第1話(その⑨)
美術館を裏口から出ると、外で警察の人が待機していました。
警備の人が警察に経緯を話すと、ボヌールとリアンを除く2人だけその場に残り、それ以外の警察と裏口まで送ってくれた警備の人たちは美術館の中に戻っていきました。
「それでは、警察車両で駅まで送っていきますね。パレードも少し前に終わったので、規制線もそのままで一般車もまだ通っていないので、スムーズに駅まで移動できますよ」
「そうなんですね。すいませんが、よろしくお願いします」
「お願いします」
「いえ、お気になさらず。市民の安全を守るのが我々の使命ですから。それでは、荷物を乗せるので、その間に車にお乗りください」
そう言いながら一人は車の扉を開け、リアンとボヌールが後ろの席に乗り込むのと同時に、もう一人はキャリーケースをトランクに詰め込み始めました。
荷物の詰め込みが終わると、トランクを閉め、それぞれ運転席と助手席に乗り込むと出発しました。
「それにしても、兄妹仲良く特別展にせっかく来たのに、大変な目にあったみたいだね」
「あの、この人・・・・・・Monsieur.リアンは、私の叔父さんなんです」
「あ、そうなんだ。勘違いしちゃってゴメンな、お嬢ちゃん」
「いえ、大丈夫です。よく間違われるので」
「姪は、姉の子で、目元以外母親そっくりなんですよ。僕自身も姉に似ているみたいなので、それでか、姪との年も一回りくらいしか離れていないのもあって、よく兄妹に見えるみたいなんです」
「そうなんですね。叔父にしては若いなと思っていたのですが、一回りくらいしか年が離れていないのであれば、納得です」
そんな会話をしていると、美術館から車だとそんな離れていないのもあり、目的地のパリ北駅にたどり着きました。
警察車両から降りた後、トランクに乗せていたキャリーバックを受け取り、TGVの切符を購入し、改札に入るまで護衛してくれました。
「それでは、もし何かあれば連絡しますので、二人ともお気を付けてお帰りください」
「はい。ここまでありがとうございました」
警察の人にお礼を言った後、ボヌールとリアンは駅のホームに向かいました。
ホームに着いたのと同時に、乗る列車がやってきて、それに乗り込み空いてる座席に並んで座りました。