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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
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第30話 烏兎怱怱

第1章 永遠と須臾の煌めき

第2幕 千載三遇

第30話 烏兎怱怱

 アルがお母さんの助言を得てちょっとした発明をしたり。

 相いれない見解の違いでアルと取っ組み合いの大げんかをしたり。

 ミラ師匠が一人でネブラ山脈のふもとまで行ったっきり全然帰らなかったので、お母さんをはじめ3人で飯ものどを通らぬような日があったり。


 そんないくつかの波乱がありつつも季節は巡り、アルたちが来てから三度目の春が来た。


 アルが契約をした後からお互いを高めあってきた私たちは、その相乗効果によりこの年齢ではありえないほどの成長を果たした。

 アルは特級魔術師にして中級魔法師になり、私は上級魔法魔術師と月影流の免許皆伝を得た。


 しかしそんな生活も近いうちに終わりを迎えることになる。当初の予定通り、二人がそろそろイルムに戻るのだ。その前の最後の思い出作りとして、私とアルで狩りに出ていた。


「アル!そっち行った!」

「任せてっ、”水刃(レタウ=エダルブ)”」


 あいにくの林内雨で視界が良くない中、獲物に定めた5匹のアッシュウルフのうち3匹は引き付けられたものの、2匹が両サイド嘉新大きく弧を描いて後衛のアルの方へと抜けていった。

 それを魔法で迎え撃つアル。2匹に対し2枚ずつ計4枚の水刃がアッシュウルフに迫った。


「キャウンッ」

「ウォンッ!グルルルルル…!」


 左の1匹に避けられたが、右の方には1枚が右前足にヒットし切断、斬られたアッシュウルフはその場でもがいている。


(月影流”川面月(かわもづき)”!)


 その太刀筋は流れる川のように素早く流麗。

 なめらかな滑り出しで1匹目の首を落とし、続けて大きく踏み込むと同時に2匹目の胴を両断する。連撃には都合の悪い位置にいた3匹目は致命傷とはいかず、妥協して左前脚を落とした。


「穿て、”水槍(レタウ=エクナール)”!」


 機動力を奪われた2匹は、すぐさまアルが頭に大穴を開けることで無力化する。手の空いた私はアルに寄り最後のアッシュウルフを警戒したが、そいつはすぐに背を向け森の中へ消えていった。


「…ふぅ。ケガは?」

「無いよ。」

「そりゃ良かった。それにしても、アッシュウルフかぁ…」

「しょうがないよ。狩ったんだから。」

「そりゃそうだけどさ…できればラージボアとかが良かったなあ……”虚界門(ディオヴェタゥ)”」


 アッシュウルフ。この森に生息する魔物にしては珍しい純肉食の植生をしている。しかしそのせいもあって肉は筋張っており臭みがあるため、おいしくいただくには下処理が少しだけ面倒だ。

 対してラージボアはうちの家ほどの大きさもある巨大なイノシシの魔物だ。その主食は木の実であり、地面に落ちた大量の水臨樹のタネをホイールローダーのようにすくい上げて食べる姿は圧巻の一言。その主食から察せるように肉質は柔らかく臭みも少ない。だから下処理の手間は省けるし、何よりうまいのが良い。


 狙った獲物が狩れなかったのは残念だが、狩った獲物を面倒だからなどという理由で捨てるのは私たちのポリシーに反する。

 不完全燃焼感は否めないが、食材を無駄にするわけにはいかないので、すぐに時間が止まった異空間へ繋がるゲートを呼び出しアッシュウルフたちを放り込んだ。



***



「二人と夕食を共にするのもこれで最後か。」

「何だよ姉様、今生の別れみたいに。別に夕食ぐらいまたどこかで食べられるだろ?」


 普段はめったにお酒を飲まないお母さんが、珍しく口に含んだワインを飲み込みしみじみと言う。

 二人の出発を明日に控えいつもよりも少しだけ静かな食卓を4人で囲むが、口に出されるとどうしても寂しさがこみあげてくる。


 この3年間にはいろんなことがあったが、ほとんどの時間をアルと一緒に過ごしていた。それこそ本物の兄妹のように。

 私は13歳で、彼は16歳。前世で言えばちょうど中学一年生と高校一年生の歳だ。…まぁ、中身は二人ともアラサーなのだが。


「…私も寂しいな。」

「それは僕も一緒です。でも、ミラ叔母様の言う通りでもあります。幸い僕はエルフですから、ミオが生きている間ならいつでも会えると思いますよ。」

「……うん。」

「そんな顔しないでくださいよ…こっちまで寂しくなっちゃうじゃないですか。」

「アル、一応言っとくけどここに残るのは無理だからな?お前は学院に通う準備をしなきゃならんし、あたしもそろそろ冒険者の生活に戻りたい。」

「分かってますよ。大丈夫です。その辺の割り切りぐらいできますから。ミオもそうでしょう?」

「ははっ…さすがに、できなかったらマズいよ。できる。」

「まぁ何にせよ、アルが立派な魔法魔術師になってくれて嬉しいよ。ライバルとしてミオの成長も手助けしてくれたしね。」


 結局、どんなに努力を重ねても彼には魔法や魔術では敵わなかった。その才能は本物だ。

 今ではディニアの封印も必要ないと言うが、制御が楽になるからと言って普段はそのままにしているらしい。そう言えば、イルムに戻ったら精霊魔法も練習したいとか言っていた。もしかしたら次に会うときには、もう使いこなしているかもしれない。


「強く、しなやかな芯を持ちなさい。折れないように時々肩の力は抜いてな。この先もずっと、いつまでも高みに向かって上り続けられるように祈っている。」

「はい…!」

「ミラもだぞ。」

「うっ、あ、あたしはほら…さすがにそろそろ頭打ちかなぁと…」

「この3年間お前はずっとそうだなぁ。まぁそれも仕方ない。ここまで登ってきた強者はより過酷な事態に直面しなければ、次のステージに足を踏み出せないということはままある。アルの付き添いが終わったら、またどこかの高ランクダンジョンなり高ランク魔境なりに行ってみなさい。何か新しい発見があるかもしれないからな。ただし慢心はするなよ?私たちでも死ぬときは死ぬんだ。準備は怠らず、心構えはいつも引き締めて進め。」

「はい…はい…金言、しかと心に刻ませていただきます……」


 静かだと思っていた食卓には、いつの間にか会話と笑顔の花が咲いていた。

 ちょっとだけ豪華な料理と、3年間の思い出話。今日の夕飯はいつもより少しだけ、長引くかもしれない。

~ちょこっと用語解説~

《魔法魔術師》:

魔術師(魔術が使える)であり、魔法師(魔法が使える)でもある者の称号。ミオは上級術師でありながら上級魔法師でもあるため、上級魔法魔術師となる。



あとがき


これにて第二幕”千載三遇”のうち、二遇の部分が終わりを迎えました。今後もアルやミラとの関係が、ミオの心を支えていくことでしょう。

おや、まだ最後の一遇が残っていますね…?

そうです。まだ登場していない新キャラクターがミオの元へとやってきます!

と、言うわけで…


次回、森に波乱が訪れる予感…!



~蛇足~


この作品も今回で30話、そしてそろそろ連載開始から3か月。つまり四半期になります。

そして、この前ふと気付いたのですが、なんといつの間やら1000PVを突破いたしました!拍手!

いやぁ~初投稿の作品ということもありこれがどれくらいの実績になるのかは分かりませんが、これだけ私の作品を読んでもらえていると思うと、なんだか嬉しくなってしまいます…!


今後もこの趣味全開な小説を楽しんでいただければ幸いです。

…評価やコメントなどをもらえたら、もっと嬉しかったり…?それはさすがに高望みかもしれませんね…

ともかく!私としてもどこまで続くかはまだまだ分かりませんが、精いっぱい面白くなるよう頑張って参りますので、どうか応援のほどよろしくお願いします!


~蛇足 おわり~

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