第31話 怪獣大決戦
第1章 永遠と須臾の煌めき
第2幕 千載三遇
第31話 怪獣大決戦
2025/09/04
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2025/09/15
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2025/10/21
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「―――ん…?」
「ミオも感じたか。」
アルたちが旅立ち、また三人で暮らすようになってからしばらく。燦々と日が照り付ける夏の昼前に、森の奥の方からくる強烈な魔力波を感じ取った。
魔力波とは、大量の魔力を消費する魔法などを使った際に放たれる余波のことだ。つまり、森の奥で大規模な魔法による何かが起こっている。
「今のは…?」
「Bランク以上の魔物同士が派手に戦っているんだろうな。しかしここまで大きな波動は久しぶりだな…ミオ、様子を見てきなさい。」
「え?…いや、つまり危ないってことでしょ?それなのに行かせるの?何で?」
話している間にも断続的にやってくる魔力波。その強さからも危険度は推し量れようというもの。これだけの距離がありながら腹の底に響くようであり、発生源の魔法は上級―――いや、特級も十分あり得る。
そんな魔法がポンポン撃たれている場所に行けと?嫌だが?私はまだ死にたくないぞ?
「このぐらい逃げるだけならお前でもなんとかなる。それに家の結界は相手が何であろうと万全だ。何も争っている二匹をまとめて仕留めて来いと言ってるんじゃない。ただ見てくるだけでいいんだ。そこから何か新しい発見があるかもしれないだろう?」
「うぅ~ん……」
「アルたちが居なくなってから成長の実感が湧かないって、この前話していたじゃないか。機会は待ってくれない。自分からつかみにいかなければ、強さは手に入らないぞ。」
「ぐ……うぅ、分かったよぉ……」
ここまで強引に推してくるお母さんも珍しい。
つまりはそれだけ今回の件が私のためになるということなんだろうが、それでも目的地は超が付くほどの危険地帯だ。気乗りはしない。
私は渋々というふうにのそのそとローブを羽織り、お母さんが”虚界門”の中で死蔵していたものを譲り受けた愛刀”雲荒雪宗”を腰に差し、成長に合わせて作り直してもらったなんちゃってコンバットブーツも履く。
「…じゃあ、行ってきます……」
「行ってらっしゃい。くれぐれも気を付けてなー」
本から目を離すことすらせずに見送りを済ませるその姿に少しだけ薄情さを感じてしまった。
しかし最初の頃は過保護なくらいだったお母さんが、ここまで私を放任するようになったことには自分の成長も感じる。
(慢心はダメだけど、実力に見合った自信くらいは持っててもいい…のかな?)
***
近付くたびに強くなっていく魔力波。その頻度は収まるどころか徐々に増しており、戦闘が激化していく様子が感じ取れる。ときおり聞こえる雄たけびとともに地面も小刻みに揺れており、まさに天変地異と言った規模感だ。
「そろそろ見えるかな…うぅ、一体何が争ってるんだか……」
魔力で紡いだ糸を30mほど上にある枝へ巻き付け、糸の端に作った輪に足を載せて糸を縮めることで即席のエレベーターのようにして昇る。
水臨樹は巨大化した杉のような外見をしているため、一番下の枝にさえ登れば後は上に続く枝を階段のようにして昇っていけばいい。一段一段はどんなに近くても3mほど離れてはいるが、ちょっと強めに身体強化をすればこの程度は問題ない。
しばらくして頂上付近では戦いの余波なのだろうか、吹き荒れる風に木々が大きく揺れている。振り落とされないよう慎重に顔をのぞかせると、私はそこに広がっていた光景に息を飲んだ。
「キシャアアアアアァァァァッッ!!!!」
「クルァアアアアアァァアアァァァッッ!!!!」
かつてミラ師匠が仕留めたワイバーンとは比べ物にならないほど巨大な”天を舞う深紅のドラゴン”と、水臨樹をいくつも繋げたのような太さと長さを持つ”地を這う暗緑色の大蛇”が、森の木々をなぎ倒しながら大立ち回りを繰り広げていたのだ。
ドラゴンがひときわ大きく鳴くと、広げた翼の周りに生み出された強い閃光を放つ火球が放たれる。
それを見た大蛇は地面から自分の分身のように動く、まるで触手のような土塊をいくつも生み出し、ドラゴンへ向けて放った。
それらが接触した瞬間、両者の空間を丸ごと埋めるほどの連鎖的な大爆発が起き、強烈な魔力波と衝撃波が私を襲う。
「あれは…紅龍!?しかも相手は龍喰大蛇!?どっちもAランクオーバーの大災害じゃん!」
この森にあんな恐ろしい魔物が居たなんて驚きだ。しかもそれが高々1km程度向こうで暴れまわっていることには恐怖を禁じ得ない。
それでも今は、そんなことよりも戦闘の迫力に目を奪われていた。
今度は自分のターンだとばかりに仕掛ける大蛇。先ほどの土塊を突撃させ、遅れて自身もドラゴンへ向けて飛び出した。
対するドラゴンは土塊こそ空中機動で避けたのだが、狙いすました本体の一撃をもろにくらってしまった。首元に食らいつかれたドラゴンは、蛇の重さも加わりふらふらと地に向かって落ちていく。
”龍喰大蛇”は、その名の通り龍、つまりドラゴンを好んで食す蛇の魔物だ。
その鱗はドラゴンの持つ龍鱗と比べても遜色ない強度を持ち、牙から流し込まれる大量の神経毒は非常に致命的である。
しかしそこは気高き空の覇者であるドラゴン。高度を落としつつも口内に強烈な光を溜めていく。あれこそが龍だけが持つことを許された奥義―――”龍ノ光”だ。
『裏切り者の末裔風情が我を堕とそうとは、何たる傲慢!この上無い侮蔑であるぞッ!!』
頭の中に直接声が響いたような気がしたその時、その光が視界に花を咲かせる。火花を散らしながら金属を切断するときのような甲高い音とともに、レーザーのような一直線の火炎がドラグイーターの鱗に直撃した。
「ギシャアアッッ!!?」
ドラグイーターの方もさすがにたまったものではないようで、ドラゴンから口を離して地面へと降りて行った。
『逃がさんッ!』
再び高まる魔力。先ほどとは違ってその充填時間は長い。光はどんどんと魔力を飲み込み、それが発する魔力は明らかに大蛇を殺すにとどまらない規模に…
「やっっば!!!?」
『お前たちが失った、この至高なる光で消し飛ぶがいいッッ!!!!!』
あとがき
ド、ラ、ゴ、ンゥ!!出ましたよ!ついに!私の作品にも!
ファンタジー生態系の頂点に君臨する魔法生物の王者!圧倒的な空の覇者です!
この世界における成体となったドラゴンは絶対的な強者です。それこそ魔女様やリュドミラさんのような超越者でなければ相手にもなりません。
対するドラグイーターは紅龍さんの発言にもあるように、”同族食らいの罪を犯し翼、手足、龍玉、そして知性を奪われた元ドラゴンの末裔”です。変種であるため絶対数は少ないですが、その一体一体が持つ力はドラゴンにも匹敵し、時に凌駕します。
と、言うわけで…
次回、大決戦の勝敗やいかに…!




