表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
11/37

第11話 巨大樹の森

「第1章 永遠と須臾の煌めき」

の中の「第2幕 千載三遇」

の中の「第11話 巨大樹の森」です。


2025/07/15

 細部各所の表現を変更

2025/09/14

 細部各所の表現を変更

カタ…


「ふぅ…」


 溜息とともにソーサーに置かれた空のティーカップ。今日の朝食後のティータイムが終わった。


「…お母さん、今日は狩りをする約束だよね?」

「そうだな。」


 獣人族は人族に比べて狩猟本能が顕著で、身体の成長も早い。どちらも15歳ごろに成熟を迎えると言われている。

 肉体的な強さや生存力を尊ぶ獣人族は、子供を7歳ごろのまだ幼いうちから狩りに連れていく習慣があるらしい。


 下位~中位の魔物を狩るのに十分な威力を持つ”中級魔術”を私が覚えたこともあり、そうした習慣に倣って森で狩りをすることになったのだ。


 私はようやくの実戦ということで、待ちきれない気持ちでうずうずしていた。


「早く行こう!すぐ行こう!」

「ふっ、お前は楽しみなことになった途端に見た目相応の反応をするな。」

「ゔっ……そ、そうだけど!?それがどうかした!?」

「ふははっ!開き直るなよ!くくっ…はー、分かった。すぐに行こう。だが、私とて最低限の用意ぐらいは必要だ。もちろんそれはミオにもな。」

「わ、分かってるよ!」


 この幼児、いや童子退行はいささか悪癖だとは思っているものの……何年経っても治ることはなかった。

 やはり精神年齢は体に引っ張られているのか、もしくはお母さんに子供として扱われるという環境が原因なのか。

 

(まぁ、それが分かったところで何にもならないけれど。)


 恥ずかしさからそっけなく返し、差し出された真っ白な厚手のケープを雑に受け取る。


「…くくっ」

「何さ」

「いや、何も。ンフっ」

「…ったく……」


 自分の部屋へ支度に戻るお母さんに背を向け、土間の靴箱から樺茶色のコンバットブーツを取り出す。


 この家にある衣類はお母さんがかつて都市で買ったものを除いて、全てクロック印のオーダーメイドだ。私がこの家に来てから都市には行っていないそうなので、私の服は全て彼の作ったものになる。

 もちろん、今手渡されたケープも。


 これだけでもすごいのだが、このコンバットブーツですら彼が作ったものなのだ。しかも私が大雑把な外観と機能を伝えただけで試作もせずに一発で。


 クロックは普段から頼りにしているし、当然感謝も尊敬もある。

 だが話をした数日後、何となく進捗を聞いてみたらこれを出されて言葉を失ったのは、仕方がないことだと言えるだろう。


「クロック、いつもありがとね。」

「御褒めに与り光栄の至りで御座いマス。」


 何の前触れもなく話しかけたというのに、彼はただちに感謝の言葉と完璧な礼でもって返事をした。う~ん、ナイス執事。


 そこへ未だニヤけ面の母上殿が戻ってくる。

 手にはまるでサファイアのような輝きを持つ魔石と、その青みに映える金で装飾された杖を持ち、着物のような(たもと)のついた真っ白な外套を羽織っている。


「ねぇ、そろそろ笑うのやめてよ。」

「仕方ないと思わないか?娘に可愛らしい所を見せつけられたんだぞ?」

「見せつけてません!」

「くくくっ」

「揶揄うのもほどほどにして欲しいんですが?そろそろ怒りますよ?」

「すまんすまん、あんまりにも反応が可愛いものだからつい、な。」

「はぁ…」


 かわいいと言われることには別に抵抗など無いけれど、さすがにちょっと鬱陶しく感じて思わずため息が漏れる。


 だが準備は終わった。下向きな気持ちは振り払い、気合を入れて森へと歩き出す。


 実のところ、森に入るのはクマに襲われたあの転生初日以来初めてのことで、私の世界はこの家を取り囲む芝生の庭までが全てだった。

 しかしそれも今日まで。今からさらに向こうへと広がるのだ。


「それにしても、この森の木ってホントに大きいよね。」

「あぁ、何せ”水臨樹”だからな。しかもここは太い地脈が交差する森だ。大きくならないわけがない。」


 水臨樹…”世界樹の苗木”とも呼ばれ、養分だけでなくその土地の魔力すら成長の糧とする魔樹の一種だ。

 その巨体を維持するため常に大量の水をくみ上げており、この木が生える場所の地下には大きな水脈が流れていると言われる。そうしてくみ上げられた水は葉から蒸散し、森の中で雨を降らせるほど。


「木陰は寒いね…」

「外套を着ていてよかったと思うだろう?」

「うん」


 十年ぶりの森の中は雨こそ降っていなかったものの、想像以上に気温が低く、ジメっとしていて不気味だった。


 二の腕をさすりつつ進んでいくと、何かが全身を撫でた。まるで水の膜に入ったみたいな、何かの境界を通り過ぎた感覚を覚える。


「今の…」

「お、やっぱり分かるか。」

「何?…なんか不気味なんだけど…」

「さっき結界を通り抜けた。その時に結界の魔力を感じ取ったんだ。ほら、前にも説明しただろ?闇、火、土、風、水、光の六属性を使った魔術七種の複合結界だよ。」

「あぁ!あの意味分かんないぐらい高度な結界魔術!」


 本来結界なんて一つの属性で、かつ一種類の魔術しか使わない。それが六属性の七種複合?ようやく中級魔術師、つまり一般的な一人前の魔術師になった私からすれば、頭がおかしいとしか思えない。


 その結界を維持してる魔法陣を見せてもらったことがあるけれど、一つ一つの単語の意味は理解できるのに、文章をありえないほど短縮しているせいでほぼ全部の箇所が重複しており、元の詠唱がイメージできなかった。


(こういうぶっ飛んだものを作ってるところを見ると、”あぁ、この人って本当に英雄なんだな”っていう実感が湧くんだよね…)

あとがき


というわけで、今回はいかがでしたでしょうか?

本来ならもう少し話が進む予定だったのですが、推敲を進めるうちにあれよあれよと描写が増えてしまい…結局狩るところまでたどり着けませんでした。すみません…(-_-;)


次回、今度こそ狩猟!魔術も実戦投入です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ