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37 令嬢か娼婦か

 バラティナの疑問は脇に置き話が進む。


「では今夜はヨンバルディ殿下の寝所が狙われるということですね」


 シアゼのギイドへの質問に対してまだ首を傾げるバラティナにバラティナのメイドであるチルシェが耳元で説明をした。


「かの者たちはヨンバルディ殿下がドリーティア様をご自身の寝所へお呼びになるとお考えになったのです」


「はあ? だって二人はまだ婚姻どころか婚約者でもないのという設定なのだよ?」


 バラティナの受け答えにヨンバルディが苦笑した。


「確かに普通の高位貴族令嬢でしたらありえない話ですよね。ドリーを下位貴族令嬢か平民か、もしかしたら娼婦と考えているのでしょう」


「ドリーティア様の気品を見たらそれはないでしょう?」


「気品ある者たちとの接点がない者たちですから」


 バラティナは理屈は納得できたがまだ心理は理解できない。


「ティルキィ嬢はそれについては奔放といいますかお好きといいますか……。

学園内でもすでに複数人とそういう関係であると報告されております」


「はあ?」


 バラティナは声に出して驚いていておりリアフィアも声には出さないが目を瞬かせて口を扇で覆っている。シアゼはそういう考えの女性がいることは知っていたが眉を寄せて嫌悪感を表す。


「自分がそうだからドリーもそうだと思い込んでいるのですよ」


「では今夜ヨンバルディ殿下の元に娼婦が現れるのはほぼ確定ですね」


「ははは。シアゼ君。娼婦ではなくティルキィ伯爵令嬢ですよ」


 ヨンバルディは口元は微笑したが目には怒りが点っていてドリーティアに薬を盛った者たちをどのようにして嵌めてやろうかと頭を回転させていた。


「殿下。十中八九、来るのはご令嬢だと思いますが万が一もございますから私が身代わりに寝所に待機いたします」


「それでは駄目だろうな。部屋を間違えたと言われる」


「間違えとは?」


「シアゼ君に秋波を送っているからね。王族を誘惑するつもりだったというのと、身分を知らぬ客人を誘惑するつもりだったでは罪が変わる。

確実に僕を誘惑するつもりだったという言質をとらなくてはならない。

例えば僕の名前を言いながら誘惑する、とかね」


 ヨンバルディが策略家らしい笑いを見せるとギイドは遠慮なく溜息を吐いた。

 その様子を見たヨンバルディはカラカラと楽しそうに笑う。


「さすがにギイドだ。この件に関して僕が引かないことをよく理解しているね」


「褒められても嬉しくないことがあるのですね。勉強になりました」


 二人の気安いやり取りを三人は驚きと関心とで呆然と聞いている。


「だが確かに万が一がないとは言えない。お三方には二階の部屋に移ってもらいバルコニーと廊下に騎士を配置させてもらいます」


「それではルディ様の護衛が足りなくなりますわ」


「ご心配には及びません。町に王宮の文官を呼んでありますから彼らに騎士役もさせます」


「文官が来ているのですか?」


「ええ。万が一今夜何もしてこなければ強権発動で家宅捜索をする予定です。ただその場合こちらが伯爵の仕事部屋に到着する前に証拠を暖炉に焚べられてしまったり執事がそれらを持って逃走してしまう恐れがでてきますけどね」


 ヨンバルディは困ってしまうと苦笑いをした。


「しかし、文官たちにリアフィア様のことはご親戚として誤魔化せるでしょうが私とドリーティア様を見せても良いのですか?」


「それですよ。特に現在のドリーを見せたくはない。なので彼らがみなさんに会うことがないようにみなさんには二階の奥の部屋に移動していただくのです」


「捕り物をする気満々ではないですか」


 シアゼは呆れたというようにクックッと喉で笑うが目には獰猛さが溢れ扉を睨みつけている。今にも飛び出していき伯爵家の者たちを切り捨てそうな視線であった。


「シアゼ様。ドリー様の行動の意図をお汲みしておつらいとは思いますが、騎士たちとの同行はやめてくださいませ」


 シアゼはリアフィアの言葉に一つ嘆息して頷いた。

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