第1話(その⑦)
「Monsieur.リアン! Monsieur.リアン何処にいるの! 一人にしないで!」
「ボヌール! 何処にいるんだ! 無事か!」
ボヌールとリアンは逃げ惑う人混みに巻き込まれてしまい、ボヌールは座り込んで動けない中、リアンは人の波に揉まれてボヌールからどんどん離れてしまい、お互いの叫び声も周りの人の声でかき消されてしまいました。
そんな中、リアンの名前を何度も呼ぶボヌールの元に、動き出して混乱を招いた人形二体が現れ、目の前でしゃがみ込みました。
「ようやく会えたね。主人」
「泣きそうな顔をしちゃって、もう大丈夫ですよ」
そう言いながら人形たちがボヌールに触れようとした瞬間、ボヌールの恐怖度が増し、大声で泣き叫び始めました。
「うわぁぁん! 誰か! Monsieur.リアン! 助けて!」
泣き叫ぶボヌールを見て人形たちが困惑していると、警備の人たちと共にリアンが現場に戻ってき、ボヌールの傍に駆け寄り、抱っこして人形たちから引き離しました。
「ボヌール、一人にして悪かった。警備の人たちを連れてきたから、もう大丈夫だからな」
「Monsieur.リアン! 怖かったよ。私、もうダメかと・・・・・・」
無事再開できたボヌールは、まだある恐怖心からリアンの服を掴んで離れようとしませんでした。
その様子を見た人形たちがボヌールの元へ行こうとすると、警備の人たちから拳銃を向けられました。
「この子が無事でよかった。さあ、危険ですから、こちらへ」
「ありがとうございます。行こうか、ボヌール」
「うん。早くここから離れたい・・・・・・」
展示室から出ていくボヌールたちを見た人形たちは追いかけようとしましたが、警備の人たちに取り押さえられました。
「こら、大人しくしろ!」
「「待って主人! 行かないで!」」
人形たちの叫び声に対し、誰も返事はしませんでした。