【最終話】63 華麗な二人
最終話です。
ヨンバルディの母親モニーシャはバーリドア王国とは反対側の二国向こうの国ビルデン公国の侯爵令嬢でありオミナード王国の現王妃殿下が学生時代に留学して友人になった侯爵令嬢の妹だ。
現王妃殿下は二人目の子供を求めたがなかなか懐妊には至らず、オミナード王国では王家の子女は二人以上という決まりがあったため側妃を迎えることにした。
その頃ビルデン公国で婚約者の移り気により婚約破棄をされたモニーシャが嫁ぎ先に困っていたことを知りオミナード王国に迎えることになったのだった。
モニーシャはすぐにヨンバルディを身籠ったが、現王妃もその後すぐに懐妊したためモニーシャはその後の国王陛下のお渡りを拒んだ。
国王陛下も王妃殿下も納得しモニーシャは側妃としてそして第二王子の母親として過ごしていた。
しかし、ヨンバルディが七歳の時に馬車の事故で儚くなってしまった。
ヨンバルディは母親が婚約破棄によりツラい思いをしたことを知っていたので、最終的にケイナーシェに婚約破棄を言い渡さねばならない作戦であることに心を痛めた。そして、ケイナーシェを救うことに奔走したのだった。
『ケイナーシェにツラい思いをさせたことがなかったことにはならない。
だからこそそういう芽を早く見つけ出せるように見聞を広げたい』
ヨンバルディは人々と交流を持ち耳を傾けながら旅を続けた。
ヨンバルディが王子宮を出立したと同時に恋人ドリーティアは消息不明になり、従兄妹リアフィアは急遽帰国してしまった。
〰️ 〰️ 〰️
「よくお越しくださりました! 歓迎いたします」
ヨンバルディより細めの美青年が手を広げて一団を迎え入れる。紺色の髪をポニーテールにしピンクの瞳には右片眼鏡がされている。
「王太子宮へお招きいただき大変光栄です」
ここはヨンバルディの緑の宮のお隣、青の宮と呼ばれる第一王子が使う王子宮である。青の宮は噴水や水路が程よく配置され緑も輝き青のコントラストを基調とした華花の庭園は見事だ。
「バーリドア王国からの長旅ではお疲れでしょう。今日はごゆるりとお寛ぎください。明日国王との謁見を予定しております」
「御配慮に感謝いたします」
オミナード王国王太子とバーリドア王国王太子イードルはがっちりと握手を交わした。
「これは妹の第一王女キャロライナです」
「キャロライナ王女。ご機嫌麗しく」
「イードル王太子殿下、ご同行の皆様。よろしくお願いいたしますわ」
キャロライナが美しくカーテシーをする。まだ学園に入学する年齢にもなっていないのに特級淑女の片鱗を見せる。
「第二王子ヨンバルディは先週から国内外の視察に出ておりまして今回はご挨拶できないことをお許しください」
「そうですか。ご兄弟で国の繁栄に関われることは幸せですね」
「イードル王太子殿下はご兄弟はいらっしゃらないのでしたね」
「はい。ですが、従兄弟とここに控える二人が協力してくれます。そして、婚約者も」
イードルが後ろに注意を向けるとサバラルとゼッドは騎士の礼をフェリアはカーテシーをした。
「美しい婚約者様ですね。後日のパーティーではきっと皆の目を引くことでしょう」
第一王子に促されて大邸宅の中へ入った。
〰️ 〰️ 〰️
隣町の貸屋敷で一週間ほど待機したイードルたちは豪華な馬車に乗り再び王都へやってきた。
今度はカツラも女装も無しで。
バーリドア王国とオミナード王国の友好大使として新年のパーティーに出席することになっていて大大的に歓迎される。
何事もなかったかのようにオミナード王国国王陛下との謁見を済ませ、新年のパーティーには四人で堂々と出席した。
国王陛下の計らいで第一ダンスはイードルとフェリアが務めることになる。
体の小さなフェリアが優雅に舞う姿に人々は魅了された。このパーティーには特別な招待がない限り学生が参加することはできないのでフェリアの舞とリアフィアの舞を重ねる者はいなかった。フェリアとイードルもテクニックでダンスを変えているのでバレることはないとは思われる。
「二人だけというのもいいが、あの団体の楽しさはまたよかったな」
「うふふ。では帰国しましたらバーバラ様とルルーシア様にお声掛けしてまた皆を驚かせましょう」
「それは楽しみだ」
「ドリー様。またリードがお上手になられましたわ」
「そうか。リアにそう言ってもらえると淑女をした甲斐があったな。
これからも何度でも一緒に舞おう」
「はいっ!」
二人の華麗なフィニッシュに拍手喝采が起きた。
〜 fin 〜
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
イードルたちの奮闘はいかがだったでしょうか?★をポチリとしていただけますと、作者が「わっほい!!」となりますので、よろしくお願いします。
時系列としましては、
この後、国へ戻り、ボイディスがフェリアを口説いた真実の話をします。
それは是非書籍で読んでいただけますと幸いです。
また、明日より新連載開始しますので今後ともよろしくお願いします。




