表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
25/66

第25話 大精霊の泉

第1章 永遠と須臾の煌めき

第2幕 千載三遇

第25話 大精霊の泉

「まさか、3泊もすることになるなんて…」

「帰りも3泊だから6泊7日の大遠征だね。」

「フカフカなベッドが恋しいです…」


 初日から疲労困憊であったアルは、私に”光福(ヴォルグ=セルブ)”(体力回復魔法)をかけられながら、魔法への渇望と根性で何とか泉までたどり着いていた。


「愚痴もそろそろここまでだ。ほら、目的地に着いたぞ。」


 一本一本が前世の世界記録を超えるような巨樹が集まるこの森。その中でも異彩を放つほどの大きさを誇る超絶巨大な水臨樹があった。

 そもそも水臨樹とは、肥沃な大地と大量の水。それから魔力を糧にしてどこまでも成長する魔樹の一種だ。現にここは、大地の血管とでも言うべき水脈とその流れに乗って魔力が流れる地脈もあり、その両方を吸い上げて形成された森である。


 そして、そんな森でも規格外な大きさを誇るこの木を私たちは”霊樹”と名付けた。ここまで大きく成長したのは、この木がちょうど2本の地脈が交差する巨大な地底湖の直上に位置しているからである。

 毎秒何tという量の水が地下から汲み上げられ、高さ200mクラスのこの木の隅々まで行き渡っている。それと同時に、木全体に流れる魔力が生物の身体強化のような機能を果たし、この異常なまでの大きさからくる重量を支えているのだ。

 …実はこれをも超える大きさの木である”世界樹”も存在するというのだから、この世界のスケール感は前世よりも色々とタガが外れているらしい。


 森の中に突如現れる広大な草原と、中央にそびえ立つ霊樹。

 その根元には、長い年月をかけて濾過された地底湖の水が、霊樹に汲み上げられる途中でこぼれ出して泉を作っている。かなりの深さがありそうな泉の底がはっきり見えるほどの透明度であり、魔力に惹かれてやって来た精霊たちが周囲で淡い光を放ち、蛍のように舞っている。

 霊樹の葉に行きついた魔力はそのあまりの濃度に一部が葉の表面で結晶化しており、それが陽光を受けてキラキラと反射する様はこの光景の神秘性に拍車をかけていた。


「綺麗です…」


 アルは「ほぅ…」と息を吐き出す。その反応は初めてこの場所に来たときの私とミラ師匠そっくりであった。


「何度見ても息を飲むような美しさだよね。」

「自然が作り出した究極の美ってやつだな。」

「本当に、凄い場所です。それに、ミオさんの言っていた通りびっくりするぐらい魔力が濃い。」

「せっかくだし、泉に願い事でもしてみれば?」

「あ、そうですね!……泉の神様、どうか僕も、魔法が使えるようになりますように…!」


 指を組み合わせて固く目を瞑って祈る彼の姿には、切実な思いがにじみ出ている。

 前世には『金の斧』をはじめ、願いを叶えてくれる泉の伝承は数多くあった。もしかしたらこの泉が応えてくれるかもしれない。


 その答えの訪れは唐突だった。今まで揺れさえ無かった泉の水面に一つの波紋が走り、辺りには慈しみに満ちた声が響き渡る。


『神ではありませんが、あなたの願いはわたくしが叶えてあげましょう。』

「っ!?」

「え、だっ誰!?」

「…これは、大精霊様でしたか。」

「大、精霊?」

「大精霊様!?」


 驚く私たちとは違い、静かに揺れる水面に対して軽く頭を下げる師匠の態度は到って冷静で、その正体もすでに看破しているようだった。


『あら、まだ姿は見せていないのに。よく分かったわね?』

「これでも”精霊に最も近い存在(ハイエルフ)”ですからね。それに、私の妹は”巫女姫(みこひめ)”ですし。」

『あぁ今代の!そうだったのね。あ、外に出るから少し下がってちょうだい。』


 私たちが縁から一歩下がると、そこまで波一つなかった水面が沸騰したように激しく沸き上がり、高い水飛沫を上げながら何かが飛びあがった。


『よいしょ!あ、自己紹介がまだだったわね。わたくしは水の大精霊”ディニア”。色々と問題があるから、真名は明かせないのだけれど許してくださいな。改めて、そこの悩めるエルフの願い、わたくしが叶えてあげる。』


 泉の中から現れたのは、体が澄んだコバルトブルーの水でできた美しい人魚の女性であった。周囲にはいくつもの水球や水滴、魚を象った水を浮かべ、秘められた魔力からは圧倒的な力の差を感じる。

 私はその魔力に対して、水平線に囲まれた静かに凪ぐ海のようなイメージがよぎった。しかしその物腰は柔らかく、にこにこと微笑む様子には一切の毒気が無い。最初のすべてを包み込むような優しい声と違い、今の彼女は天真爛漫なお嬢様のようだ。


「大精霊様が、どうして…」

『あなたから特別な気配を感じたから、かしら。今気づいたのだけれど、そっちのハイエルフの子だけじゃなくてあなたも巫女姫の血縁なのでしょう?』

「み、巫女姫?」

「代わりにあたしがお答えしますが、その通りです。彼はあたしの甥で、妹の子になります。失礼、名乗りが遅れました。あたしはリュドミラ・クロムウェルと申します。」

「あっアルフォンス・クロムウェルです!」

『やっぱりね…アルフォンス、わたくしと契約を交わしましょう。さすればあなたは、その身に眠る真の力を存分に発揮できるようになるわ!』

あとがき


結局アルの問題は解決にまで至りませんでしたね…

いえ、しかしその代わりと言っては何ですが、最近おろそかになりがちだった情景描写に気合が入っているはずです!いかがでしたでしょうか?


ここだけの話、実は最近ちょーっと”スランプ”の4文字が頭をよぎるようになりまして…急遽第二幕後半と第三幕のプロットを練り直しているところではあるのですが、なぜか集中し続けられる時間が減ってるんですよね…


とは言え!例の猫族少女と盗賊頭領の伏線を回収するところまでは必ず続きますのでご安心ください!それに今後も書くことに困ったらSideで順次伏線を追加していく予定ですので。

こうして回収しなければならない伏線を撒き続けることで書く理由を維持する…はっ、もしやこれが創作の永久機関…!?


次回、満を持してアルの問題が解決します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ