第1話(その⑤)
しばらく歩いていると、目的の美術館にたどり着きました。中に入りリアンが受付をしている間にボヌールはヘッドホンを外しリュックの中にしまい、受付が終わった後に大型ロッカーにキャリーケースを預け、特別展の「世界の不思議な人形展」の展示室へ向かいました。
「bonjour。ようこそ、「世界の不思議な人形展」へ。こちら、入場特典のポストカードになります。兄妹で特別展に来られるとは、とても仲がいいのですね」
「bonjour。この子は僕の妹ではなく姪なんです」
入口のスタッフから兄妹か尋ねられボヌールが戸惑っていると、リアンがすかさずそう返答しました。
「そうなんですね! お顔の雰囲気がとても似ていたので、てっきり兄妹かと・・・・・・」
そんな話をしながらリアンは二人分のポストカードを受け取り、展示室の中に入った後にボヌールの分のポストカードを渡しました。
ポストカードには、10代後半くらいの眼を閉じている男女の写真が載っており、それを見たボヌールは、心がモヤっとするような変な感覚を感じました。
「ポストカードの写真は、特別展の目玉らしいよ。間近でみたらどんな感じか楽しみだな、ボヌール」
「うん。せっかく来たから、色々な人形をみようね」
ボヌールは心がモヤっとする感覚の事は一旦忘れ、色んな人形を見ることに集中することにし、リアンにはこの感覚のことは隠すことにしました。