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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
19/38

第19話 新たな課題

「第一章 永遠と須臾の煌めき」

の中の「第二幕 千載三遇」

の中の「第19話 新たな課題」です。


2025/07/20

 細部各所の表現を変更

2025/09/14

 細部各所の表現を変更

「お母さーん、あーさでーすよー。」

「うっ……んん…?」

「あーさー。アルフォンス君に修行つけてあげるんじゃないんですかー?」

「あ~…そう、だなぁ……」

(相変わらず寝起きの悪い…)

「クロックがもう朝ごはん出来たって言ってたよー、早くしないとリュドミラさんに食べられちゃうよー。」

「それは、困る…なぁ……」

「昨日もお疲れだったんだしー、ちゃんと食べないとうまく魔法使えないんじゃないんですかー?」

「あー分かったー…」


 結局その後一時間ぐらい粘られ、案の定料理はリュドミラさんの胃の中に。

 クロックが間に合わせにいくつか作っていたのを二人で食べて、いつものティータイム。うちはこれが終わるまでがワンセットだ。

 リュドミラさんはいつの間にか出かけていた。たぶん狩りにでも行ったんだろうけど…さっき朝ごはん食べたばかりなのに。


 外へ出れば日は高く昇り、さわやかな風が肌を撫でる。

 相変わらず悲惨な庭は放置され、向かうのはいつもの玄関正面ではなく、事前に貼られていた結界で無事な反対側、北の庭だ。


「それじゃあ講義を…」

「えっとさ、その前にいい?アレ直さないの?」

「ミラにやらせている。言い出しっぺはアイツだ。後始末も当然アイツの仕事だ。」

「さいですか」


 いつもの木の玉座に座って言うお母さんの目からはハイライトが消えている。かなりご立腹のようだ。

 実際、庭を見渡してみると端の方の一部は耕された地面が均されていて、すでにリュドミラさんが手を付けていた様子がうかがえる。


「さて、本題に戻ろう。まず基本から復習だ。魔法および魔術を使うには魔力が必須だが、そもそも魔力とは何か。ミオ。」

「魂から湧き出る力であり、私たちの意思で世界に干渉するための対価。だよね。」

「正解。では魔法とは何か。アルフォンス。」

「魔力を対価にイメージを現出すること…?」

「正解。これはさっきミオがほとんど同じことを言っていたな。では魔術とは何か。ミオ。」

「魔法に必要なイメージを術式で代替した魔法。」

「正解だ。二人とも認識は正しいようだな。」


 学び始めた直後から散々頭に叩き込まれたこの世界の魔法の基礎だ。間違えるはずもない。


「早速実技に移ろう。私が水球を作るから、お前たちはそれを見てから続け。」

「「はい」」

「”水、よ、我が、手に。水球(レタウ=ララブ)”」


 詠唱が少し詰まったようにも思えるが、私たちの視線の先では手の平に集まった魔力が何の問題もなく水に変わる。視覚的には無から水が現れたように見えるが、その実対価は支払われているのだ。


 生み出された水球は一切の揺らぎもなく、まるで凪いだ湖面のように滑らかだ。

 あまりに繊細な制御に見入っていると、突然それは形を失って地面にばしゃりと広がってしまった。


「…ほら、お前たちも。」

「はーい。すぅ…ふぅーーーっ……」


 目を閉じ深呼吸を一つ。雑念を捨て去り、魔力の制御に意識を注ぐ。

 体全体に巡る魔力をすくい上げ、腕に流して指先から手中に。渦を巻きながら徐々に量を増していくそれが、頃合いになったのを見て詠唱する。


「”水よ、我が手に。水球”」


 魔法名を唱えた瞬間に世界が書き換わり、野球ボールほどの水が姿を現した。


「うん。悪くない。」

「ああ。よくできている。」


 私が生み出した水球は、お母さんと同じ…とは言えないが、それに近いぐらい静かな水面をしている。

 狩りを終えてからというもの、魔術の調子がすこぶる良い。やはり実戦の緊迫した状況で瞬時に構築をやり遂げた経験が、私に大きな自信をもたらしている。


「うぅ…」


 悲しげな唸り声に水の制御を手放してそちらを見ると、お世辞にも凪いでいるとは言えない揺らぎ方をした水球が目に入った。水面は波打ち、制御からこぼれた水が地面に滴り落ちている。


「どうして私たちのように水面が均一にならないのか。理由は分かるか?」

「魔力の制御が…甘いからです……」

「そうだ。だが嘆く必要は無い。隣で涼しい顔をしているミオだって、この間までブルブルだったんだ。修練を積めば遠からずできるようになる。」

「はい…」

「ちょっと!」

「ただいま帰りましたよーっと!」


 あんまりな言いように思わず反論しようとしたところで快活な声が響いた。

 リュドミラさんが狩りから戻ってきたらしい。その肩に担がれていた巨大なイノシシが地面にドスンと降ろされた。


「いいタイミングだなミラ。」

「えっ、何か用?早く血抜きしないと味が落ちるんだけど。」

「ミオに体の動かし方を教えてやれ。将来冒険者としてやっていくなら、いくら魔術師でも動けて損は無い。近接戦闘ができればなお良い。」

「ええ!?いや、血抜きの後は穴埋めもしなきゃだし、そんな余裕は」

「血抜きは先でもいい。だが穴埋めは空き時間でやれ。」

「はあ!?そんなあんまりな!」

「ほう…?説教をご所望か?」


 再びお母さんの瞳からハイライトが消え、ギロリとリュドミラさんを睨んだ。

 睨まれた当人はそれに竦み上がったのか、敬礼までして佇まいを正している。


「いえ!喜んで指導させていただきます!」

「よろしい。」

「はあぁぁあ……あ、ごめんなミオ。別にお前に教えるのが嫌ってわけじゃないんだ。ただ、このところ姉様の当たりが強くてさ。」


 視線が逸れたのを見て盛大に溜息と愚痴を漏らすリュドミラさんだったが、それを聞きつけたお母さんの首がグリンとこちらを向いた。


「何か…言ったか?」

「いえ!何も!…はぁ、まぁいいや。血抜き終わったらやるから、先に体あっためといて。」

「分かりました……リュドミラさん、南ー無ー」


 どうやら私には不憫属性持ちの、二人目の師匠ができたようである。

あとがき


前回とは打って変わり今日は日常をお届けしました。

いやーやはり日常はいいですな!気分は落ち込まず、この先どうなるかハラハラする必要もなく。

キャラクターに任せて喋らせていれば自然と文章が書き上がる!


…え?お前は先を知っているんだからハラハラも何もないだろうって?

いやいや何おおっしゃいますか!前回唐突に降ってきて予期しない展開になることが証明されてしまったのですから、私も油断はできないのですよ。


次回、師匠になったリュドミラさんと鍛錬です!

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