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8 フェリアへの待遇

「何かご不便なことはございませんか?」


 お茶をフェリアの前に置く。


「大丈夫です。ヨンバルディ王子殿下のお気遣いに感謝しているところですわ」


「わたくしに敬語は必要ございません。フェリア様は特別なお客様でございますから」


「特別?」


「ヨンバルディ王子殿下が個人的にお客様をご招待なさったのはこれが初めてでございます。本日いらしてくださった皆様には精一杯お世話させていただきます」


 フェリアは特別が自分だけでないことにホッとしたがそれは顔には出さなかった。

 お茶に手を伸ばす。


「いい香りね」


 優雅な仕草に離宮メイドは眉尻を更に下げた。


「美味しいわ」


「ありがとうございます。我が国特産のお紅茶でございます」


「少し甘くてフルーティーだわ」


「さすがでございます。茶葉に木苺の乾燥させたものを混ぜております」


「まあ! 素敵なお紅茶ね」


 離宮メイドは頬を染めてホォと息を吐く。フェリアが不思議そうな顔をした。


「わたくしはフェリア様のお世話ができて幸せ者です。フェリア様はすでに使用人たちの間で人気になっておりますから」


「そうなの? 何もしていないのに」


「フェリア様の可愛らしいご容姿に皆傾倒してしまっているのですよ。お近くでお世話をしたくてたまらないのです。可愛らしいお客様がいらっしゃるということでこのお茶係も今朝方争って決めたのですよ」


「争ってって!?」


「あは。心配なさらないでください。芋の皮むき競争で決めましたから」


「まあ! うふふ。それは楽しそうだわ」


「なので本日はシェフ自慢の芋グラタンが多めですがご理解くださいませ」


 離宮メイドの冗談にフェリアもスージーもエイミも笑った。


「ああ! 本当にお人形様のようですわぁ」


 離宮メイドはうっとりとフェリアを見た。


「お紅茶を持つお手も可愛らしくその華奢なお体もお守りしたくなります」


 フェリアは思わず自分の体を見回す。


「やはり小さく見えるわよね。オミナード王国は大きいお体の方が多いとは聞いていたけど本当に大きいのね」


 スージーと離宮メイドは並んで立っている。スージーはフェリアと同じくらいの身長でバーリドア王国では中背であるが離宮メイドはナーシャより頭半分ほど大きい。イードルと同じほどだろう。


「そうですね。この辺りはバーリドア王国にも近いですので平民はわたくしより小さい者が多いですが王都に近付くほど平民も大きくなりますし貴族たちはわたくしほどに大きい者が多いですよ」


 こうして離宮メイドからオミナード王国の話を聞いている間に晩餐のための身支度の時間になり支度を終えたフェリアは離宮メイドに先導されて食堂となる部屋へ赴いた。


 王家の離宮で用意された晩餐はイードルたちが歓迎されているとわかるほど大変豪華なものであった。いや、まだ互いに学生であることを踏まえると豪華すぎるほどだ。


 ヨンバルディは見た目とは違い気配り上手だった。晩餐ではたくさんの会話をすることは忌避されるがシェフを食堂に呼びオミナード王国ならではの食材や料理法を話させたり自分の好みの話をしたりと、決して沈黙の晩餐ではない。そして皿が変わると美味しそうに食べている者を見極め感想を一言聞いたりと四人に満遍なく気を配る。


 食後に誘われたお茶席では互いの国について大いに盛り上がった。


 ただし、一言だけイードルが目を細めてヨンバルディを睨んだ。


「いやぁ。フェリア嬢がこれほどまでに美しく聡明な女性だと知っていれば簡易な婚約打診などではなく僕が直接赴いて口説けばよかったと後悔しておりますよ。ハッハッハッハッ」


 ヨンバルディは自分のジョークにご満悦で笑っていたがサバラルとゼッドは姿勢を正して様子伺いをするしフェリアは困り笑いをしていた。気配り上手であるヨンバルディの言葉なのでフェリアは本気では取らなかったが本気で嫌悪感を丸出しにしたイードルに困っていたのだ。


 イードルはレライに後ろから小突かれると作り笑顔を貼り付けていた。


 こんなジョークを混じえながらオミナード王国での初めての夜は一人を除いて和やかに楽しく過ごした。


 翌日は青年たちはサロンで室内ゲームに興じフェリアはフェリアのお世話をしたい離宮メイドたちによって全身リラックスエステを受け至福の時間を過ごした。


 夕食の晩餐では昨晩よりさらにリラックスした雰囲気であった。

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