第2話(その⑦)
ボヌールの部屋に着くと、リアンはゆっくりベットにボヌールを降ろしました。
「ボヌール、落ち着いたかい?」
「うん。でも・・・・・・口の中が気持ち悪いかな・・・・・・」
「そうか。じゃあ、水を入れたコップと、口をゆすいだ後のを入れる入れ物を取ってくるな」
「えっ、Monsieur.リアン、行っちゃうの?」
「すぐ戻るから、ちょっと待っててな」
リアンは不安な表情をしているボヌールの頭を軽く撫でると、一旦部屋から出ていきました。
リアンが下に降りてくると、丁度嘔吐物の片づけが終わり、仕上げにアルコール消毒しようとしている所でした。
「リアン、ボヌールちゃんはもう大丈夫そうか?」
「はい。だいぶ落ち着いていますよ。部屋を出るとき不安そうな顔をしてはいましたが・・・・・・」
リアンは二ナスたちにそう伝えながら、食器棚から小さい皿とコップを取り出しました。
「それしても、クラッカーであんなことになるとはな・・・・・・」
「ボヌールは、あの時の影響がまだ結構残っているみたいで・・・・・・」
「そう言えばボヌールちゃん、ちょうど一年前に両親が亡くなったんだよね。それと何か関係が・・・・・・?」
「・・・・・・姉さんと義兄さんが亡くなったと知った時、外で花火が打ち上がり始まったんですけど、どうやらその時、ボヌールの中で大きな音、特に花火が打ち上る時になる「ドンッ」って音がダメになってしまったみたいなんですけど、クラッカーの音であんなに取り乱すのは予想外で・・・・・・」
「そうだったのか。ボヌールちゃんには悪いことをしてしまったな・・・・・・」
「そんなこと、何で教えてくれなかったの! それを知ってたら、ボヌールちゃんを怖い思いをさせることはなかったのに!」
リアンが水を入れたコップを置いたのと同時に、手洗いから戻っくる時に話を聞いていたユヌは、勢いでリアンの肩を鷲掴みしました。
「ユヌ、ちょ、痛い! 話す必要がないと思って、言わなかっただけだよ! そもそも、帰ってきてクラッカーが鳴るなんて予想できる訳ないだろ!」
リアンがそう言うと、ユヌはため息をついた後、リアンの肩を離しました。
「ボヌールちゃんに、アップルティーを持っていこうと思うんだけど、いいよね?」
「別にいいが・・・・・・えっとアップルティーの茶葉が確か・・・・・・」
「うわぁぁぁ!」
リアンがアップルティーの茶葉を探そうとしたその時、二階からボヌールの叫び声が聞こえてきました。