41 オミナード王国王妃
王子宮内には四人にとってもすでに見知った面々が多く安心して過ごせそうだ。屋敷内で三階に用意された個々の部屋で夕刻まで休憩を取り夕食を伴した。
王子宮に到着して数日後、リアフィアとシアゼが両陛下と王太子たる第一王子殿下との謁見に赴いた。
謁見は軽い挨拶だけで終わり、その後王妃陛下の執務室へ案内された。
そこで両陛下と王太子殿下は変装をご存知であるが他の者は知らないことなどを説明されヨンバルディへの協力を改めて要請された。
「王妃陛下はヨンバルディ殿下をとても大切になさっておいでなのですね」
「ルディの出自を聞いたのね」
「詳しくはお聞きしておりませんが殿下のお母上様は他国の方であったとお聞きいたしました。王妃陛下はこちらのオミナード王国の公爵家の方であったと記憶しております」
「わたくしの実家まで知っているなんてさすがにバーリドア王国の王妃自慢の嫁ね」
「お褒めに預かりまして大変光栄でございます」
まだ嫁にはなっていないが褒められたことは嬉しくリアフィアは笑顔になる。
「ルディの母親はわたくしが留学した際にお友達になった侯爵家のご令嬢なの。
だけどルディが七歳の時に馬車の事故で儚くなってしまったのよ。
それもあってわたくしにとって本当の息子同然なの」
友人が側妃になったことや側妃の事故など聞きたいことはたくさんあるがまだそれを聞き出すほど親しいわけではないとリアフィアは正確に判断する。
「王妃陛下に愛されておられるのでヨンバルディ殿下は王家の方としての自信に溢れておいでです」
「そう? それは嬉しいわ。
イードル王子も一人息子として愛情を受けているでしょう?」
「はい。バーリドア王国両陛下はイードル殿下を大切になさっていらっしゃいます」
「本当はイードル王子に挨拶したいのだけどかのことが終わるまでは止めておいた方がいいと思って貴女たちだけを呼んだのよ。
フェリアさんは側妃の親戚としてこの国を楽しんでほしいわ」
「ありがとうございます」
リアフィアは素直に喜んだ。
「こちらへ到着した翌日には早速城下へ案内していただきました」
「そう。楽しそうでよかったわ。あちらのお国では王太子妃として見られてしまうものね。他国でしか味わえない自由を満喫するといいわ」
「はい。ご配慮に感謝いたします」
シアゼはリアフィアの祖国での不自由さは知らなかった。ドリーティアとは変装をしてお忍びで出かけることもあったからだ。ドリーティアといえどカツラで髪色を変え帽子を深めに被れば王子であることは隠せた。
『下町の娘で帽子を被っている者はほとんどいない。フードを被っている女性は貴族だと言っているようなものだし帽子を被っているのも貴族令嬢だ。
ここでは見惚れる男共はいるが俺が睨めば目を外す。騎士とその恋人の下位貴族令嬢なら自由度が大きいと言って用意してくれているメイドたちの言う通りなのだな』
シアゼはここ数日間のリアフィアの様子を思い返していた。
その晩、ドリーティアにリアフィアの様子を聞かれ素直にそのように答えてしまったために嫉妬で睨みつけられてしまうことになった。
緑の宮での淑女教育にやっとレライからオッケーが出た。明日から学園へ入学である。
「これならば男爵家のご令嬢には見えると思いますのでご落胤とすればこのくらいでしょう」
「待ってくれっ!」
驚きで言葉が乱れたドリーティアをレライが睨む。
「まだ足りないようですわ」
「ドリーティアさまぁ。お願いいたしますわぁ」
一日でも早く帰国したいバラティナは泣きを入れる。
「ごめんなさい」
ドリーティアは目を細めて謝った。




