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42 脱毛

 ドリーティアの謝罪でバラティナは少しだけ唇を尖らせながらも赦した。


「レライ。待っていただけます?

リナーテ嬢のお話では男爵令嬢はこのような教育は受けないと聞きましたわ」


 リナーテ嬢とはバーリドア王国でイードルたちがドレスの罰を受けることになった際にイードルたちから被害を受けていた男爵令嬢の女子生徒である。


「それはリナーテ様が男爵家のご次女であったからですわ。男爵家といえど貴族家へ嫁ぎ先のあるご長女でしたら社交のためのお勉強はなさいます。

ドリーティア様は隠されていたご落胤という設定ですから働かなければならないご次女よりご長女に近いのです」


「そうなのね。イメージのご婦人は何名か浮かんだわ」


 ドリーティアには男爵令嬢とはなかなか接点がなく長女なのか次女なのかはわからないが、王城パーティーなどで見かける男爵夫妻なら想像ができる。

 頷くバラティナはボランティアなどで会う男爵令嬢の中でリナーテより淑女らしい女性を何人か思い浮かべた。


「お二人とも決してリアフィアのマネはなさらないでくださいませね」


「どうしてですの? リアフィアは少女淑女の鑑でしょう?」


「だ、か、ら、でございます。リアフィア様のマネをなされれば即座に仮面が剥がれ失態を晒すことになります。

お二人がイメージなされた方々のようになさってくださいませ」


 バラティナは納得して首肯したがドリーティアは項垂れて小さく頷いた。自己評価はもう少し高かったからだ。


「今のお二人なら伯爵家のご令嬢に匹敵すると思いますわ。ですからリラックスなさって行動されれば男爵令嬢は簡単です。その方がミスをすることが少なくなりますわ」


「そうですわね」


「そうですね。気を張って伯爵令嬢をするより普通にしていれば男爵令嬢でいる方がいいですね」


 リアフィアの説得にドリーティアはやっと顔を上げ、それを見たレライは厳しく言い過ぎた自覚もあるため心の中でホッとした。

 二人に対してレライというムチとリアフィアというアメの関係がいつの間にやら構築されていき確立していた。


 その日の夜、二人は全身脱毛した。もちろん脇毛もである。バラティナは本人の目論見通りにドリーティアより一回少なくて済むことになりそうだ。

 中央階段より東側に部屋を充てがわれたリアフィアには悲痛な声が届かないことは幸いである。


 翌朝、昨夜頑張ったメイドたちは大喜びで準備をした。


「お化粧のノリが違いますわぁ!」


「デコルテも艶々です。肩開きのドレスにいたします?」


「前だけでなくお背中も艶々ですわよ。せっかくお背中の脱毛もしたのですもの! 後ろ毛を強調いたしませんか?」


「腕を出すのもいいかもしれませんわね」


「ドリーティア様は腕を出すには少しお太いですわ。でもいずれ足首は見せたいですわねぇ」


 本当に『全身』脱毛だったのだ。それだけでもヘトヘトなドリーティアだが張り切っているメイドたちに早朝に起こされて更に疲れているためされるがままになっていた。


 ドリーティアからは見えないが隣室のバラティナも同様な状況であることは予想に難しくはない。


「ヨンバルディ殿下がご寵愛なさる姫だとわからせなければなりませんわ! がんばりましょう!」


「「「はいっ!」」」


 レライがおらずともやる気満々なメイドたちが頼もしいのでレライは部屋の隅でお茶をしていた。


「まあ、美味しいわ。王妃陛下へのお土産にいたしましょう。ふふふ」


 ドリーティアたちの教師役だけあって女官長服であっても大変に優雅な仕草であった。


 緑の宮から馬車で三十分ほどのところにある学園は貴族専用であり生徒たちには制服がある。午前二時限午後一時限のカリキュラムで週五日、週末の二日は男女に分かれてそれなりの授業となる。クラスは男女共学だ。


 学園へは二台の馬車でいくことになっていてヨンバルディとドリーティアとバラティナ、リアフィアとシアゼとに分かれる。リアフィアたちの馬車には王子宮のメイドも乗っていてリアフィアの警備のため戦闘メイドだと聞いているがオミナード王国の女性らしく体は大きめだが強いという印象は受けない。

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