第12話 調書
「そうですねえ、、、日頃から、リリー嬢とレインバート様は大変仲がよろしかったですので、、、リリー嬢に一人で迎えに来てね?ってお願いされたら、行くかもですね、レインバート様。」
「え?学院ではよく、腕を組んで歩いていらっしゃいますよ?生徒会の役員をしている友人に聞きましたが、生徒会室にも入り浸っていたようですし。まあ、、、公認?」
「先日も、10月の舞踏会のエスコートの約束をなさったそうですよ?リリー嬢と。」
王城での取り調べには、正直に、知っていることを述べる。ホントに、正直に。
「ただ、私ではありませんよ?主犯。私はそんなにレインバート様に執着しておりませんので。彼が、リリー嬢を選ぶというなら、全然止めませんけど?」
「え?私をエスコートですか?レインバート様にお誘いを受けたことも、ドレスを贈られたこともございませんけど?」
途中から、、、なんの取り調べなんだ?という内容になってきたなあ、、、
「学院で、婚約者であることを伏せてもらった理由ですか?他のご令嬢からの嫌がらせがひどいから、ですね。レインバート様も御存じでしたよ?突き飛ばされたり、カバンが捨てられたり、、、。オモテになりますからね、レインバート様。」
「とにかく、、、、主犯は私ではありません。焼きもち?気もないお方に焼く餅はございません。事故現場には、たまたま、通りがかっただけです。お手伝いできて良かったです。」
取調室を出ると、アデル君が待っていてくれた。よほど笑ったのだろう、、、目が潤んでいる、、、、まったく、、、
「くすくすっ、、、、、大変でございましたね、、、取り調べ、、、」
「・・・・・なんだか、言いたいこと言って、逆にすっきりしたわ。送ってくれるんでしょ?」
「はいはい。」
アデル君が回してくれた馬車に、手を取ってもらって乗り込む。先ほど買ってもらった淡い緑色のワンピースがふんわりと揺れる。今日は、、、すっきりミント味の飴だった。
*****
「主犯はリリー嬢の父親でしょう。あの子爵家は金回りが良いと評判でしたが、事業が傾いて、大変な負債を抱えていたらしく、今回のことを思いついたみたいですよ?娘がレイン様と良い仲だと聞いて、おびき出して誘拐して身代金を貰い、何食わぬ顔でレイン様を介抱し、娘が傷物にされたと騒いで、結婚。で、持参金も手に入れる。大方、そんな筋書きだったかと。」
「・・・・そんな、、、うまく行くと思っていたのかしら?そのほうが不思議だわ、、、、」
「かなり、親密な仲だと聞かされていたようで、、、」
「はあ、、、、身から出たサビ?」
「くすくすっ、、、、、レイン様も今、別室で取り調べを受けていますよ。もちろん、リリー嬢も。」
「はあああああ、、、、、」
「まあ、リリー嬢は先のことまでは知らされていなかったと思いますが、、、ただでは済まないかと。」
「・・・・・そうねえ、、、、ただの逢引きにしては、失敗したわね、、、、」
*****
しばらくしてから、父と一緒に王城に呼ばれた。心当たりは沢山あるが。
「お父様、私、やはり、レインバート様無理です。すみません。ご迷惑をお掛けしてしまいますが、、、」
「・・・・ああ、、、大丈夫だよ。多分。」
先方様は王妃様とレインバート様。
4人でテーブルを囲み、お茶になる。気まずい、、、、さすがに人払いされているらしく、アデル君も護衛も近くにはいない。はああああ、、、、
「この度は、、、うちのレインのことで、大変ご迷惑をお掛けしてしまって、、、、」
「いえ。何事もなく、良かったです。」
「リリー嬢のご実家は爵位も領地もはく奪になり、娘さんは修道院送りに決まりました。」
「はあ。的確なご判断かと。」
「それでね?リーナちゃん?調書を読ませてもらったんだけど、、、、その、、、レインのこと、、、、」
「・・・・・」
「感謝しているのよ?この子は最近変わったの。自分から周りの人たちに挨拶するようになったし、気遣えるようになったの。」
「・・・・残念ながら、その変化は、私のせいではございません。エミリー嬢の努力のたまものかと。ね?レイン様?」
「・・・・・」
「エミリー嬢?エルノ侯爵家のお嬢さまね?」
「さようでございます。彼女が、一生懸命、レインバート様に歩み寄って下さったおかげです。私は長く婚約者でしたが、彼女のように歩み寄ることが出来ずに、大変申し訳なく思います。」
「・・・・・」
気まずい、、、、父上も何も言わないし、レインも、、、
「・・・謝らなければならないのは、僕のほうです。カタリーナ、今まで本当に申し訳なかった。僕は、自分のことしか考えていなかった。君のことも、周りのことも、何も見ようとしなかったし、聞こうともしなかった。申し訳ない。」
「・・・・・」
「君には本当に申し訳ないが、僕たちのこの婚約は解消させて頂けないだろうか?」
「・・・・・」
よろこんで!!!
「まあ、レイン?これから二人で歩み寄って行けばいいのじゃないの?」
「・・・・・僕は、結婚を申し込みたい人がいます。その人に、、、自分の不誠実さについて、、、諭されました、、、、。きちんと君と婚約を解消し、一からその方に向き合って行きたい。本当に、、、、申し訳ない。」
「・・・・・」
とんでもない!!!ありがとう!!!!
「最初から、、、、お前が変に、レインを遠くに出したくないなどと申すから、、、元のさやに納まっただけではないのか?」
「・・・・陛下!」
元さや?
「なあ、ハートラム卿?君にもカテリーナ嬢にも、迷惑をかけた。
この二人の婚約は、無かったことに。こちら側からの申出であるので、違約金はもちろん払う。それで、、、、お互い元の婚約者に戻す、でよろしいか?」
「・・・まあ、よろしいのでは?」
父上、、、、態度でかくない??
「ハートラムの領は、我が国の西の要だ。カテリーナ嬢、婿殿とよろしく頼むぞ?」
「・・・・・???」
「お任せください。」
父上、、、、、誰のことなんですか?婿、って???え??