第10話 経過観察
「・・・・って、かまして、去っていきましたよ、エミリーさん。くくっ、、、」
剣術の休憩時間に、組んでいたアデル君と並んで話す。タオルに顔を埋めて、笑いをこらえている。
・・・・こりゃ、、、派手にかましたわねえ、、、、
「あれは、、、自分のことより、あなた方のことをそしられたのが、、、我慢できなかったんでしょうね?いい子ですよねえ、、、、くっ、、、、」
「で?レインは?」
「しばらーーーーく放心状態でしたが、、、何か考え込んでいたようで、おとなしく寝ましたね。くくっ、、、」
「・・・・・」
「それからというもの、おとなしいですねえ、、、この前は、みんなにおはよう、とか言って、引かれてましたから、、、、くくっ、、、、あの人が、、おはよう、、、」
「・・・・・」
「あとはですねえ、、、一年生の教室の前をうろうろしていますよ?」
「・・・・・」
「で?アデル君は?」
「え?僕ですか?僕はもう、16になったときに王城の事務官の登用試験に通っているんです。レイン様が婿に入られたら、事務官ですよ?僕は、、、僕の知識と剣術は、、取り合えず、自分を守るために使いますから、、、、あの方も、そう言えばよかったんですよね?自分のプライドを守るために使っているって。それを、、、、、」
同じ匂いのする奴だとは思っていたが、、、、成績も、剣術も、、、
「まあ、、、リーナ様にだから言いますが、その自分のプライドがお粗末だったことにやっと気が付かれた?だといいなと、思いますよ?」
笑い過ぎたのか、涙を拭きながら、アデル君は私に手を差し伸べた。
「さ、残りの時間もよろしくお願いいたしますね?リユースしなくても、使い物になるかもですよ?」
「!?・・・・・私には御しきれないわ、、、、、」
くくっ、、と、アデル君が楽しそうに笑う。
*****
「この住所にやって頂戴ね。」
馬車に乗り込んで、御者に住所の書かれたメモを渡す。
「お嬢様?ええと、、、、そのお洋服でよろしいので?」
「?え?いいわよ?お届け物に行くだけだから。」
「・・・・さようで、、、、」
妹さん用の化粧水を届けがてら、隣国へ留学するにあたって、いろいろと聞けたらいいなあ、と、のんびり考えていた。隣国の商人かなんかだろう。着ていた物はシンプルだけど、物は良かった。化粧水はとりあえず3本用意した。妹さんを大事にしてそうな感じだったから、、、、なるべくカワイイ瓶にしてみた。
今日はお届け物が終わったら、本屋さんに頼んであった本を取りに行って、、、と、思っているので、ワンピース姿だ。動きやすくていい。お気に入りの手提げバック。
門で、御者が番人と話している。あら、、、うちの紋章まで見せてるわ?どこ?ここ?
門を入って、馬車寄せまで、、、、あら、、、随分遠いわね?
「ねえ?どこに向かっているのかしら?」
窓を開けて聞いてみる。
「え?お嬢様の言われた住所なのですが、、、、大公家のお屋敷の住所でございますよ?」
「は?」
御者がドアを開けてくれたタイミングで、先日の紳士が走って来て、手を貸してくれた。えーと、、、大公家にお勤めの方かしら?
「いらっしゃい。キャサリン嬢。お待ち申し上げておりました。」
あら、、、、隣国語じゃなくて?
「僕の家族もあなたがいらっしゃるのを楽しみに待っていましたよ。さあ。」
「??」
・・・・ああ、妹さん、が、、、、ね?
*****
「あ、、、あの、、、エミリー、、、さん?」
「・・・はい。何か?」
「あ、、、あの、、、怒っていらっしゃいますよね?」
「・・・・はい?いえ、呆れてはおりますが?、、、、何か?」
「・・・・・」
避けに避けられて、、、、やっとのことで、エミリーを捕まえた。
屋敷の中でも絶妙に避けられている、、、、
「私、この後、生徒会室の掃除を仰せつかっておりますので、失礼しても?」
「・・・・あの、、、、」
「あら、リリー様!レイン様がお探しの様ですよ?」
きゃあーーとはしゃぎながら、教室から出てきたリリーがまとわりつく。
「まあ、わざわざこんなところまで探しに来てくださったんですかあ?リリーは嬉しいです!!」
正面に立ちふさがれて、おろおろと言い訳を探しているうちに、エミリーは行ってしまった。俺は、、、、あの子に謝りかっただけなのに!!!!
「・・・・それでえ、、、私、言ってあげたんです。貴女みたいな田舎者はレイン様には似合わないわよって。あんまり、まとわりつくのはおやめなさい、ご迷惑よお、って、、、ふふっ、、、」
「・・・・」
「ね?レイン様?」
「え?、、、、、ああ、、、、」
正直、、、誰かに謝るなんてことしたことがあっただろうか?どうしたらいいんだろう?
「・・・・でしょ、、、、それでえ、、、10月の舞踏会なんですけどお、、、リリーはレイン様にエスコートして欲しいなあ、、、、ね?レイン様はいつもおひとりで出席されてるでしょ?ドレスはぁ、、、レイン様の瞳のブルーに、金糸が入った奴がいいですう、、、それでえ、、、、」
なんだろう、、、このまま、エミリーと話せないのか?呆れられたまま、、、、
俺、、、、、今まで、どうしてたんだっけ?
腕にぶら下がるリリー、、、
「ああ、、、すまない、リリー嬢、、俺は、婚約者がいるんだ。」
「そんなのお、どうせ家同士の政略的なやつでしょう?愛なんかないんでしょ?レイン様がエスコートしないくらいなもんなんでしょ?ここには、、私たちには真実の愛があるんですもの、、、、」
真実の?愛?、、、、、、って、なんだ?