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第三章
何分か歩くと、そこには小さな村が存在した。そこは、まるでタイムリープしたかのような田園風景が広がっていた。道行く人は、着物と草履をはいている。ここだけ唯一昔のよう。一通り声をかけたところ、おばあさんのお孫さんはここでも噂になっているらしい。どれも評判は悪く、本人も生きづらいだろう。親切に道を案内してくれた村人に礼を言い、彼が住む家を訪ねてみると、そこはりっぱな和風の家だ。正面玄関の裏手にある庭を見ていると、縁側と長い古びた廊下があった。窓が少し空いていたので、家の中を探索しようと、入ってみると、そこには広くて大きな居間が一つ。隣には寝床らしき部屋があり、あたりは本や原稿で埋め尽くされている。「ごめんください」家主がいなくても、私は一応声にした。するとそこに、「ニャー」という鳴き声がして、びっくりした私は、思わず腰を抜かした。「ヒッ」振り返ってみると、そこには一匹の黒い猫…とご主人だと思われる黒いぼさぼさの髪に、濃い青の着物を着た青年。噂の小説家だろうか。