第5話 リユース計画
「リユースしたいのよね。」
リーナが、小声で言いだした。
「うん。やっぱり無理。キャサリン様、本当に要らないの?」
「・・・要りません。」
「そうかあ、、、、誰か要らないかなあ、、、うちはね、領地の経営もそこそこうまくいっているから、持参金もいらないし、、、なんなら、私は生涯独身で、親戚筋から養子を取ってもいいと思っているの。」
「・・・そこまで?」
「ただねえ、、、、《《こちらから》》は言えないデショ?《《あちらから》》言いだすようにしたい。」
「・・・・・」
・・・・・この二人は、、、キャサリン様が放課後は生徒会室に詰めるので、昼休みに図書館で宿題をやってるんだね?
リーナ様は夕方からは、父上と領地経営の勉強をしているらしい。
「誰か、、、、要らないかしら?まあ、プライドが高いから、あんまり低い身分の所には行かないわよね?」
「まあ、、、、ね?大公家は?あそこのご令嬢は、3つ下位?」
「嫡男殿が長いこと行っていた留学から帰ってきたらしいですよ?できる人らしくて、第二王子の補佐で、外務関係の仕事をするらしいと聞きましたが?」
「ああ、、、、そんな話だったわねえ、、、、やっぱり、侯爵位以上よねえ?婿入りするなら、、、、国外にはいないのかしら?」
レイン様に言われて、図書館から借りていた本を返却に来たら、面白い話を聞いてしまった。リーナ様、、、、相変わらず、愉快な方だ。
「大体、、、2年生ともなると、婚約者が決まっている方が多いでしょ?他の学年を狙ったほうが良いかしらね?」
「・・・・そうねえ、、、、」
くすっ、、、
「私さあ、、、本当は、一年でスキップして、アカデミアで経営学をやろうかなあ、って思ってたのよ。そしたら、父に反対されたの。王室はどうも、学院生活を社会勉強だと思っているらしく、スキップさせない。お前が、婚約者より高学歴ってのはまずかろう、、、、って。」
「・・・・まあ、、、、あの性格だと、かなりまずいわね。」
「でしょ?だから、聴講生で手を打ったのよ。」
「大丈夫?」
「どうかなあ、、、、まあ、リユースするし。誰かいないかなあ、、、、欲しい人。」
レインバート様は、王子。容姿端麗、文武両道、、、、憧れるのはわかるケド、こんなに嫌がる人も、、、、、まあ、確かに、性格に難あり、ではあるが、、、王室とつながりが欲しい人だって多いだろうに、、、、ふふっ、、、
当の侯爵様も、話が出た時に阻止しようと、子作りに励まれた、という話を聞いたことがある。リーナ様には、随分年の離れた妹さんがいる。親子そろって、、、、
「おらあに、譲ってもらえねえべか?」
「は?」
どうも、聞き耳を立てていたのは、僕だけじゃなかったみたい。
「い、、一年生よね?聞いてた?」
「・・・はい。ばっちし聞いてたあ。おらの領地、去年、冷害で、ものすげえ不作で、おらの父上、全財産はたいてみんなさ食料配ったんだあ。」
「それは、大変だったわね?でも、それなら国から援助が入ったでしょ?」
「んだなあ。入ったげんじょ、、、、そんなの次に繋がんねえべ?父上は、領地の農業改革しっちいみたいなんだげんじょ、食ってぐのでいっぺーの所には、そんな余裕もねえべ?」
「それは、、、、そうね?」
「したがら、、、おらも学院いがねえで働くべと思ってたんだげどなあ、」
「ちょっとお待ちになって?あなた、大陸公用語は使える?」
「ん。」
「じゃあ、、、そちらでお話してくださるかしら?」
・・・・個性強い人が集まってくるなあ、、、、
【だから、私も、学院に行くのを諦めて、仕事をしようかと思ったのですが、父が、学ぶことは大事だと言って下さって。】
「うん、うん。」
【だから、私、学院でいいお婿さんを探して、一緒に領地の立て直しをしようと思いまして。そうしたら、お姉さま方の会話を聞いてしまいまして、、、、持参金も欲しいです。】
「・・・・素直ね、、、、」
【事を起こすには、先立つものも必要ですから。】
「まあ、、、、そうね、、、想像以上の持参金だと思うわよ?」
「んですかああ!!」
吹き出しそうになるのを、何とかこらえる。
「ところで?あなたは?どこの、誰?」
【私はエルノ侯爵家のエミリーです。】
「・・・・エルノ侯爵家と言えば、、、、歴史はあるけど、、、、王都から見て東北にある、、、、、物凄く辺鄙な場所にあるところよね?」
「んだあ、、、王都さも、爺様の代の古ーーーいタウンハウスがあったんだげんじょ、売っちまってなあ、、、、今は、食堂の住み込みで働いてるんだあ。」
「え?」
「したっで、あんま、家さ負担賭けらんねえべ?」
「・・・・いい子ね、、、、」
「すごく、いい子ね。覚悟もあるわ。ただ、、、、言葉がねえ、、、、」
ごめん、、、みんな真面目に話しているのはわかっているんだけど、腹を抱えて笑いたい、、、、、、涙がこぼれる。口に自分のこぶしを突っ込んで耐える。
「言葉と、礼儀作法は、キャサリン様にお願いしたいわ。あと、、、身だしなみも。」
「・・・・そうねえ、、、ねえエミリー?いっそ食堂をやめて、うちの侍女になったらどうかしら?少しだけど、給金も払うわよ?もちろん住み込みで。そうでもしないと、、、、治らないわね、、、その方言、、、、まあ、公用語が完璧なのはわかったわ。」
「じゃあ、私はお勉強のほうを。」
頑張ってみて!楽しそうだね!!
僕は、笑いをこらえて、静かに図書館を後にした。