第1話(その①)
あの日からちょうど一年が立ち、ボヌールとリアンはあるホテルに宿泊していて、ボヌールがママとパパを探し求める声でリアンは目を覚まし、体を軽くゆすりました。
「ボヌール! 大丈夫か?」
「リアン・・・・・・さん? あれ、ここは・・・・・・?」
寝起きで頭がぼーっとしている中、ボヌールは自身の頬に涙がつたっていることに気が付き、指で涙を拭いました。
「だいぶうなされていたけど大丈夫か? もしかしてあの時の・・・・・・」
「うん。でももう大丈夫。大丈夫だから・・・・・」
そう言うものの、体は小刻みに震えており、そんなボヌールにリアンは優しく手を触れながら、頬に軽くキスをしました。
「昨年のことを思い出して辛いのは分かるけど、今日はせっかくの誕生日なんだ。無理にとは言わないが、少しでも今日は楽しい思い出を作っていこうか」
そう優しい声で諭すと、キャリーケースの中から紙袋を取り出し、その中には、水色メインのセーラーワンピース、白い無地のタイツ、小さなリボンが付いた茶色のパンプスが入っていました。
これらは、ボヌールの両親が昨年の10歳の誕生日プレゼントにと用意していた、生前最後のプレゼントだったのです。奇跡的に爆発に巻き込まれず無傷だったのを警察から受け取っていたリアンが、今日まで隠していたのです。
「これ・・・・・・どうしたの?」
「これはな、姉さんと義兄さんからの誕生日プレゼントで用意してたお洋服たちだよ。本来は去年の誕生日に渡されるはずだったものなんだけど、色々あって一年越しに渡すことにはなっちゃったけど」
「MèreとPèreからの一年越しのプレゼント・・・・・・」
その話を聞いたボヌールは複雑な気持ちになってしまい、それを察したリアンは頭を優しく撫で、この服や靴を身につけられそうなら着てみるように伝え、着替え終わったら声をかけるように言って、一旦寝室から出ました。