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獣剣の魔女  作者: Dy02-SK
第1章 永遠と須臾の煌めき
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第1話 悪質な寝起きドッキリ

第1章 永遠と須臾の煌めき

第1幕 転生諸変

第1話 悪質な寝起きドッキリ

(いや…いや、いやいやいやちょっと待て。)


 常軌を逸した大きさの木々が生い茂り、周囲は雷雲が立ち込めたように暗い。

 巨木の隙間には弱々しく低木が揺れていて、時折風に煽られて葉擦れの音を立てる。

 この森の木々の高さの何たること。何かを切実に願って木の根に涙を流せば、オレンジ色の巨人が助けに来てくれるかもしれない。


 目が覚めたら森の中。

 「ありえない」、「非現実的だ」などと断ずるにはまだ早いだろう。確率的には限りなく低く、こんなことになる心当たりは一切無いが、不可能ではないのだから。


 しかし問題は、視界に映る自分の手が赤ん坊のように小さく、体も籐編みの籠のようなものの中で白い布にくるまれ腕以外は身動きが取れないということだ。


 しかもそれだけに留まらず、股にもただならぬ違和感を覚える。

 この世に生を受けて18年。当たり前だが片時も離れることなく連れ添ってきた我が息子の気配が、全く感じられなくなっていた。

 代わりに尻に髪の毛のようなサラサラとした感触を感じる。


 常識的な範疇を超えて肉体の年齢が巻き戻り、文字通り若返っている。あまつさえ性別すら定かではなく尻尾(?)すら生えている。これは少なくとも現代科学では説明のつかない、つまり不可能と呼ばれる現象である。


何が(んあんぅ)どうなってん(おぉぁあぇん)だよぉっ(あおぉぉ)!?」


 思わず口を出た言葉も、上手く呂律が回らず無意味な音に成り下がってしまった。


 そもそも自分は―――と、そこまで考えてから気がつく。


(家を出てからのことが思い出せない…?)


 今朝の俺は遅刻スレスレの時間に目を覚ました。そのため慌ただしく支度をし、家を出て大学に行った…はずだ。だがどうにも外に出た後のことが思い出せない。


 というか、こうして目を覚ましたのなら、昼寝をしない俺の習慣的に1日を終えて床に就いたはずなのだ。それなのに、講義を受けた記憶も家に帰った覚えもない。


 …不自然極まりない記憶の欠け方だ。それこそ、誰かが意図的に記憶を抜き取ったかのような―――


「すぅーーー、ふぅーーーーーっ…」


(確かに状況は意味不明だけど、まずは落ち着こう。ステイクールってやつだ……とりあえず現状を整理するべきだ。)


 冷静さというのは、今まで読んできたどんな物語でも重要視されてきた。つまりそれだけ重要なことなのだ。


 俺はそれらに倣い、深呼吸を挟む。


 こういう時に必要なのは、出来る限り多くの情報を得て、それを正しく整理することだ。原因について考えるのは後でもいい。


 まずは助けを求めるためにも自分がどこにいるのか、ある程度のあたりをつける必要があるだろう。そうなると、現在地を特定するには目印になるものが欲しい。


(…まぁ、こんな森の中にランドマークなんてないし、そもそもこんなバカデカい木がポンポン生える森なんて知らないし…)


 俺が縮んでいて大きく見えることを考慮したとしても、ここに生えている木は直径10m以上。高さに至っては100mは超えているように見える。こんな異質な森は聞いたことがない、あまりにも大きすぎる。


 分からないものは考えても仕方がない。とりあえず置いておこう。


 視覚の他に情報といえば聴覚。

 だがここはひどく静かだ。たまに葉擦れの音が聞こえてくる程度でほとんど音がしない。水音や鳥の囀りすらしないのは中々不気味だ。


 続いて嗅覚にも集中してみるが、特に異臭の類はしないし、音で聞いた通り水の匂いもしない。あくまで森の中の自然な香りという感じだ。


 周囲から得られる情報はこれが限界だろう。


 今度はこの体について見てみる。

 やはり第一印象と変わらず幼児のようになっていて、股からは並々ならぬ違和感を覚える。


(そう言えば人の年齢って確か、歯の状態である程度分かるんだったよな。)


 試しに口内を舌でなぞってみると、何本かの前歯が生えてきているところであった。


(…ってことは1歳くらいなのか?でも何で―――と、それについて考えるのは今じゃないんだって。)


 今は情報の把握と整理をする時間。考察は後だ。


 体を包んでいるのは白い木綿らしき布。

 キツく巻かれているわけではないが、他にも籠いっぱいに敷き詰められていてうまく身動きが取れない。

 力の弱いこの体では寝返りも打てそうになく、籠の中には布の他には何も入っていない。


(これは、マズい……!このままじゃ餓死って言うか、渇水死まっしぐらなんだが…!?)


 成人した人間が飲まず食わずで生きていられるのは3日までだとはよく言うけれど、1歳の幼児がそこまでもたないことは分かりきったこと。外からの助けがないと真面目に死んでしまう。


 せめて元の大学生としての体があればまだ足掻きようはあったのだろうが、それすら取り上げられた状態で拘束までされては為す術が無い。

 万事休す―――絶望的な結論に至り、藁にも縋る思いでどうにか巨木の根に涙を垂らすべきかと、真剣に悩み始めた時だった。


 ガサリ、ガサリと、何者かが落ち葉を踏む音が俺の鼓膜を震わせたのだ。


(まさか人っ…!?……いや待て、よく考えろ。あの足音が人間だとは限らないぞ。もし猛獣の類だったら?最悪、生きたまま食われるかもしれない…!こんな常識外れな森の中だ、人なんかよりそっちの可能性のほうが断然高い…!)


 ガサ、ガササ、ガサ、ガササ…


 足音は徐々に大きくなり、ゆっくりと近付いてくる。

あとがき


もし自分がこんなことになったら……寒気がしちゃいますね。

そう言えば書いておいて何ですけど、今『ボノロン』知ってる人ってどれくらい居るんですかね?


次回、足音の正体とは…!

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