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40 緑の宮

 夕食の席ではドリーティアは男性の格好をしておりドレス姿のバラティナが少し拗ねる。


「バラティナ嬢は午前中にサバラルになれたのだからいいじゃないか」


「ゼッドの壁役になっただけだろう!」


「護衛なのだから壁役ができるようになることは大事だぞ」


 シアゼの正論にバラティナが肉へフォークを突き刺して淑女とは言えない食べ方をして怒りを見せたことに周りは和やかに笑った。


 食事を終えお茶が出されると伯爵家の話になる。


「三人は本館の地下牢にいる。まさか自分たちが使うとは思っていなかったろうけどな」


「地下牢があるのか?」


「ああ。昔の名残りのようだ。湿度と温度が薬の材料の保管に合っていたようだ」


「薬ですかっ!!」


 シアゼが声を荒らげた。


「そうだ。薬を作り高額で売りさばいていた。この近くの村はすでに廃人だらけだ。摂取量などを客に説明をするために領民で実験していたらしい」


「なんと愚かなっ!」


「その方たちは今は?」


 リアフィアは直ぐ様領民たちの心配をし眉を下げて尋ねる。


「回復できる者がどれほどいるのかはわからぬが国をあげて治療していくつもりだ」

 

「常習性は?」


 シアゼは肘を膝に当て前のめりで聞き入る。


「高い。禁断症状で自害した者もすでにいるようだ。伯爵家にあった資料によると幻覚作用もあるらしい」


「そんな酷いことを……」


 眼鏡のブリッジを上げたバラティナの目には怒りが含まれていた。


「まだ国内法で禁止されている薬ではないから伯爵家がどうなるかは不明だ。これ以上は僕の手にはおえない。王城騎士団に任せることになるだろう」


 まだ学生であるヨンバルディより実務経験豊富な騎士団に任されるのは当然である。


「詳しい調査結果や処遇はその都度君たちにも伝えていくよ」


「いや、それはいらない」


「なぜ? 害してきた者たちの処遇は気になるだろう?」


「我々はこの国の弱味を握りたいわけではない。ルディの言葉で伯爵家がそれなりの罰を受けそうだとわかったからそれで充分だ。それに伯爵家の調査が終わるまでこの国にいるとは限らないしな」


「そうです! 少しでも早く帰国して婚約者に会いたいです!」


「俺も! ルルーシアからの手紙を読みルディ殿下の問題の早急な解決を強く望みました!」


「そういうわけだから。予定はズレてしまったが我々は王都へ向かおう」


「皆の配慮に感謝する」


 本当は頭を下げたいヨンバルディであったがそれはグッと堪え小さく頷くに止めた。


 数日後オミナード王国の王都へ入る。王都はかなり活気があるようで昼間であるから多くの人々が行き来していた。高位貴族の馬車を装っているので王都民たちは特に反応もしてこない。


「そろそろ王城が見えて参ります」


 メイドが進行方向右側の窓のカーテンを開ける。


 大きな山を背に高台のようになっている壮大な城が見えた。リアフィアとバラティナとシアゼはその美しさに感動した。


「我が国の石は白味がかっておりますので賓客の皆様には美しいとご感想をいただくことが多いです」


 バーリドア王国の王城は雄大であるがここオミナード王国の王城は優美と言えた。


「王子宮王女宮は王城の左右に二つずつございまして西の二つ目が緑の宮でございます。西に向っておりますので右側に王城が見えます」


 無事にヨンバルディの王子宮緑の宮へ到着した。

 門から続く常緑樹の小さな森を抜けて行くと壁にツタが這っていて上部の白さとのコントラストが美しい屋敷が見えた。大きさはリアフィアの家である公爵邸ほどだ。『城』の様相ではないだけで四階建ての大豪邸である。


 馬車から見える屋敷前の馬車寄せの周りは緑色の花々が咲き誇っていた。


「まあ! 緑色のお花でこれほどのコントラストを表現なさっているとはステキですわぁ!」


「ありがとうございます。リアフィア様のご感想を庭師にお伝えさせていただきます」


 メイドは自分が褒められたように喜んでいた。


「これはすごい! 愛しいルルーシアを思い出す」


 シアゼはそう言った後、泣くのを我慢するように口をへの字にする。シアゼの婚約者ルルーシアはライム色の髪が美しい女性である。

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