 ラージボアは何分もかからず広場へと搬入され、それを見たレザフさんからは―――


「あんたのその小っこい上に細っちい体のどこにんな怪力があるんだか……あ、悪く言うつもりで言ったんじゃあねぇぜ。ただ世の中不思議なこともあるもんだなぁってよ。」


 ―――とのお言葉と感謝をいただいた。やはり感謝されるのは気持ちが良いことだ。あんないい笑顔でお礼を言われたら、また何かしてあげたくなってしまうではないか。


 会話が終わると同時にレザフさんの音頭で刃物を手に待ち構えていた男たちが肉に群がり解体が始まったが、あまりにも大きいため熟練の狩人たちでさえ難儀していた。

 それを見て声をかけたのだが、今度こそは私に仕事を持たせるわけにはいかんと断固として拒否されてしまった。


 そうなると手持無沙汰な私は、ヴァルを抱えて景色を眺めながら村を回るぐらいしかやることが無い。


「キュっ!」

「そう言えばヴァル、出かけてから静かじゃん。いつもの落ち着きのなさはどうしたのさ。」

「キュっ…キュっ…!」


 彼の首はせわしなく左右し、ゆっくりと流れていく景色を目に収めようと必死なようだ。いつもなら気になったものに突撃して行くが、今はその余裕すらないらしい。


「これは、お母さんの作戦が功を奏したk、わひゃあっ!?」


 感心していると、突然誰かに尻尾を撫でられ心臓が口から飛び出るかと思った。

 思わず後ろを振り向けば、そこにいたのはストロベリーブロンドの髪に、水色の瞳が特徴的な10歳ぐらいの小さな女の子だった。


「おねーちゃん、しっぽ生えてる…お耳も?」

「え、えーと…うん。本物の尻尾とお耳だよ。」

「それ、なーに?」

「この子はヴァル。私の家族だよ。」

「キュァ、キュウゥ!」

「ばる…ルートお兄ちゃん家のジョンみたいなの?」

「え?え~っと、ジョンは犬の名前?」

「そうだよ。ジョンはね、おっきくてもふもふなの。お姉ちゃんのしっぽみたい。」

「そ、そうなんだ…」


 私が注意をしないからか途中から両手で尻尾を触られ、遂には顔をうずめられてしまった。あまり他人に触られた経験が無いので些細な刺激で背筋がゾワゾワする。叫びだしたくなるのを根性で抑えつけている状態だ。

 そんな中、会話の糸口も見当たらずどうしたものかと考えていると、家の陰から3人の子供が姿を現した。


「あー!」

「エレンみつけた!」

「あれぇ?お姉さんだれぇ?」

「キュっ!キュっ!」


 三者三様、突然現れた騒がしい三人組につられてヴァルも興奮しているらしい。万が一子供を噛んではマズいと思い、ヴァルは背の籠に戻しておく。


「キュッ!!キュゥッ!」


 抗議の声が飛んでくる。戻して悪いが(安全を守るのは年長者の)仕事なんでな。


「私はミオだよ。森の奥から来たんだ。」

「えぇ?森は入っちゃダメって大人がいってたよぉ?」

「そうだよ!森にはオオカミがいて、オレたちを食べちゃうんだ!」


 間延びする口調で指摘するのはたれ目の可愛らしい、明るい茶髪の女の子。続いたのは赤毛の男の子だった。


「私はすっごく強いから、オオカミが襲ってきても倒せちゃうんだよ。村に来るときも、おっきな猪を仕留めて来たんだよ。」

「そうなんだぁ」

「お姉さんつよいのー!?」

「お姉さん、あのね…さっき手にもってたのって、なぁに?」

「あの子はヴァルって言って、私の家族なんだけどね。まだ小さいけど暴れん坊で、君たちを噛んじゃうかもしれないから籠に戻したんだよ。」

「さわっちゃ…ダメ?」

「今はダメかなぁ…噛まれたら痛いよ?ヴァルは私にも容赦しないから。」

「そっかぁ…」


 ヴァルを気にする最後の一人は、紫がかった黒髪の男の子だ。あまり気が強くないようで、チラチラとこちらを窺っている。


「あれ?エレンがなでてるのっておねえさんのしっぽなの?」

「ホントだぁ、耳も生えてるよぉ。」

「そうなんだよねぇ…あ、そうだ、この子がエレンなのは分かったから、他の3人の名前を聞いてもいい?」

「オレはジャック!エレンよりは下だけど、4人の中では2番目にお兄さんなんだ!」

「みんな同い年だよぉ?もしかして、ジャックの方が月が早いからってことぉ?あ、私はリリーだよぉ。」

「ボクはティミーだよ。」


 エレン、ジャック、リリー、ティミー。前世の妹は年子だったので、私は小さな子供の相手をした経験がない……さて、どうしたものか。

あとがき


おや?ルート君の様子が…

そんなことはさておき、今回は新キャラが多いですねぇ!

マイペースでモフモフ好きなエレンちゃんに、元気で勢いのあるジャック君。

語尾がのびるお姉さん気質のリリーちゃんと、内気でヴァルが気になるティミー君。

みんな優しい村の人たちに育てられたからか、素直ないい子たちです。


次回、主人公が元気な子供たちに振り回されちゃったりして…

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